1.定義(Definition)
- 上腕骨外側上顆に付着する伸筋群(特に短橈側手根伸筋)の腱に炎症や変性が起こる疾患。
- 俗に「テニス肘(ひじ)」と呼ばれるが、テニス以外の動作(家事・仕事)でも起こる。
2.疫学(Epidemiology)
- 中高年(30〜50歳)に多い。
- 利き手側に多発。
- テニス選手の10〜50%が経験するとされる。
3.原因・病態(Etiology / Pathophysiology)
- 手首を伸ばす・ひねる動作の繰り返し。
- 特に 短橈側手根伸筋 の腱付着部(外側上顆)に微細損傷が生じる。
- 加齢に伴う腱変性も関与。
4.解剖学的背景(Anatomy)
- 上腕骨外側上顆に起始する伸筋群:
- 短橈側手根伸筋・長橈側手根伸筋・総指伸筋・小指伸筋・尺側手根伸筋・回外筋
5.症状(Clinical Features)
- 肘外側の圧痛(外側上顆)
- 手首を背屈する動作で疼痛(特に抵抗下で)
- 握力低下
- 物を持ち上げるとき(タオルを絞る、ペットボトルを開ける)で痛み
6.検査・診断(Examination / Diagnosis)
- トムソンテスト:手首背屈に抵抗をかけると痛み
- 中指伸展テスト:中指伸展に抵抗をかけると痛み
- 圧痛点:外側上顆
※画像検査(エコー・MRI)で腱の変性を確認することもある。
7.鑑別診断(Differential Diagnosis)
- 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
- 頸椎症性神経根症
- 腕橈関節の滑膜ヒダ障害(plica syndrome)
8.治療(Treatment)
- 保存療法が第一選択
- 安静・動作制限
- 物理療法(温熱・超音波・ストレッチ)
- サポーター(テニスエルボーバンド)
- 薬物療法(NSAIDs)
- 鍼灸治療:外側上顆周囲・前腕伸筋群のトリガーポイントに刺鍼
- 難治例:ステロイド注射、PRP療法、手術(腱切除・再建)
9.予後(Prognosis)
- 多くは保存療法で改善。
- 数ヶ月〜1年程度で自然軽快することもある。
- 慢性化すると再発を繰り返す。
10.鍼灸治療での経穴
- 局所穴(患部周囲):圧痛点や外側上顆周囲に直刺・斜刺(0.5〜1寸)
- 曲池(LI11):肘窩外側端。肘の痛みに頻用。
- 手三里(LI10):曲池の下2寸。前腕伸筋群に対応。
- 肘髎(LI12):上腕骨外側上顆の近く、圧痛点になりやすい。
- 遠隔穴(手の経絡・経穴):手の陽明大腸経・手の少陽三焦経に沿って配穴
- 合谷(LI4):手背、第1・第2中手骨間。鎮痛効果の代表穴。
- 外関(SJ5):前腕背側、手首から上2寸。三焦経、腕の痛みに有効。
- 下肢の配穴(遠隔治療):
- 足三里(ST36):全身調整+鎮痛
- 陽陵泉(GB34):筋腱の病に効くとされる要穴
※温灸を組み合わせることで、慢性例にも有効。
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