関節炎まとめ

■ 概要

関節炎とは、関節内または関節周囲に炎症が生じ、 疼痛・腫脹・可動域制限などを呈する状態の総称である。 単一の疾患名ではなく、さまざまな原因により発生する。

  • 関節痛
  • 腫脹(腫れ)
  • 熱感
  • 可動域制限

■ 解剖

● 関節構成

  • 関節軟骨
  • 関節包
  • 滑膜
  • 滑液
  • 靱帯

※ 特に滑膜が炎症の中心となることが多い


■ 病態

● 本質

  • 炎症反応(血管拡張・細胞浸潤)
  • 滑膜炎・関節液増加
  • 組織破壊(慢性化)

■ 主な分類(重要)

① 変性性関節炎

加齢や機械的負荷により軟骨が摩耗する。

② 炎症性関節炎

免疫異常や代謝異常により炎症が起こる。

③ 感染性関節炎

  • 化膿性関節炎

細菌感染による急性炎症。

④ 外傷性関節炎

外傷後の炎症反応。


■ 症状の特徴

● 共通症状

  • 関節痛
  • 腫脹・熱感
  • 可動域制限

● タイプ別特徴

  • 変性:動作開始時痛・慢性経過
  • 炎症性:安静時痛・朝のこわばり
  • 感染性:強い痛み・発熱

■ 理学的評価

● 視診・触診

  • 腫脹・発赤・熱感

● 可動域評価

  • 関節可動域制限

● 圧痛評価

  • 関節裂隙・周囲組織

● 関節液貯留

  • 膝蓋跳動(膝関節)など

■ 関連する要因

● 機械的因子

  • 姿勢・アライメント
  • 過負荷

● 生理的因子

  • 加齢
  • ホルモン

● 免疫・代謝

  • 自己免疫
  • 尿酸代謝異常

■ 鍼灸治療

● 局所

  • 患部周囲の阿是穴

● 代表穴(全身調整)


■ 経絡的理解

  • 気血の停滞(瘀血)
  • 風寒湿の侵入(痺証)

関節炎は東洋医学では「痺証」として理解される。


■ 鍼灸的ポイント

  • 炎症期は過刺激を避ける
  • 慢性期は血流改善
  • 関節可動域の維持
  • 全身調整(体質改善)

■ 鑑別の軸(重要)

  • 急性 vs 慢性
  • 単関節 vs 多関節
  • 機械的 vs 炎症性

■ まとめ

  • 関節炎は症状の総称であり原因は多様
  • 滑膜炎が中心となることが多い
  • 分類と鑑別が重要
  • 急性期と慢性期で対応が異なる

クロスSLR(Well Leg Raise Test)

■ 概要

クロスSLRは、健側下肢を挙上することで患側の坐骨神経痛を誘発するかを確認し、腰椎椎間板ヘルニアの有無を評価する理学検査である。 通常のSLRに比べて特異度が高いことが特徴である。


■ 目的


■ 方法

  1. 患者を仰臥位とする
  2. 健側の下肢を他動的に挙上する
  3. 患側に症状が出現するかを確認する

■ 陽性所見

特に殿部〜下肢後面にかけての放散痛が再現される場合、陽性とする。


■ 解釈(病態)

健側下肢の挙上により硬膜・神経根が牽引され、中央〜傍中央のヘルニアによって対側の神経根が圧迫されることで症状が出現する。

対側に痛みが出る=強い神経圧迫の可能性を示唆する。


■ SLRとの違い(重要)

  • SLR患側挙上で患側に症状(感度が高い)
  • クロスSLR:健側挙上で患側に症状(特異度が高い)

クロスSLR陽性は、椎間板ヘルニアの可能性を強く示唆する。


■ 鑑別のポイント

  • FNS陽性 → 大腿神経(上位腰椎)
  • 局所腰痛のみ → 筋・筋膜由来
  • 殿部局所痛 → 仙腸関節障害

対側誘発の放散痛が最大の特徴である。


■ 東洋医学的関連

坐骨神経痛は東洋医学では痺証(ひしょう)として捉えられる。

関連する経絡:


