横隔神経(Phrenic nerve)まとめ

概要

横隔神経は頸神経叢から分岐し、 横隔膜を支配する唯一の運動神経である。 呼吸運動の中枢的役割を担い、 生命維持に不可欠な神経である。


構成

  • C3
  • C4
  • C5

※「C3–5 keeps the diaphragm alive」と覚えられる。


走行

横隔神経は前斜角筋の前面を下降し、 胸郭入口を通過して縦隔へ入る。

その後、心膜の外側を下行し、 横隔膜中央腱へ分布する。


主な枝

  • 横隔膜枝(運動)
  • 心膜枝
  • 胸膜枝
  • 腹膜枝

支配筋


支配領域(感覚)


機能

  • 吸気時の横隔膜収縮
  • 胸腔内圧調整
  • 呼吸リズム形成への関与

臨床的ポイント

  • 横隔神経麻痺(片側呼吸障害)
  • 吃逆(しゃっくり)
  • 頸椎損傷(C3–5)による呼吸停止
  • 横隔膜挙上(X線所見)

関連する筋


関連する血管

  • 心横隔動脈
  • 筋横隔動脈

東洋医学的観点

横隔神経の機能は、 東洋医学における足の少陰腎経および 手の太陰肺経と関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では膻中(CV17)中府(LU1)太渓(KI3)などが 横隔神経関連症状に応用される。


まとめ

横隔神経は呼吸運動を司る生命維持神経であり、 C3–5の機能評価は臨床上極めて重要である。 頸部損傷や胸部手術時には必ず考慮すべき神経である。

頸神経ワナ(Ansa cervicalis)まとめ

概要

頸神経ワナは頸神経叢から形成される神経ループであり、 舌骨下筋群を支配する運動神経回路である。 嚥下・発声・喉頭位置調整に関与し、 頸部前面機能の制御に重要な役割を担う。


構成


形成

C1線維は一時的に舌下神経(Ⅻ)と伴走し、 その後分離して上根を形成する。

C2・C3からの下根と合流し、 頸動脈鞘前面にてループ(ワナ)を形成する。


走行

頸神経ワナは頸動脈鞘の前壁に沿って走行し、舌骨下筋群へ枝を分布する。


主な枝


支配筋

甲状舌骨筋はC1線維が舌下神経を介して支配する。


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能

  • 舌骨の下制
  • 嚥下時の喉頭調整
  • 発声補助

臨床的ポイント

  • 甲状腺手術時の損傷リスク
  • 嚥下障害
  • 頸部前面緊張との関連

関連する筋


関連する血管


東洋医学的観点

頸神経ワナの機能は、 東洋医学における任脈および 足の少陰腎経と関連する。


関連経絡・経穴

臨床では天突(CV22)廉泉(CV23)復溜(KI7)などが 関連症状に応用される。


まとめ

頸神経ワナは舌骨下筋群を制御する運動神経ループであり、 嚥下・発声・喉頭安定に重要な役割を担う。 頸部手術や嚥下障害評価において理解が不可欠である。

下殿神経(Inferior gluteal nerve)まとめ

概要

下殿神経は仙骨神経叢から分岐し、 大殿筋の主要な運動神経として機能する。 股関節伸展および体幹直立の維持に不可欠で、 障害時には立ち上がりや階段昇降が困難となる。


構成

  • L5
  • S1
  • S2

走行

下殿神経は仙骨神経叢から起こり、 梨状筋の下方を通過して骨盤外へ出る。

その後、大殿筋の深層を走行し、 筋全体に分布する。


主な枝


支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能

  • 股関節伸展
  • 体幹直立の保持
  • 階段昇降・立ち上がり動作

臨床的ポイント

  • 大殿筋麻痺
  • 立ち上がり動作困難
  • 階段昇降障害
  • 前傾姿勢歩行

関連する筋


関連する血管

  • 下殿動脈

東洋医学的観点

下殿神経の走行および症状は、 東洋医学における足の太陽膀胱経と 関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では承扶(BL36)殷門(BL37)委中(BL40)などが 下殿神経関連症状に応用される。


