冠状動脈(coronary arteries)まとめ

◆ 基本概要

冠状動脈(coronary arteries)は、大動脈基部から分岐し、 心筋へ直接血液を供給する動脈です。 心臓拍動を維持するための唯一の動脈血供給路であり、 虚血性心疾患の病態理解において最重要の血管系です。


◆ 起始と分類

冠状動脈は上行大動脈の大動脈弁直上(大動脈洞)から分岐します。 左右2本に分かれ、それぞれが心臓表面を取り巻くように走行します。

  • 右冠状動脈(RCA)
  • 左冠状動脈(LCA)

◆ 主な分枝

【右冠状動脈】

  • 洞房結節枝
  • 右縁枝
  • 後下行枝(後室間枝)

【左冠状動脈】

  • 前室間枝(左前下行枝:LAD)
  • 回旋枝(LCX)
  • 対角枝

◆ 支配領域(灌流領域)

右冠状動脈は主に右心房・右心室・洞房結節・房室結節を灌流します。 左冠状動脈は左心室前壁・側壁・心室中隔前方を主に灌流します。 心臓のポンプ機能維持に直結する血流供給路です。


◆ 血流の特徴

冠状動脈血流は主に拡張期に増加します。 収縮期には心筋圧迫により血流が一時的に低下するため、 血圧低下や頻脈は虚血を誘発しやすくなります。


◆ 臨床的重要性

  • 狭心症(心筋虚血)
  • 心筋梗塞(急性閉塞)
  • 冠動脈硬化症
  • 経皮的冠動脈形成術(PCI)・ステント治療

◆ 東洋医学的観点

冠状動脈の機能は、手少陰心経手厥陰心包経と理論的に関連づけられます。 神門内関郄門など、 胸部症状や動悸・胸痛に用いられる取穴の背景には、 心筋循環の理解が重要です。 胸部前面では任脈上の膻中も循環調整点として臨床的意義が高い部位です。


腹部大動脈(abdominal aorta)まとめ

◆ 基本概要

腹部大動脈(abdominal aorta)は、胸部大動脈に続く下行大動脈の腹腔内部分であり、 腹部臓器および腹壁・骨盤へ血液を供給する最大の動脈幹です。 消化・代謝・泌尿生殖機能を支える中枢循環路として極めて重要です。


◆ 位置と範囲

腹部大動脈は第12胸椎レベルで横隔膜の大動脈裂孔を通過して始まり、 第4腰椎レベルで左右の総腸骨動脈へ分岐します。 椎体前面やや左側を下行するのが特徴です。


◆ 主な分枝

【臓側枝(内臓枝)】

  • 腹腔動脈
  • 上腸間膜動脈
  • 下腸間膜動脈
  • 腎動脈
  • 精巣動脈/卵巣動脈

【壁側枝】

  • 下横隔動脈
  • 腰動脈(4対)
  • 正中仙骨動脈

◆ 支配領域(灌流領域)

腹部大動脈は、胃・肝・脾・膵・小腸・大腸・腎臓・副腎・生殖腺など 腹腔および後腹膜臓器を広く灌流します。 さらに腰動脈を介して体幹後面・脊柱周囲筋群へも血流を供給します。


◆ 触診・体表解剖の要点

痩せ型では臍上部正中で拍動を触知できることがあります。 ただし強い圧迫は禁忌であり、 拍動増強は動脈瘤の鑑別が必要です。 体表では臍(L3〜L4相当)が重要なランドマークとなります。


◆ 臨床的重要性

  • 腹部大動脈瘤(AAA)の好発部位
  • 腸管虚血・腎虚血との関連
  • 動脈硬化の進展部位
  • 側副循環(上・下腸間膜動脈吻合など)

◆ 東洋医学的観点

腹部大動脈の走行は、任脈の深層および足陽明胃経足太陰脾経足少陰腎経の 腹部経穴と解剖学的に対応します。 中脘神闕気海関元など、 内臓機能調整に用いられる取穴の深部循環理解は、 臨床理論構築の基盤となります。


胸部大動脈(thoracic aorta)まとめ

◆ 基本概要

胸部大動脈(thoracic aorta)は、大動脈弓に続く下行大動脈の胸腔内部分であり、 胸壁・脊柱・縦隔・食道などへ血液を供給する主要動脈です。 体幹後面および胸郭内臓器の循環を担う中枢的血管構造です。


