上腕骨(Humerus)の特徴と筋付着部

Wikimediaより

骨の名称

  • 和名:上腕骨
  • 英名:Humerus
  • ラテン名:Humerus

分類

  • 長骨(上肢の最も長い骨)

特徴・ランドマーク

  • 上端
    • 骨頭(head):肩甲骨関節窩と関節を形成。
    • 解剖頸(anatomical neck):関節包付着部。
    • 外科頸(surgical neck):骨折の好発部位。腋窩神経・後上腕回旋動脈が近接。
    • 大結節(greater tubercle):肩甲骨からの筋停止部(棘上筋・棘下筋・小円筋)。
    • 小結節(lesser tubercle):肩甲下筋停止部。
    • 結節間溝(intertubercular groove):上腕二頭筋長頭腱が通る。結節間溝の外側稜=大結節稜(広背筋・大胸筋停止)、内側稜=小結節稜(大円筋停止)。
  • 骨幹(shaft / body)
    • 三角筋粗面(deltoid tuberosity):三角筋停止部。
    • 橈骨神経溝(radial groove):橈骨神経と深上腕動脈が走行。
  • 下端(distal end)
    • 滑車(trochlea):尺骨と関節を形成(腕尺関節)。
    • 小頭(capitulum):橈骨頭と関節を形成(腕橈関節)。
    • 外側上顆(lateral epicondyle):伸筋群起始部。
    • 内側上顆(medial epicondyle):屈筋群起始部。尺骨神経が後方を通過。


関節

  • 近位端:肩甲骨関節窩と 肩関節(肩甲上腕関節) を形成
  • 遠位端:
    • 橈骨と 腕橈関節 を形成
    • 尺骨と 腕尺関節 を形成


筋付着

  • 起始する筋(上腕骨から始まる)
    • 前面 
      • 上腕筋(前面下半)
      • 烏口腕筋(小結節稜近くの前内側面) 
    • 後面 
      • 上腕三頭筋外側頭(橈骨神経溝の上、後面上方)   
      • 上腕三頭筋内側頭(橈骨神経溝の下、後面下方)
    • 内側上顆 屈筋群の総起始
      • 円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋・尺側手根屈筋・浅指屈筋
    • 外側上顆及びその周辺(伸筋群の総起始
      • 短橈側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋・尺側手根伸筋 (外側上顆)
      • 回外筋(外側上顆と尺骨後面)
      • 長橈側手根伸筋・腕橈骨筋(外側上顆稜)
  • 停止する筋(上腕骨で終わる)
    • 三角筋(三角筋粗面)
    • 大胸筋(大結節稜)
    • 広背筋(結節間溝底)
    • 大円筋(小結節稜)
    • 棘上筋・棘下筋・小円筋(大結節)
    • 肩甲下筋(小結節)


神経支配(関連する筋を通じて)

  • 腋窩神経(C5, C6) → 三角筋
  • 筋皮神経(C5–C7) → 上腕筋・烏口腕筋
  • 外側・内側胸筋神経 → 大胸筋
  • 胸背神経 → 広背筋
  • 上肩甲下神経 → 肩甲下筋 
  • 肩甲上神経 → 棘上筋・棘下筋
  • 橈骨神経(C5–T1) → 上腕骨後面の橈骨神経溝を通過、損傷リスクあり


血管との関係

  • 深上腕動脈:橈骨神経とともに橈骨神経溝を下行。
  • 後上腕回旋動脈:外科頸近くを走行、骨折時に損傷しやすい。


臨床的意義

  • 外科頸骨折 → 腋窩神経損傷 → 三角筋麻痺、肩の外転障害。
  • 骨幹骨折(橈骨神経溝部) → 橈骨神経麻痺 → 下垂手。
  • 内側上顆骨折 → 尺骨神経損傷 → 鷲手変形。
  • 外側上顆炎(テニス肘) → 伸筋群起始部の炎症。


触診ポイント

  • 三角筋をリラックスさせ、肩外側から触ると大結節に触れる。
  • 上腕骨体幹外側は三角筋粗面を意識しながら上下に撫でると確認しやすい。
  • 肘を曲げた状態で内側・外側上顆を触れると骨端の位置が明瞭。


東洋医学的関連

  • 経穴:肩髃(大結節付近)、臂臑(三角筋粗面付近)、少海(内側上顆付近)、小海(尺骨神経走行部)。
  • 古典的考え方:肝は筋を主り、肝経・大腸経が上腕を巡るため、肝気の滞りや大腸経の異常が上腕部の筋硬直や痛みとして現れると考えられる。


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