肩甲下神経(Subscapular nerve)まとめ

"Image courtesy of Visible Body"(画像提供:Visible Body)

概要

肩甲下神経は腕神経叢の後神経束から分岐する運動神経であり、 肩関節内旋および安定化に重要な役割を担う。 通常、上肩甲下神経と下肩甲下神経の2枝に分かれる。


構成

  • C5
  • C6

走行

肩甲下神経は後神経束から分岐し、 肩甲下筋前面へ向かう。

上肩甲下神経は肩甲下筋上部を支配し、 下肩甲下神経は肩甲下筋下部および 大円筋へ分布する。


主な枝

  • 上肩甲下神経
  • 下肩甲下神経

支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能


臨床的ポイント


関連する筋


関連する血管

  • 肩甲下動脈

東洋医学的観点

肩甲下神経の走行および症状は、 東洋医学における手の厥陰心包経および 手の太陽小腸経と関連がみられる。


関連経絡・経穴

臨床では曲沢(PC3)天宗(SI11)肩貞(SI9)などが 肩甲下神経関連症状に応用される。


まとめ

肩甲下神経は肩関節内旋と前方安定性を担う重要な運動神経であり、ローテーターカフ機構の一角を構成する。 肩前方不安定症や内旋障害の評価に不可欠である。

肩甲背神経(Dorsal scapular nerve)まとめ

概要

肩甲背神経は腕神経叢の神経根から直接分岐する神経であり、 肩甲骨内側の安定化と挙上に関与する。 菱形筋および肩甲挙筋を支配し、 肩甲骨の内転・固定機能に重要な役割を担う。


構成

  • C5

走行

肩甲背神経はC5神経根から直接分岐し、 中斜角筋を貫通して後方へ向かう。

その後、肩甲骨内側縁に沿って下降し、 菱形筋群および肩甲挙筋へ分布する。


主な枝

  • 肩甲挙筋枝
  • 小菱形筋枝
  • 大菱形筋枝

支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能


臨床的ポイント

  • 肩甲骨内側縁痛
  • 菱形筋筋力低下
  • 肩甲骨外転傾向(軽度翼状肩甲)
  • デスクワーク姿勢との関連

関連する筋


関連する血管


東洋医学的観点

肩甲背神経の走行および症状は、 東洋医学における手の太陽小腸経および 足の太陽膀胱経と関連が深い。

  • 肩甲内側痛:小腸経の気滞
  • 慢性肩背部緊張:膀胱経の瘀血
  • 姿勢不良由来の疼痛:肝血不足

関連経絡・経穴

臨床では天宗(SI11)肩外兪(SI14)附分(BL41)などが 肩甲背神経関連症状に応用される。


まとめ

肩甲背神経は肩甲骨内側安定機構を担う重要な神経であり、 姿勢保持および上肢機能の基盤を形成する。 慢性肩背部痛では評価対象とすべき神経である。

肩甲上神経(Suprascapular nerve)まとめ


概要

肩甲上神経は腕神経叢上神経幹から分岐し、 棘上筋および棘下筋を支配する重要な運動神経である。 肩関節外転初動および外旋機能に関与し、 スポーツ障害(特に投球動作)と関連が深い。


構成

  • C5
  • C6

走行

肩甲上神経は腕神経叢の上神経幹から起こり、 肩甲骨上縁へ向かう。

その後、肩甲切痕を通過し、 棘上窩へ入り棘上筋へ枝を出す。

さらに肩甲棘外側縁(肩甲棘下縁)を回り込み、 棘下窩へ至り棘下筋を支配する。


主な枝

  • 棘上筋枝
  • 棘下筋枝
  • 関節枝(肩関節)

支配筋


支配領域(感覚)


機能


臨床的ポイント

  • 肩甲切痕部での絞扼(肩甲上神経障害)
  • 棘上筋棘下筋萎縮
  • 外旋力低下
  • 野球肩・オーバーヘッド動作障害

関連する筋


関連する血管


東洋医学的観点

肩甲上神経の走行および症状は、 東洋医学における手の太陽小腸経および 足の少陽胆経と関連が深い。

  • 肩後上部痛:小腸経の気滞
  • 外旋力低下:胆経の失調
  • 投球障害:肝血不足

関連経絡・経穴

臨床では天宗(SI11)秉風(SI12)肩井(GB21)などが 肩甲上神経関連症状に応用される。


まとめ

肩甲上神経はローテーターカフの中核を担う神経であり、 肩関節外転初動および外旋機能に不可欠である。 肩甲切痕部での絞扼は臨床的に重要であり、 スポーツ選手では特に注意を要する。

横隔神経(Phrenic nerve)まとめ

概要

横隔神経は頸神経叢から分岐し、 横隔膜を支配する唯一の運動神経である。 呼吸運動の中枢的役割を担い、 生命維持に不可欠な神経である。


構成

  • C3
  • C4
  • C5

※「C3–5 keeps the diaphragm alive」と覚えられる。


走行

横隔神経は前斜角筋の前面を下降し、 胸郭入口を通過して縦隔へ入る。

その後、心膜の外側を下行し、 横隔膜中央腱へ分布する。


主な枝

  • 横隔膜枝(運動)
  • 心膜枝
  • 胸膜枝
  • 腹膜枝

支配筋


支配領域(感覚)