■ 鍼灸臨床との関連

● 病態把握

  • 急性期:神経圧迫+瘀血・炎症
  • 慢性期:腎虚+気血停滞

● 治療方針

  • 神経圧迫の軽減
  • 血流改善・炎症抑制
  • 経絡の通利
  • 腰部安定化

● 代表的な経穴

● 臨床的ポイント

  • クロスSLR陽性は重症例の可能性
  • 強い神経症状がある場合は医療連携
  • 急性期は過度なストレッチを避ける

■ 注意点(安全管理)

  • 疼痛を過度に誘発しない
  • ゆっくり挙上する
  • 急性期は慎重に実施する

■ まとめ

クロスSLRは、椎間板ヘルニアを評価する特異度の高い理学検査である。 通常のSLRと組み合わせることで診断精度が向上し、 東洋医学的には痺証腎虚瘀血として捉え、鍼灸治療に応用できる。

ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)テストまとめ

■ 概要

ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)は、前腕屈筋群の過使用により 内側上顆部に疼痛を生じる疾患である。 理学検査では、屈筋群にストレスを加えて疼痛を誘発する。


■ 評価のポイント

  • 内側上顆の圧痛
  • 手関節屈曲・前腕回内での疼痛
  • 抵抗運動での痛み再現

■ 理学検査

● 手関節屈曲抵抗テスト(最重要)

方法:

  • 肘関節伸展位または軽度屈曲位
  • 手関節を屈曲させる
  • 術者が抵抗を加える

陽性所見:

  • 上腕骨内側上顆に疼痛出現

意義:


● 手関節伸展ストレッチテスト

方法:

陽性所見:

  • 内側上顆部の疼痛

意義:

  • 屈筋群の伸張ストレスによる疼痛誘発

● 前腕回内抵抗テスト

方法:

  • 前腕回外位から回内方向へ力を入れる
  • 術者が抵抗を加える

陽性所見:

  • 内側上顆の疼痛

意義:


● 圧痛検査

方法:

  • 上腕骨内側上顆を直接圧迫

陽性所見:

  • 限局した圧痛

意義:

  • 最もシンプルで重要な所見

■ 関連筋肉


■ 鑑別ポイント


■ まとめ

  • 屈筋群へのストレスで疼痛誘発
  • 手関節屈曲抵抗テストが最重要
  • 内側上顆の圧痛が基本所見
  • 伸展ストレッチとの組み合わせで評価精度向上

顎関節症(TMD)まとめ

■ 概要

顎関節症(TMD:Temporomandibular Disorders)は、顎関節および咀嚼筋の機能障害により、 顎関節痛、開口障害、関節雑音などを呈する疾患群の総称である。

  • 顎関節部の痛み
  • 開口障害(口が開きにくい)
  • 関節雑音(クリック・クレピタス)
  • 咀嚼時痛

■ 解剖

● 顎関節

  • 下顎頭と側頭骨で構成
  • 関節円板を介した滑走・回転運動

● 咀嚼筋

※ 咀嚼筋と関節の協調が重要


■ 病態

● 主なタイプ

  • 筋障害型(咀嚼筋の緊張)
  • 関節円板障害(転位・変形)
  • 変形性関節症型

● 発生要因

  • 噛みしめ・歯ぎしり(ブラキシズム)
  • ストレス
  • 咬合異常
  • 姿勢不良(頭部前方位)

■ 症状の特徴

  • 開口時の痛み・違和感
  • 開口制限(通常40mm未満)
  • クリック音(円板転位)
  • 顎の引っかかり

※ 動作で変化するのが特徴(機械的症状)


■ 理学検査

● 開口量測定

最大開口量を測定(正常:約40〜50mm)。

● 関節雑音の確認

開閉口時のクリック・クレピタスを聴取。

● 咀嚼筋圧痛

咬筋側頭筋などの圧痛を確認。

● 顎運動評価

偏位・偏倚の有無を確認。


■ 関連する筋肉

● 咀嚼筋

● 頸部

頸部筋の緊張も顎関節に影響する。


■ 鍼灸治療

● 局所(顎関節周囲)

