1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:棘下筋(きょくかきん)
- 英名:Infraspinatus muscle
- ラテン語:Musculus infraspinatus
2.起始・停止
- 起始:
- 肩甲骨の棘下窩(infraspinous fossa of scapula)
- 停止:
- 上腕骨大結節(greater tubercle of humerus)の中面
棘下筋は肩甲棘の下方(棘下窩)に広がる三角形の筋で、
棘上筋のすぐ下に位置する。腱は肩関節包と癒合し、腱板(ローテーターカフ)を構成する。
3.支配神経
- 肩甲上神経(suprascapular nerve, C5・C6)
4.作用
- 肩関節の外旋(外向きにひねる動き)
- 肩関節の安定化(上腕骨頭を関節窩に押しつける)
- 肩関節の水平伸展に補助的に作用
棘下筋は小円筋・棘上筋・肩甲下筋と協調し、
肩関節の安定とスムーズな回旋運動を支える。
5.関連する経穴
棘下筋部には手の太陽小腸経と手の少陽三焦経が交差し、
肩背部のこりや肩関節の可動制限に対する主要な治療領域となる。
6.臨床での関連
- 棘下筋腱炎・棘下筋のトリガーポイント(肩の奥の痛み)
- ローテーターカフ損傷(特に棘上筋とともに障害されやすい)
- 外旋制限・外旋時痛(後ろポケットに手を入れる動作で痛む)
- 肩関節周囲炎(五十肩)
- 肩甲骨内側の放散痛(肩甲間部痛)
棘下筋は肩の奥の深いこり・鈍痛を起こしやすく、
肩関節後方の可動性制限の主因となる。
鍼灸では「天宗」「臑会」「肩髎」などを選穴し、局所循環の改善と筋緊張の緩和を図る。
7.臨床メモ
- 外旋筋群(棘下筋・小円筋)の短縮は「巻き肩」「猫背」を助長する。
- 肩関節の後方滑りを妨げ、インピンジメント症候群の原因となる。
- 棘下筋の圧痛点は天宗(SI11)付近に出現することが多い。
- 施術では肩甲骨の可動化(肩甲胸郭リズムの回復)と併用すると効果的。
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