機能

  • 吸気時の横隔膜収縮
  • 胸腔内圧調整
  • 呼吸リズム形成への関与

臨床的ポイント

  • 横隔神経麻痺(片側呼吸障害)
  • 吃逆(しゃっくり)
  • 頸椎損傷(C3–5)による呼吸停止
  • 横隔膜挙上(X線所見)

関連する筋


関連する血管

  • 心横隔動脈
  • 筋横隔動脈

東洋医学的観点

横隔神経の機能は、 東洋医学における足の少陰腎経および 手の太陰肺経と関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では膻中(CV17)中府(LU1)太渓(KI3)などが 横隔神経関連症状に応用される。


まとめ

横隔神経は呼吸運動を司る生命維持神経であり、 C3–5の機能評価は臨床上極めて重要である。 頸部損傷や胸部手術時には必ず考慮すべき神経である。

頸神経ワナ(Ansa cervicalis)まとめ

概要

頸神経ワナは頸神経叢から形成される神経ループであり、 舌骨下筋群を支配する運動神経回路である。 嚥下・発声・喉頭位置調整に関与し、 頸部前面機能の制御に重要な役割を担う。


構成


形成

C1線維は一時的に舌下神経(Ⅻ)と伴走し、 その後分離して上根を形成する。

C2・C3からの下根と合流し、 頸動脈鞘前面にてループ(ワナ)を形成する。


走行

頸神経ワナは頸動脈鞘の前壁に沿って走行し、舌骨下筋群へ枝を分布する。


主な枝


支配筋

甲状舌骨筋はC1線維が舌下神経を介して支配する。


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能

  • 舌骨の下制
  • 嚥下時の喉頭調整
  • 発声補助

臨床的ポイント

  • 甲状腺手術時の損傷リスク
  • 嚥下障害
  • 頸部前面緊張との関連

関連する筋


関連する血管


東洋医学的観点

頸神経ワナの機能は、 東洋医学における任脈および 足の少陰腎経と関連する。


関連経絡・経穴

臨床では天突(CV22)廉泉(CV23)復溜(KI7)などが 関連症状に応用される。


まとめ

頸神経ワナは舌骨下筋群を制御する運動神経ループであり、 嚥下・発声・喉頭安定に重要な役割を担う。 頸部手術や嚥下障害評価において理解が不可欠である。

下殿神経(Inferior gluteal nerve)まとめ

概要

下殿神経は仙骨神経叢から分岐し、 大殿筋の主要な運動神経として機能する。 股関節伸展および体幹直立の維持に不可欠で、 障害時には立ち上がりや階段昇降が困難となる。


構成

  • L5
  • S1
  • S2

走行

下殿神経は仙骨神経叢から起こり、 梨状筋の下方を通過して骨盤外へ出る。

その後、大殿筋の深層を走行し、 筋全体に分布する。


主な枝


支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能

  • 股関節伸展
  • 体幹直立の保持
  • 階段昇降・立ち上がり動作

臨床的ポイント

  • 大殿筋麻痺
  • 立ち上がり動作困難
  • 階段昇降障害
  • 前傾姿勢歩行

関連する筋


関連する血管

  • 下殿動脈

東洋医学的観点

下殿神経の走行および症状は、 東洋医学における足の太陽膀胱経と 関連が深い。


関連経絡・経穴

臨床では承扶(BL36)殷門(BL37)委中(BL40)などが 下殿神経関連症状に応用される。


まとめ

下殿神経は下肢後面運動の起点となる神経であり、 大殿筋を介して立位・歩行・階段動作を支える。 高齢者や術後患者では特に重要な評価対象である。

上殿神経(Superior gluteal nerve)まとめ



概要

上殿神経は仙骨神経叢から分岐し、 股関節外転および骨盤安定に重要な役割を持つ神経である。 特に中殿筋小殿筋を支配し、 障害時にはトレンデレンブルグ徴候を呈する。


構成

  • L4
  • L5
  • S1

走行

上殿神経は仙骨神経叢から起こり、 梨状筋の上方を通過して骨盤外へ出る。

その後、上殿動脈と伴走しながら 中殿筋小殿筋大腿筋膜張筋へ分布する。


主な枝


支配筋


支配領域(感覚)

  • なし(運動神経)

機能

  • 股関節外転
  • 歩行時の骨盤水平維持
  • 片脚立位安定

臨床的ポイント

  • トレンデレンブルグ徴候
  • 歩行時の骨盤傾斜
  • 中殿筋筋力低下
  • 股関節外転力低下

関連する筋


関連する血管

  • 上殿動脈

東洋医学的観点

上殿神経の走行および症状は、 東洋医学における足の少陽胆経と関連が深い。

  • 殿部外側痛:胆経の気滞・瘀血
  • 股関節外転力低下:肝胆失調
  • 歩行不安定:腎虚

関連経絡・経穴

臨床では環跳(GB30)風市(GB31)陽陵泉(GB34)などが 上殿神経関連症状に応用される。


まとめ

上殿神経は歩行時の骨盤安定を担う重要な運動神経であり、 障害時にはトレンデレンブルグ徴候という典型的所見を示す。股関節機能評価において必ず確認すべき神経である。