胸筋まとめ

胸筋は胸部前面に位置する筋群で、主に肩関節の運動(内転・内旋・屈曲)上肢の固定に関与します。また、上肢が固定された状態では呼吸補助筋として胸郭の拡張にも関わります。



◆ 構成筋



◆ 起始・停止・作用・神経支配

筋名 起始 停止 主作用 神経支配
大胸筋 鎖骨内側半
胸骨前面
第1〜6肋軟骨
腹直筋鞘
上腕骨大結節稜 肩関節内転
内旋
屈曲
内側胸筋神経
外側胸筋神経
小胸筋 第3〜5肋骨 肩甲骨烏口突起 肩甲骨前方移動
肩甲骨下制
呼吸補助
内側胸筋神経


◆ 機能的特徴

  • 上肢の内転・内旋の主働筋(大胸筋
  • 押す動作(腕立て・ベンチプレス)に関与
  • 小胸筋肩甲骨の安定化に関与
  • 上肢固定時は呼吸補助筋として働く


◆ 触診ポイント

  • 大胸筋胸部前面に広く触知可能
  • 腕を内転・内旋させると収縮を確認
  • 小胸筋大胸筋深層、烏口突起周囲で圧痛確認


◆ 臨床的特徴

  • 巻き肩(ラウンドショルダー)の原因筋
  • 小胸筋短縮は肩甲骨前傾を生じる
  • 胸郭出口症候群(TOS)との関連
  • 肩関節インピンジメント症候群の要因


◆ 関連症状

  • 肩前面の痛み
  • 肩甲骨外転姿勢
  • 胸部の圧迫感
  • 腕のしびれ(胸郭出口症候群)


◆ 東洋医学的関連


胸筋は上肢運動だけでなく姿勢・呼吸機能にも影響する重要な筋群です。特に小胸筋の短縮は姿勢不良の大きな要因となります。

咀嚼筋まとめ

咀嚼筋は、顎関節を動かし、咀嚼(食物を噛む動作)を行う筋群です。これらの筋はすべて三叉神経第3枝(下顎神経)によって支配されます。

咀嚼筋は、下顎骨を動かす4つの筋から構成され、咀嚼運動・発音・顎関節の安定に重要な役割を持ちます。


◆ 構成筋



◆ 起始・停止・作用・神経支配

筋名 起始 停止 主作用 神経支配
咬筋 頬骨弓 下顎骨下顎枝外側面 下顎挙上(口を閉じる) 下顎神経(V3)
側頭筋 側頭窩 下顎骨筋突起 下顎挙上・後退 下顎神経(V3)
内側翼突筋 翼突窩 下顎骨内側面 下顎挙上・側方運動 下顎神経(V3)
外側翼突筋 蝶形骨大翼・外側翼突板 下顎骨・関節円板 下顎前突・開口 下顎神経(V3)


◆ 咀嚼運動のメカニズム



◆ 触診ポイント



◆ 臨床的特徴

  • 顎関節症(TMD)との関連が強い
  • 歯ぎしり(ブラキシズム)で過緊張
  • 側頭筋は緊張性頭痛の原因となる
  • 咬筋肥大はストレスと関連


◆ 関連症状

  • 顎関節痛
  • 開口障害
  • 側頭部痛
  • 耳周囲痛


◆ 東洋医学的関連


咀嚼筋は顎関節運動の主動筋であり、顎関節症・頭痛・ストレス関連症状と密接に関係する重要な筋群です。

表情筋まとめ

表情筋は、顔面に存在する皮筋群であり、皮膚に付着して表情を作るという特徴を持ちます。多くの骨格筋が骨から骨へ付着するのに対し、表情筋は骨 → 皮膚に付着するため、顔の細かな表情変化を可能にします。

すべての表情筋は顔面神経(第Ⅶ脳神経)によって支配されます。


◆ 表情筋の特徴


◆ 主な表情筋

部位 筋名 主な作用
前頭部 後頭前頭筋(前頭腹) 眉を上げる、額のしわを作る
眼周囲 眼輪筋 眼瞼を閉じる
鼻部 鼻筋 鼻孔の開閉、鼻背のしわ形成
口周囲 口輪筋 口唇を閉じる、突出
頬部 頬筋 頬を引き締める、咀嚼補助
頸部 広頚筋 口角を下げる、頸部皮膚を緊張

◆ 機能的分類

① 眼周囲筋

② 鼻筋群

③ 口周囲筋

  • 口輪筋
  • 大頬骨筋
  • 小頬骨筋
  • 口角挙筋
  • 口角下制筋
  • 笑筋
  • オトガイ筋

◆ 支配神経

顔面神経(第Ⅶ脳神経)