◆ 位置と範囲

胸部大動脈は第4胸椎付近で大動脈弓から連続し、 第12胸椎レベルで横隔膜の大動脈裂孔を通過して腹部大動脈へ移行します。 脊柱前面やや左側を下行するのが特徴です。


◆ 主な分枝

【壁側枝】

  • 後肋間動脈(第3〜第11肋間)
  • 肋下動脈
  • 上横隔動脈

【臓側枝】

  • 気管支動脈
  • 食道動脈
  • 縦隔枝
  • 心膜枝

◆ 支配領域(灌流領域)

胸部大動脈は、胸壁、脊髄、食道、気管支、肺の一部、 縦隔組織、横隔膜上部を灌流します。 特に後肋間動脈を介して脊髄への血流供給にも関与します。


◆ 触診・体表解剖の要点

胸部大動脈は深部構造であり体表から触知できません。 ただし、胸椎前面左側を走行する解剖的位置関係は、 胸背部症状や体幹治療の理解に重要です。


◆ 臨床的重要性

  • 胸部大動脈瘤・解離の好発部位
  • 肋間動脈由来の出血源
  • 脊髄虚血との関連
  • 外傷・高血圧との関連病態

◆ 東洋医学的観点

胸部大動脈の走行は、督脈および足太陽膀胱経の胸椎レベル経穴と深層で対応します。 身柱至陽膈兪心兪など、 胸部循環・自律神経調整に関与する取穴理解において、 深部血管解剖の把握は理論構築の基盤となります。


橈側手根伸筋の起始・停止・作用まとめ

橈側手根伸筋は、前腕後面に位置する手関節伸展筋群で、手関節の伸展(背屈)と橈屈を担います。テニス肘(外側上顆炎)と密接に関連する重要な筋群です。


◆ 構成筋



◆ 起始・停止・神経支配

筋名起始停止神経支配
長橈側手根伸筋 上腕骨外側上顆上稜 第2中手骨 橈骨神経(C6〜C7)
短橈側手根伸筋 上腕骨外側上顆(総伸筋腱) 第3中手骨 橈骨神経深枝(C7〜C8)


◆ 作用



◆ 触診ポイント

  • 前腕後面橈側(親指側)
  • 拳を握り手首を背屈させると筋腹が明瞭
  • 外側上顆直下に圧痛が出やすい(特に短橈側手根伸筋


◆ 臨床・機能的特徴

  • テニス肘(外側上顆炎)の主因筋は短橈側手根伸筋
  • マウス操作・キーボード作業で過緊張
  • ドアノブ回しやペットボトル開栓で痛み増強
  • 橈骨神経障害との鑑別が重要
短橈側手根伸筋は外側上顆炎の責任筋になりやすい。


◆ 関連症状

  • 肘外側の疼痛
  • 握力低下
  • 前腕橈側の張り感


◆ 東洋医学的関連(経絡・経穴)



🎓 橈側手根伸筋は「手関節安定の要」であり、反復動作による障害が非常に多い筋群です。

板状筋の起始・停止・作用まとめ

板状筋は、後頸部から上背部にかけて位置する浅層筋で、頭部・頸部の伸展、回旋、側屈に関与します。僧帽筋の深層にあり、首こり・緊張性頭痛と密接に関係する筋群です。


◆ 構成筋



◆ 起始・停止・神経支配

筋名起始停止神経支配
頭板状筋 項靭帯、C7〜T3棘突起 乳様突起、上項線外側部 脊髄神経後枝(主にC3〜C5)
頸板状筋 T3〜T6棘突起 C1〜C3横突起 脊髄神経後枝(頸神経後枝)


◆ 作用

  • 両側収縮:頭部・頸部の伸展
  • 片側収縮:同側回旋・側屈
  • 頸椎の安定化


◆ 触診ポイント

  • 僧帽筋上部の深層
  • 乳様突起の後下方から斜め内側へ走行
  • 首を後ろへ反らす・回旋させると収縮を確認可能


◆ 臨床・機能的特徴

  • スマホ首・ストレートネックで過緊張しやすい
  • 緊張性頭痛のトリガーポイント部位
  • 後頭部痛・目の奥の痛みと関連
  • 胸鎖乳突筋との機能バランスが重要
板状筋は「首を支える後面の主働筋」。過緊張すると後頭部痛を引き起こす。