まとめ

下殿神経は下肢後面運動の起点となる神経であり、 大殿筋を介して立位・歩行・階段動作を支える。 高齢者や術後患者では特に重要な評価対象である。

上殿神経(Superior gluteal nerve)まとめ



概要

上殿神経は仙骨神経叢から分岐し、 股関節外転および骨盤安定に重要な役割を持つ神経である。 特に中殿筋小殿筋を支配し、 障害時にはトレンデレンブルグ徴候を呈する。


構成

  • L4
  • L5
  • S1

走行

上殿神経は仙骨神経叢から起こり、 梨状筋の上方を通過して骨盤外へ出る。

その後、上殿動脈と伴走しながら 中殿筋小殿筋大腿筋膜張筋へ分布する。


主な枝


支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能

  • 股関節外転
  • 歩行時の骨盤水平維持
  • 片脚立位安定

臨床的ポイント

  • トレンデレンブルグ徴候
  • 歩行時の骨盤傾斜
  • 中殿筋筋力低下
  • 股関節外転力低下

関連する筋


関連する血管

  • 上殿動脈

東洋医学的観点

上殿神経の走行および症状は、 東洋医学における足の少陽胆経と関連が深い。

  • 殿部外側痛:胆経の気滞・瘀血
  • 股関節外転力低下:肝胆失調
  • 歩行不安定:腎虚

関連経絡・経穴

臨床では環跳(GB30)風市(GB31)陽陵泉(GB34)などが 上殿神経関連症状に応用される。


まとめ

上殿神経は歩行時の骨盤安定を担う重要な運動神経であり、 障害時にはトレンデレンブルグ徴候という典型的所見を示す。股関節機能評価において必ず確認すべき神経である。


閉鎖神経(Obturator nerve)まとめ




概要

閉鎖神経は腰神経叢から分岐し、 大腿内側(内転筋群)の主要運動神経として働く。 また大腿内側の感覚にも関与し、 歩行時の骨盤安定や下肢協調運動に重要な役割を持つ。


構成

  • L2
  • L3
  • L4

走行

閉鎖神経は大腰筋内側を下行し、 小骨盤内へ進入する。

その後閉鎖管を通過して大腿内側へ到達し、 前枝と後枝に分岐する。


主な枝

  • 前枝
  • 後枝
  • 関節枝(股関節)

支配筋


支配領域(感覚)

  • 大腿内側中央部(小範囲)

機能

  • 股関節内転
  • 歩行時の骨盤安定
  • 方向転換時の下肢制御

臨床的ポイント

  • 閉鎖神経障害(骨盤手術・分娩時)
  • 内転筋筋力低下
  • 大腿内側感覚低下
  • 歩行時の不安定感

関連する筋

  • 内転筋群

関連する血管

  • 閉鎖動脈

東洋医学的観点

閉鎖神経の走行および症状は、 東洋医学における足の厥陰肝経と関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では足五里(LR10)陰包(LR9)太衝(LR3)などが 閉鎖神経関連症状に応用される。


まとめ

閉鎖神経は大腿内側機能の中核を担い、 特に内転筋群の運動制御に不可欠である。 股関節安定性や歩行制御の観点からも重要な神経である。

大腿神経(Femoral nerve)まとめ




概要

大腿神経は腰神経叢の最大枝であり、 大腿前面の運動機能下肢内側の感覚を担う重要な神経である。 特に膝関節伸展に不可欠で、 障害時には歩行障害や階段昇降困難を生じる。


構成

  • L2
  • L3
  • L4

走行

大腿神経は腰神経叢から起こり、 大腰筋腸骨筋の間を下行する。

その後、鼠径靭帯の下を通過し、 大腿三角から大腿前面へ分布する。

遠位では伏在神経を分岐し、 下腿内側の感覚を支配する。


主な枝

  • 筋枝
  • 前皮神経枝
  • 伏在神経

支配筋


支配領域(感覚)

  • 大腿前面
  • 下腿内側(伏在神経)

機能


臨床的ポイント

  • 膝蓋腱反射低下・消失
  • 大腿神経麻痺(骨盤手術後など)
  • 歩行困難
  • 伏在神経領域の感覚障害

関連する筋


関連する血管


東洋医学的観点

大腿神経の走行および症状は、 東洋医学における足の陽明胃経および 足の太陰脾経と関連する。


関連経絡・経穴

臨床では伏兎(ST32)足三里(ST36)血海(SP10)などが 大腿神経障害に応用される。


まとめ

大腿神経は下肢前面機能の中核を担い、 特に膝関節伸展に不可欠である。 膝蓋腱反射の評価は大腿神経機能評価の基本となる。

腋窩神経(Axillary nerve)まとめ

概要

腋窩神経は腕神経叢の終枝の一つであり、 肩関節の外転運動と肩外側の感覚を担う。 特に上腕骨外科頸との位置関係が重要で、 外傷時に損傷されやすい神経として知られる。


構成

  • C5
  • C6

走行

腋窩神経は腕神経叢後神経束から起こり、 四辺形間隙を通過して肩後方へ向かう。

その後、上腕骨外科頸を後方から回り込み、 三角筋の深層を前後に分かれて走行する。


主な枝

  • 前枝
  • 後枝
  • 上外側上腕皮神経

支配筋


支配領域(感覚)

  • 上腕外側上部(レジメンタルバッジ領域)

機能


臨床的ポイント


関連する筋


関連する血管

  • 後上腕回旋動脈

東洋医学的観点

腋窩神経の走行と症状は、 東洋医学における足の少陽胆経と 強い関連を示す。


関連経絡・経穴

臨床では肩髃(LI15)肩髎(TE14)陽陵泉(GB34)などが 腋窩神経障害に用いられる。


まとめ

腋窩神経は肩関節外転の要となる神経であり、 外科頸骨折や肩関節脱臼では必ず評価すべき神経である。 三角筋の形態変化と感覚領域の確認が、 臨床判断の重要な指標となる。