顔面神経は耳下腺内で枝分かれし、以下の5枝に分布します。

  • 側頭枝
  • 頬骨枝
  • 頬筋枝
  • 下顎縁枝
  • 頸枝

◆ 臨床的特徴

  • 顔面神経麻痺(ベル麻痺)で表情筋麻痺
  • 閉眼不能(兎眼)
  • 口角下垂
  • 鼻唇溝の消失

◆ 東洋医学的関連


表情筋は「顔面神経機能・感情表現・咀嚼補助」を担う重要な筋群であり、顔面神経麻痺の評価において極めて重要です。

眼動脈(ophthalmic artery)まとめ

◆ 概要

眼動脈(ophthalmic artery)は、内頸動脈から分岐する動脈であり、 眼球および眼窩内構造へ血液を供給する主要な血管です。

視覚機能を維持するための重要な血流供給路であり、 網膜・視神経・眼筋・涙腺などへ枝を送ります。 また顔面動脈系との吻合を持つため、 内頸動脈系と外頸動脈系をつなぐ重要な血行路でもあります。


◆ 起始

  • 内頸動脈(海綿静脈洞を出た直後)
  • 前床突起付近

◆ 走行

眼動脈は内頸動脈から前方へ分岐し、 視神経管を通って頭蓋内から眼窩へ入ります。

眼窩内では視神経の外側から上方へ回り込み、 その後内側へ向かって走行しながら多数の枝を分岐します。


◆ 主な分枝

◎ 中心網膜動脈(central retinal artery)

  • 視神経内を通過
  • 網膜内層へ血流供給
  • 閉塞すると急性視力障害を起こす

◎ 後毛様体動脈

  • 短後毛様体動脈
  • 長後毛様体動脈

脈絡膜や虹彩へ血流を供給します。

◎ 涙腺動脈

  • 涙腺
  • 眼瞼外側部

◎ 眼窩上動脈

  • 前頭部
  • 頭皮

◎ 篩骨動脈(前・後)

  • 篩骨洞
  • 鼻腔
  • 硬膜

◎ 内側眼瞼動脈

  • 上下眼瞼

◎ 鼻背動脈


◆ 支配領域

  • 眼球
  • 網膜
  • 脈絡膜
  • 視神経
  • 外眼筋
  • 涙腺
  • 眼瞼
  • 前頭部皮膚

◆ 血管吻合

眼動脈は外頸動脈系と複数の吻合を持ちます。

このため顔面からの血流が眼動脈へ逆流することもあります。


◆ 臨床的関連

◎ 中心網膜動脈閉塞

  • 突然の視力消失
  • 眼科救急

◎ 巨細胞性動脈炎

  • 高齢者に多い
  • 視力障害を引き起こすことがある

◎ 眼窩疾患

  • 眼窩腫瘍
  • 眼窩炎症

◆ 東洋医学的観点

眼は東洋医学では「五臓六腑の精が集まるところ」とされ、 特に以下の臓腑と関係します。

  • 肝:目に開竅する
  • 腎:精が視力の基礎となる
  • 心:血が視覚を養う

眼動脈による血流供給は、 これらの「血・精」による栄養作用を 解剖学的に支える基盤と考えることができます。


◆ 鍼灸臨床との関連

眼動脈循環が関係する可能性のある症状には 以下のものがあります。

  • 眼精疲労
  • 視力低下
  • ドライアイ
  • 眼瞼痙攣

臨床では以下の経穴が用いられます。

これらは眼周囲循環や自律神経調整を目的として使用されます。


◆ まとめ

  • 内頸動脈から分岐
  • 視神経管を通って眼窩へ入る
  • 網膜・視神経・眼球へ血流供給
  • 外頸動脈系と吻合を持つ
  • 視覚機能維持に重要

眼動脈は、 視覚器全体の循環を担う中心的動脈です。

内頸動脈(internal carotid artery)まとめ

◆ 概要

内頸動脈(internal carotid artery)は、 総頸動脈の終末枝の一つであり、 主に脳および眼球へ血液を供給する重要な動脈です。

外頸動脈が顔面や頭頸部外側を栄養するのに対し、 内頸動脈は頭蓋内循環の主要血管として 大脳半球の前方循環を担います。



◆ 起始

  • 総頸動脈の終末分岐
  • 第3〜第4頸椎レベル
  • 頸動脈三角付近

同じ位置で外頸動脈と分岐します。



◆ 走行

内頸動脈は頸部から頭蓋内へ入り、 以下の4つの区分で説明されます。

◎ 頸部(頸部部)

