伏在神経(saphenous nerve)まとめ

概要

伏在神経は大腿神経の最大の感覚枝であり、 純粋感覚神経である。 大腿前面から下腿内側、足内側縁まで広範囲に皮膚感覚を支配する。


起始


走行

大腿三角内で大腿神経から分岐し、 大腿動脈とともに内転筋管(ハンター管)を下降する。

内転筋管遠位で筋間を通過し、 膝内側へ出て皮下を走行する。

その後、下腿内側を下降し、 内果前方を通って足内側縁まで分布する。


主な枝

  • 膝蓋下枝(膝前内側皮膚)
  • 下腿内側皮枝

支配領域(感覚)

  • 膝内側
  • 下腿内側
  • 内果周囲
  • 足内側縁

機能

  • 下肢内側の触覚・痛覚・温度覚伝達

臨床的ポイント

  • 内転筋管症候群(伏在神経絞扼)
  • 膝内側手術後の感覚障害
  • 静脈採取(大伏在静脈)時の神経損傷
  • L3–L4神経根障害との鑑別

鑑別ポイント


関連血管


東洋医学的観点

伏在神経の走行は足の太陰脾経および足の厥陰肝経の 下腿内側走行と密接に関連する。


関連経絡・経穴

血海(SP10)陰陵泉(SP9)曲泉(LR8)などが臨床応用される。


まとめ

伏在神経は大腿神経の終枝である純感覚神経であり、 下肢内側の広範囲な皮膚感覚を担う。 運動障害を伴わない点が診断上重要である。

交感神経幹(Sympathetic trunk)まとめ


概要

交感神経幹は脊柱の両側を縦走する自律神経系(交感神経)の主幹構造である。 脳脊髄神経とは異なり、節前線維と節後線維を中継する神経節の連鎖から構成される。 全身の血管収縮、心拍数増加、発汗、瞳孔散大などの「闘争・逃走反応」を調整する。


構成

  • 頸部神経節(上・中・下)
  • 胸部神経節(約12対)
  • 腰部神経節(約4対)
  • 仙骨部神経節(約4対)
  • 奇神経節(無対:尾側で左右合流)

走行

交感神経幹は頭蓋底から尾骨前面まで、 脊柱の前外側を縦走する。

各脊髄神経とは白交通枝(節前線維)および 灰白交通枝(節後線維)で連絡する。


神経線維の経路

  • 同レベルでシナプス
  • 上行または下行してシナプス
  • 内臓神経として通過し腹腔神経節へ

主な内臓神経

  • 大内臓神経(T5–T9)
  • 小内臓神経(T10–T11)
  • 最下内臓神経(T12)
  • 腰内臓神経

支配機能

  • 心拍数増加
  • 血管収縮
  • 発汗促進
  • 瞳孔散大
  • 消化管運動抑制
  • 膀胱弛緩

臨床的ポイント

  • ホルネル症候群(頸部交感神経障害)
  • 多汗症治療(胸部交感神経切除)
  • レイノー病
  • 複合性局所疼痛症候群(CRPS)

関連する血管


副交感神経との対比

  • 交感神経:胸腰髄(T1–L2)起始
  • 副交感神経:脳幹・仙髄(S2–S4)起始

東洋医学的観点

交感神経幹は全身の緊張状態を統括し、 東洋医学では「陽」「気」「衛気」と関連づけられる。


関連経絡

背部兪穴は各内臓の自律神経反応点として臨床応用される。


まとめ

交感神経幹は脊柱両側を縦走する自律神経の中枢連絡路であり、 全身の血流・発汗・内臓機能を統合的に制御する。 分節構造と内臓神経の理解が臨床応用に不可欠である。

肋下神経(subcostal nerve)まとめ

概要

肋下神経は第12胸神経(T12)の前枝であり、 最後の胸神経に相当する体性混合神経である。 第12肋骨の下縁を走行し、 腹壁筋および腹壁皮膚を支配する。


構成

  • T12(第12胸神経前枝)

走行

第12胸神経は椎間孔を出た後、 交感神経幹と交通枝で連絡する。

その後、第12肋骨の下縁に沿って外側へ走行し、 腹横筋内腹斜筋の間を前方へ進む。

前方では腹横筋鞘を貫き、 前皮枝として下腹部皮膚へ分布する。


主な枝

  • 筋枝(腹壁筋)
  • 外側皮枝
  • 前皮枝
  • 交通枝(交感神経幹

支配筋


支配領域(感覚)

  • 下腹部外側皮膚
  • 臀部上外側部(外側皮枝)

機能

  • 腹圧維持
  • 体幹安定
  • 下腹部感覚伝達

臨床的ポイント

  • 側腹部痛の原因
  • 腹部手術時の神経損傷
  • 腰部打撲後の神経障害
  • 分節支配の評価(T12レベル)

関連する血管

  • 肋下動脈
  • 腰動脈

東洋医学的観点

肋下神経の走行は、 足の少陽胆経および足の陽明胃経の 側腹部走行と関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では章門(LR13)帯脈(GB26)天枢(ST25)などが応用される。


まとめ

肋下神経はT12前枝からなる体性混合神経であり、 腹壁筋支配と下腹部感覚に関与する。 胸神経と腰神経の移行部に位置し、 腹壁機能の理解に重要な神経である。

肋間神経(intercostal nerves)まとめ

概要

肋間神経は胸髄前枝(T1〜T11)からなる体性神経であり、 肋間隙を走行して胸壁および腹壁上部を支配する。 運動・感覚・交感神経線維を含む混合神経である。


構成

  • T1〜T11:肋間神経
  • T12:肋下神経

走行

各胸神経前枝は椎間孔を出た後、 交感神経幹と交通枝で連絡する。

その後、肋骨下縁の肋間神経溝を 肋間動脈・肋間静脈とともに走行する (上から「静脈・動脈・神経」の順)。

前方では皮枝を出し、 最終的に前皮枝として胸壁前面へ分布する。


主な枝

  • 筋枝(肋間筋・腹壁筋)
  • 外側皮枝
  • 前皮枝
  • 交通枝(交感神経幹

支配筋


支配領域(感覚)