● 顔面

● 頭部

● 阿是穴


■ 遠隔穴


■ 経絡的理解

顎関節は陽明経の影響が強い。


■ 鍼灸的ポイント

  • 咀嚼筋の緊張緩和
  • 顎関節の運動改善
  • ストレス管理
  • 姿勢改善(頸部〜頭部)

■ 鑑別ポイント


■ まとめ

  • 顎関節咀嚼筋の機能障害
  • 開口障害・関節音が特徴
  • 筋・関節・姿勢が関与
  • 機械的要因の調整が重要

顔面神経麻痺まとめ

■ 概要

顔面神経麻痺は、顔面の表情筋を支配する顔面神経(第Ⅶ脳神経)の障害により、 顔面の運動機能が低下または消失する疾患である。 代表的なものにベル麻痺やラムゼイ・ハント症候群がある。

  • 顔面の片側麻痺
  • 表情筋の運動障害
  • 眼の閉鎖不全
  • 口角下垂

■ 解剖

顔面神経(第Ⅶ脳神経)

  • 主に運動神経(表情筋支配)
  • 一部に味覚・副交感神経を含む

● 支配筋

※ 表情筋全体を支配する


■ 病態

● 主な原因

  • ベル麻痺(特発性・ウイルス関連)
  • ラムゼイ・ハント症候群(帯状疱疹ウイルス)

● 本質

  • 神経の炎症・浮腫
  • 顔面神経管内での圧迫

※ 神経の伝導障害による運動麻痺


■ 症状の特徴

  • 片側の顔面運動麻痺
  • 額のしわ寄せができない
  • 目が閉じにくい(兎眼)
  • 口角下垂・よだれ
  • 味覚障害(前2/3)

※ 上顔面も含めて麻痺するのが末梢性の特徴


■ 中枢性との鑑別(重要)

● 末梢性(顔面神経麻痺)

  • 顔面全体(上+下)が麻痺

● 中枢性(脳血管障害など)

  • 下顔面のみ麻痺(額は動く)

※ 額が動くかどうかが重要な鑑別ポイント


■ 理学的評価

● 表情筋テスト

  • 額にしわを寄せる
  • 目を閉じる
  • 口をすぼめる

● 柳原法(重症度評価)

顔面の動きを点数化して評価。


■ 関連する筋肉

● 表情筋

● 補助筋


■ 鍼灸治療

● 顔面局所

● 耳周囲

● 阿是穴

  • 麻痺部位の筋反応点

■ 遠隔穴


■ 経絡的理解

顔面は陽明経の影響が大きい。


■ 鍼灸的ポイント

  • 急性期は軽刺激で炎症を考慮
  • 回復期は筋収縮促進
  • 左右差の改善
  • 継続的なリハビリが重要

■ 鑑別ポイント

  • 三叉神経痛:激しい痛み(感覚障害)
  • 脳梗塞:中枢性麻痺(額は動く)
  • 顔面神経麻痺:顔面全体の運動麻痺

■ まとめ

  • 顔面神経の障害による運動麻痺
  • 顔面全体の麻痺が特徴
  • 中枢性との鑑別が重要
  • 早期対応と継続治療が鍵

トムゼンテスト(Thomsen test:テニス肘)

■ 概要

トムゼンテストは、手関節背屈に対して抵抗を加えることで前腕伸筋群(特に短橈側手根伸筋:ECRB)に負荷をかけ、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の有無を評価する理学検査である。 外側上顆部痛を再現する代表的テストである。


■ 目的


■ 方法

  1. 患者の肘関節を伸展位にする
  2. 前腕を回内位にする
  3. 患者に手関節背屈(手首を反らす)させる
  4. 検者はその動きに抵抗を加える

■ 陽性所見

  • 上腕骨外側上顆部の疼痛
  • 抵抗時の痛みの増強

これらが認められる場合、陽性とする。


■ 解釈(病態)