  • 頸部では枝を出さない
  • 内頸静脈の内側を上行

◎ 錐体部(岩様部)

  • 側頭骨の頸動脈管を通過
  • 鼓室へ小枝を出す

◎ 海綿静脈洞部

  • 海綿静脈洞内をS字状に走行
  • 周囲に脳神経が存在

◎ 脳部(終末部)

頭蓋内で以下の終枝へ分かれます。

  • 前大脳動脈
  • 中大脳動脈


◆ 主な分枝

眼動脈

  • 眼球
  • 視神経
  • 眼窩構造

◎ 後交通動脈

  • 後大脳動脈と連絡
  • ウィリス動脈輪を形成

◎ 前脈絡叢動脈

  • 脈絡叢
  • 視索
  • 内包


◆ 終枝

  • 前大脳動脈(ACA)
  • 中大脳動脈(MCA)

これらは大脳半球前方2/3の血流を担います。



◆ ウィリス動脈輪

内頸動脈は、 脳底部でウィリス動脈輪(Circle of Willis)を形成します。

この動脈輪は、

  • 前交通動脈
  • 前大脳動脈
  • 後交通動脈
  • 後大脳動脈
  • 内頸動脈

によって構成され、 脳血流の側副循環として機能します。



◆ 支配領域

  • 大脳半球前部
  • 大脳半球側面
  • 基底核
  • 視覚系
  • 眼球

特に運動・感覚・言語機能に重要な領域を灌流します。



◆ 臨床的関連

◎ 内頸動脈狭窄

  • 動脈硬化が主原因
  • 脳梗塞の主要原因

◎ 一過性脳虚血発作(TIA)

  • 一時的な脳血流低下
  • 視野障害
  • 片麻痺

◎ 頸動脈内膜剥離術

高度狭窄では外科的治療が行われます。

◎ 内頸動脈瘤

脳動脈瘤の好発部位の一つです。



◆ 東洋医学的観点

内頸動脈が灌流する脳は、 東洋医学では以下の概念と関係します。

  • 脳=髄海
  • 腎精によって養われる
  • 心血が神志を支える

つまり脳循環は

  • 心(血)
  • 肝(血の調節)
  • 腎(精)

の相互作用で維持されると考えられます。



◆ 鍼灸臨床との関連

内頸動脈循環の低下は、 以下の症状と関連する可能性があります。

  • めまい
  • 頭痛
  • 記憶力低下
  • 視覚障害
  • 脳血管障害後遺症

臨床では以下の経穴が用いられることがあります。

これらは頭部循環や自律神経調整を目的として使用されます。



◆ まとめ

  • 総頸動脈の終末枝
  • 頸部では分枝しない
  • 頭蓋内で脳循環の中心となる
  • 前大脳動脈・中大脳動脈へ分岐
  • 脳血流の主要供給路

内頸動脈は、 脳と視覚機能を支える最重要動脈の一つであり、 神経機能維持に不可欠な血管です。

上行咽頭動脈(ascending pharyngeal artery)まとめ

◆ 概要

上行咽頭動脈(ascending pharyngeal artery)は、 外頸動脈の内側から分岐する最も細い枝の一つであり、 咽頭壁・頭蓋底・中耳などへ血液を供給する重要な動脈です。

小さな血管ではありますが、頭蓋底および咽頭深部の循環に関与し、 神経・硬膜・咽頭筋などへの血流供給を担います。


◆ 起始


◆ 走行

上行咽頭動脈は外頸動脈の内側から分岐し、 咽頭壁に沿って上方へ上行します。

咽頭収縮筋の内側を通りながら、 咽頭・頭蓋底・中耳へ枝を送ります。


◆ 主な分枝

◎ 咽頭枝(pharyngeal branches)

  • 咽頭壁
  • 咽頭収縮筋
  • 耳管周囲

◎ 下鼓室動脈(inferior tympanic artery)

  • 鼓室(中耳)へ血流供給
  • 鼓室神経叢に関与

◎ 髄膜枝(meningeal branches)