  • 胸壁皮膚(分節性支配)
  • 乳頭:T4レベル
  • 臍:T10レベル
  • 腹壁上部

機能

  • 呼吸運動補助
  • 体幹安定
  • 胸腹部感覚伝達
  • 分節性支配による体性知覚

臨床的ポイント

  • 肋間神経痛
  • 帯状疱疹(分節性皮疹)
  • 胸腔ドレナージ時の損傷リスク
  • 肋骨骨折に伴う神経損傷

関連する血管


東洋医学的観点

肋間神経の走行は、 足の少陽胆経および足の厥陰肝経の 側胸部走行と強い関連を持つ。


関連経絡・経穴

臨床では期門(LR14)日月(GB24)章門(LR13)膻中(CV17)などが応用される。


まとめ

肋間神経は胸髄前枝からなる分節性神経であり、 呼吸運動と胸腹壁の感覚支配を担う重要な神経である。 臨床では分節支配の理解が診断に直結する。

胸筋神経(pectoral nerves)まとめ

概要

胸筋神経は腕神経叢から分岐し、 大胸筋および小胸筋を支配する運動神経である。 外側胸筋神経と内側胸筋神経の2本が存在する。 胸部前面の筋機能および肩関節の安定に重要な役割を持つ。


分類と構成


外側胸筋神経(Lateral pectoral nerve)
  • 起始:外側神経束
  • 神経根:C5–C7

内側胸筋神経(Medial pectoral nerve)
  • 起始:内側神経束
  • 神経根:C8–T1

走行


外側胸筋神経

鎖骨下筋の下方を通り、 胸肩峰動脈と伴走しながら 大胸筋深層へ進入する。


内側胸筋神経

腋窩動脈の内側を走行し、 小胸筋を貫通した後、 大胸筋へ枝を送る。


主な枝


支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(純運動神経)

機能


臨床的ポイント

  • 乳癌手術時の損傷リスク
  • 大胸筋萎縮
  • 肩前面の筋力低下
  • 小胸筋短縮による胸郭出口症候群との関連

関連する筋


関連する血管

  • 胸肩峰動脈(特に胸筋枝)
  • 外側胸動脈

東洋医学的観点

胸筋神経の走行および症状は、 手の太陰肺経および足の陽明胃経の胸部走行と関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では中府(LU1)雲門(LU2)屋翳(ST16)膺窓(ST16)などが応用される。


まとめ

胸筋神経は大胸筋小胸筋を支配し、 肩関節の前面安定および上肢運動に重要な役割を担う。 外側胸筋神経と内側胸筋神経の二系統が存在し、 乳癌手術や腋窩手術時の解剖理解が重要である。

長胸神経(Long thoracic nerve)まとめ

概要

長胸神経は腕神経叢の神経根から直接分岐する運動神経であり、 前鋸筋を支配する唯一の神経である。 肩甲骨の前方固定および上方回旋に重要で、 障害時には特徴的な翼状肩甲を呈する。


構成

  • C5
  • C6
  • C7

走行

長胸神経はC5〜C7神経根から直接分岐し、 中斜角筋の後方を通過する。

その後、胸壁外側を下降し、 前鋸筋の表層に沿って走行しながら 各筋束へ分布する。


主な枝


支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能


臨床的ポイント

  • 翼状肩甲
  • 壁押しテスト陽性
  • 乳癌手術後の神経損傷
  • 上肢挙上困難

関連する筋


関連する血管

  • 外側胸動脈

東洋医学的観点

長胸神経の走行および症状は、 東洋医学における足の少陽胆経および 手の太陰肺経と関連がみられる。


関連経絡・経穴

臨床では淵腋(GB22)期門(LR14)中府(LU1)などが 長胸神経関連症状に応用される。


まとめ

長胸神経は前鋸筋を支配し、 肩甲骨安定機構の中核を担う神経である。 障害時には翼状肩甲という典型的所見を呈し、 上肢挙上機能に大きく影響する。

肩甲下神経(Subscapular nerve)まとめ

"Image courtesy of Visible Body"(画像提供:Visible Body)

概要

肩甲下神経は腕神経叢の後神経束から分岐する運動神経であり、 肩関節内旋および安定化に重要な役割を担う。 通常、上肩甲下神経と下肩甲下神経の2枝に分かれる。


構成

  • C5
  • C6

走行

肩甲下神経は後神経束から分岐し、 肩甲下筋前面へ向かう。

上肩甲下神経は肩甲下筋上部を支配し、 下肩甲下神経は肩甲下筋下部および 大円筋へ分布する。


主な枝

  • 上肩甲下神経
  • 下肩甲下神経

支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能


臨床的ポイント


関連する筋


関連する血管

  • 肩甲下動脈

東洋医学的観点

肩甲下神経の走行および症状は、 東洋医学における手の厥陰心包経および 手の太陽小腸経と関連がみられる。


関連経絡・経穴

臨床では曲沢(PC3)天宗(SI11)肩貞(SI9)などが 肩甲下神経関連症状に応用される。


まとめ

肩甲下神経は肩関節内旋と前方安定性を担う重要な運動神経であり、ローテーターカフ機構の一角を構成する。 肩前方不安定症や内旋障害の評価に不可欠である。