◆ 関連症状

  • 後頭部の鈍痛
  • 首の可動域制限(特に回旋)
  • 眼精疲労との関連


◆ 東洋医学的関連(経絡・経穴)



🎓 板状筋は「頸部後面の安定・回旋筋」であり、姿勢不良やストレスの影響を受けやすい重要筋群です。

菱形筋の起始・停止・作用まとめ

Rhomboid muscles animation small

菱形筋は、肩甲骨と脊柱を結ぶ深層筋で、肩甲骨の内転(寄せる動き)・下方回旋・固定を担う重要な筋です。猫背や巻き肩と密接に関係し、姿勢改善の鍵となる筋群です。


◆ 構成筋



◆ 起始・停止・神経支配

筋名起始停止神経支配
小菱形筋 第6・7頸椎棘突起 肩甲骨内側縁(肩甲棘上部) 肩甲背神経(C4〜C5)
大菱形筋 第1〜4胸椎棘突起 肩甲骨内側縁(肩甲棘下部) 肩甲背神経(C4〜C5)


◆ 作用



◆ 触診ポイント

  • 肩甲骨内側縁と脊柱の間
  • 両肩を後ろへ引く動作で収縮を確認
  • 肩甲間部の「コリ」として自覚されやすい


◆ 臨床・機能的特徴

  • 猫背・巻き肩で伸張弱化しやすい
  • デスクワークで慢性的に過緊張
  • 肩甲骨が外転位(前方に流れる)と機能低下
  • 前鋸筋僧帽筋中部とのバランスが重要
菱形筋は「肩甲骨を寄せる筋」。弱化すると姿勢が崩れ、肩こりの原因となる。


◆ 関連症状

  • 肩甲骨内側の鈍痛
  • 肩甲間部のトリガーポイント痛
  • 腕を上げにくい感覚(肩甲骨の安定不足)


◆ 東洋医学的関連(経絡・経穴)



🎓 菱形筋は「姿勢安定筋」であり、肩こり・猫背改善の中心的存在です。

陰部神経(pudendal nerve)まとめ

概要

陰部神経は仙骨神経叢由来(S2–S4)の混合神経であり、 会陰部の感覚および外尿道括約筋外肛門括約筋などの随意筋を支配する。 排尿・排便・性機能の制御に重要な神経である。


起始


走行

仙骨神経叢から分岐後、 大坐骨孔(梨状筋下孔)を通って骨盤外へ出る。

坐骨棘の後方で仙棘靭帯を回り込み、 小坐骨孔から再び骨盤内(会陰部)へ入る。

その後、陰部管(Alcock管)を前方へ走行する。


主な枝

  • 下直腸神経
  • 会陰神経
  • 陰茎(陰核)背神経

支配筋(運動)


支配領域(感覚)

  • 肛門周囲
  • 会陰部皮膚
  • 陰茎・陰核
  • 陰嚢・大陰唇の一部

機能

  • 排尿・排便の随意制御
  • 性器感覚伝達
  • 射精・勃起反射補助

臨床的ポイント

  • 陰部神経痛(Pudendal neuralgia)
  • 自転車長時間乗車による圧迫障害
  • 分娩時の神経損傷
  • S2–S4神経根障害(馬尾症候群)との関連

鑑別ポイント

  • 膀胱直腸障害は副交感神経(骨盤内臓神経)も関与
  • 感覚+随意括約筋障害があれば陰部神経を疑う

関連血管

  • 内陰部動脈
  • 内陰部静脈

東洋医学的観点

陰部神経の支配領域は、 任脈督脈および足の少陰腎経と深く関連する。


関連経絡・経穴

会陰(CV1)関元(CV4)次髎(BL32)などが臨床応用される。


まとめ

陰部神経はS2–S4由来の混合神経であり、 会陰部の感覚と排尿・排便・性機能を制御する重要神経である。 骨盤内疾患や馬尾症候群との関連理解が臨床上不可欠である。