  • 後髄膜動脈
  • 硬膜へ血流供給

◎ 神経栄養枝

これらの神経は頸静脈孔周囲で血流供給を受けます。


◆ 支配領域

  • 咽頭壁
  • 咽頭筋群
  • 耳管周囲
  • 中耳(鼓室)
  • 頭蓋底硬膜

主に咽頭深部と頭蓋底の循環を担います。


◆ 臨床的関連

◎ 頭蓋底腫瘍

上行咽頭動脈は頭蓋底腫瘍(傍神経節腫など)の 栄養血管となることがあります。

◎ 鼓室腫瘍

鼓室腫瘍や血管腫では、 下鼓室動脈が関与する場合があります。

◎ 硬膜動静脈瘻

髄膜枝は頭蓋内硬膜動静脈瘻の 供血動脈となることがあります。


◆ 解剖学的特徴

上行咽頭動脈は外頸動脈の枝の中でも 最も内側を走行する動脈です。

また、頭蓋底へ直接枝を送るため、 外頸動脈系と頭蓋内循環の連絡に関与します。


◆ 東洋医学的観点

上行咽頭動脈の分布領域は、 東洋医学では咽喉・耳・脳に関係する領域と対応します。

咽喉は「気の出入りの門」とされ、 呼吸・発声・嚥下に重要な部位とされています。


◆ 鍼灸臨床との関連

上行咽頭動脈の循環が関与する可能性のある症状には、 以下のものがあります。

  • 咽喉痛
  • 嚥下障害
  • 耳鳴
  • 中耳炎
  • 声のかすれ

臨床では以下の経穴が用いられることがあります。

これらの経穴は、 咽喉・耳・頭部の気血循環調整に用いられます。


◆ まとめ

  • 外頸動脈の内側枝
  • 咽頭壁に沿って上行する細い動脈
  • 咽頭・中耳・頭蓋底へ血流供給
  • 神経および硬膜の栄養血管
  • 頭蓋底病変で重要

上行咽頭動脈は、 咽頭深部から頭蓋底までの循環を支える重要な小動脈です。

上甲状腺動脈(superior thyroid artery)まとめ

◆ 概要

上甲状腺動脈(superior thyroid artery)は、 外頸動脈から分岐する頸部の主要動脈の一つであり、 甲状腺上部を中心に喉頭・舌骨周囲・頸部前面の筋群へ血液を供給します。

甲状腺への主要血流の一つであり、 甲状腺機能や喉頭周囲循環に関わる重要な血管です。



◆ 起始



◆ 走行

上甲状腺動脈は外頸動脈から前下方へ走行し、 甲状腺上極へ向かって下降します。

途中で喉頭・舌骨周囲へ枝を送りながら、 最終的に甲状腺上部へ分布します。



◆ 主な分枝

◎ 舌骨下枝(infrahyoid branch)

◎ 胸鎖乳突筋枝

◎ 上喉頭動脈

  • 喉頭へ血流供給
  • 内喉頭神経と伴行

◎ 輪状甲状枝

  • 輪状甲状膜周囲へ分布
  • 対側動脈と吻合することが多い

◎ 腺枝(甲状腺枝)

  • 甲状腺上極へ血流供給


◆ 支配領域

甲状腺下部は主に下甲状腺動脈が供給します。



◆ 血管吻合

甲状腺では豊富な吻合が存在します。

  • 対側上甲状腺動脈
  • 下甲状腺動脈
  • 甲状腺最下動脈(存在する場合)

この豊富な血流ネットワークにより、 甲状腺は高い代謝活動を維持しています。



◆ 臨床的関連

◎ 甲状腺手術

甲状腺摘出術では、 上甲状腺動脈の結紮が重要となります。

この際、近接する 上喉頭神経外枝を損傷しないよう注意が必要です。

◎ 甲状腺疾患

  • 甲状腺機能亢進症
  • 甲状腺腫
  • 甲状腺腫瘍

これらの疾患では甲状腺血流が増加することがあります。

◎ 喉頭出血

喉頭外傷や処置時に上喉頭動脈から出血することがあります。



◆ 東洋医学的観点

上甲状腺動脈の分布領域は、 東洋医学では咽喉部に相当します。

咽喉は古典では「肺・胃・腎」との関係が深いとされます。

  • 肺:呼吸と声
  • 胃:咽喉の通降
  • 腎:声帯の基礎エネルギー

また甲状腺機能は、 東洋医学では「気化作用」や「代謝活動」と関連づけて理解されることがあります。



◆ 鍼灸臨床との関連

上甲状腺動脈の血流が関係する可能性のある症状には、 以下のようなものがあります。

  • 咽喉痛
  • 嗄声(声枯れ)
  • 甲状腺腫
  • 嚥下違和感

臨床では以下の経穴が用いられることがあります。

これらは咽喉循環や頸部の気血調整を目的として使用されます。



◆ まとめ

  • 外頸動脈の最初の主要分枝
  • 甲状腺上部へ血流供給
  • 喉頭や舌骨周囲にも分枝
  • 甲状腺手術で重要な血管
  • 咽喉・代謝機能と関連

上甲状腺動脈は、 甲状腺機能と喉頭循環を支える重要な頸部動脈です。