1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:棘上筋(きょくじょうきん)
- 英名:Supraspinatus muscle
- ラテン語:Musculus supraspinatus
2.起始・停止
- 起始:
- 肩甲骨の棘上窩(supraspinous fossa of scapula)
- 停止:
- 上腕骨大結節(greater tubercle of humerus)の上面
棘上筋は肩甲骨棘の上方(棘上窩)に位置し、肩峰と肩甲骨棘の間をくぐり抜けて上腕骨に停止する。
腱は肩関節包と癒合し、腱板(ローテーターカフ)を形成する一部となる。
3.支配神経
- 肩甲上神経(suprascapular nerve, C5・C6)
4.作用
- 肩関節の外転(外転初動に重要:0〜15°)
- 肩関節包の安定化(上腕骨頭を関節窩に押しつける)
棘上筋は三角筋が主導する外転運動の起始筋として働き、
同時に肩関節の脱臼防止にも寄与する。
5.関連する経穴
棘上筋部には手の太陽小腸経と手の陽明大腸経が交わる経穴が多く、
肩の可動域制限や肩関節炎に対して重要な治療点となる。
6.臨床での関連
- 棘上筋腱炎・棘上筋腱断裂(肩腱板損傷の代表例)
- 肩関節周囲炎(いわゆる「五十肩」)
- 外転時痛(ペインフルアーク症状)
- 肩の重だるさ・夜間痛
- 肩甲骨周囲のこり(秉風〜肩髃付近)
棘上筋は腱板損傷の好発部位であり、加齢や姿勢不良で容易に炎症・断裂を起こす。
鍼灸臨床では「肩髃」「秉風」「肩髎」などを用いて局所循環を改善する。
7.臨床メモ
- 外転初動(0〜15°)で痛みが出る場合は棘上筋障害を疑う。
- 肩甲骨の安定性(僧帽筋・前鋸筋など)と連動して調整することが有効。
- 肩こり・首こりの奥の「隠れ原因筋」となることも多い。
- 温熱療法や鍼通電による血流改善が効果的。
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