抵抗下で手関節背屈を行うことで、前腕伸筋群の起始部(外側上顆)に牽引ストレスがかかり、炎症がある場合に疼痛が誘発される。

抵抗運動で外側上顆痛が出る=伸筋腱障害と理解する。


■ 類似テストとの関係

  • ミルズテスト:他動的伸張で痛みを誘発
  • 中指伸展テスト:ECRBへの選択的負荷

トムゼンは能動+抵抗で評価するのが特徴である。


■ 鑑別のポイント

局所の圧痛+抵抗時痛がテニス肘の特徴である。


■ 東洋医学的関連

テニス肘の疼痛は、東洋医学では痺証(ひしょう)として理解される。

関連する経絡:


■ 鍼灸臨床との関連

● 病態把握

  • 局所:腱付着部炎+気血停滞
  • 慢性:瘀血+気血不足

● 治療方針

  • 炎症の抑制
  • 血流改善・瘀血除去
  • 筋緊張の緩和
  • 経絡の通利

● 代表的な経穴

● 臨床的ポイント

  • 過使用の制限が最重要
  • 急性期は安静+軽刺激
  • 慢性例では温灸・血流改善

■ 注意点(安全管理)

  • 過度な抵抗をかけない
  • 強い疼痛が出る場合は中止
  • 炎症が強い時期は慎重に実施

■ まとめ

トムゼンテストは、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)を評価する代表的な理学検査である。 抵抗下での疼痛再現が診断の鍵となり、 東洋医学的には痺証気血停滞として捉え、鍼灸治療に応用できる。

三叉神経痛まとめ

■ 概要

三叉神経痛は、顔面の感覚を支配する三叉神経が刺激・圧迫されることで、 顔面に電撃様の激しい疼痛を生じる神経障害である。 発作的に短時間の強い痛みを繰り返すのが特徴である。

  • 顔面の激しい電撃痛
  • 片側性が多い
  • 数秒〜数分の発作性疼痛
  • 軽い刺激で誘発される(トリガーゾーン)

■ 解剖

三叉神経(第Ⅴ脳神経)

  • 顔面の感覚神経の主体
  • 3枝に分かれる

● 三叉神経の枝

  • 第1枝(眼神経):前額部・眼周囲
  • 第2枝(上顎神経):頬・上顎
  • 第3枝(下顎神経):下顎・咀嚼筋(運動も含む)

※ 第2・第3枝の関与が多い


■ 病態

● 本質

  • 神経の異常興奮・脱髄

● 原因

  • 血管による神経圧迫(最も多い)
  • 腫瘍・多発性硬化症など(まれ)

※ 血管圧迫による神経の誤作動が主因


■ 症状の特徴

  • 電撃様・刺すような激痛
  • 瞬間的に強い痛み(数秒)
  • 反復発作
  • 洗顔・咀嚼・会話などで誘発

※ トリガーゾーンの存在が特徴


■ 理学的評価・臨床所見

● トリガーゾーンの確認

軽い接触で疼痛が誘発される部位を確認。

● 感覚検査

三叉神経領域の感覚異常の有無を確認。

● 鑑別

歯科疾患・副鼻腔炎・顎関節症などとの鑑別が重要。


■ 関連する筋肉

● 咀嚼筋(第3枝関連)

筋緊張が症状増悪因子となることがある。


■ 鍼灸治療

● 顔面局所

● 頭部

● 阿是穴

  • トリガーゾーン周囲

■ 遠隔穴


■ 経絡的理解

顔面は陽明経の影響が大きい。


■ 鍼灸的ポイント

  • 過度な刺激を避ける(痛み誘発に注意)
  • トリガーゾーン周囲の調整
  • 自律神経の安定化
  • 再発予防として全身調整

■ 鑑別ポイント

  • 歯痛:持続的痛み・局所炎症
  • 顎関節症:開口時痛・関節音
  • 副鼻腔炎:鈍痛・圧迫感
  • 三叉神経痛:電撃様・発作性疼痛

■ まとめ

  • 三叉神経の異常による顔面神経痛
  • 電撃様の発作性疼痛が特徴
  • トリガーゾーンが存在する
  • 刺激管理と全身調整が重要