烏口腕筋の起始・停止・作用まとめ

Coracobrachialis muscle - animation02

1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:烏口腕筋(うこうわんきん)
  • 英名:Coracobrachialis
  • ラテン語:Musculus coracobrachialis
烏口腕筋は、肩甲骨の烏口突起から起こり、上腕骨内側面に停止する小筋。 肩関節の屈曲・内転に関与し、上腕の安定化を補助する。 上腕二頭筋短頭と近接して走行し、筋皮神経が貫通する特徴を持つ。

2.起始・停止

  • 起始:
    • 肩甲骨 烏口突起(coracoid process)
  • 停止:
    • 上腕骨 内側面中央部(上腕骨体の中央付近)
烏口腕筋は上腕骨内側に沿って走行し、上腕二頭筋短頭の深層に位置。 筋皮神経が本筋を貫いて走ることが、臨床的にも重要なランドマークとなる。

3.支配神経

  • 筋皮神経(musculocutaneous nerve, C5〜C7)
筋皮神経は本筋を貫通してから上腕前面へ分布する。 神経の走行が浅いため、過緊張や外傷で圧迫されると感覚障害(前腕外側)を生じることがある。

4.作用

  • 肩関節の屈曲(上腕を前方に挙げる)
  • 肩関節の内転(腕を体幹へ引き寄せる)
  • 上腕骨頭の安定化(肩関節を安定させる補助)
烏口腕筋は上腕二頭筋短頭・三角筋前部と協働し、 肩関節の前方安定を支える。 日常動作では「荷物を抱える」「腕を前に伸ばす」といった動作で作用。

5.関連する経穴

烏口腕筋の経絡領域には手の厥陰心包経が走行し、 肩前部痛・上腕前面痛・胸郭前部の緊張に対して「天泉」「曲沢」が有効。 また、筋の過緊張は上腕前面のだるさや放散痛を引き起こす。

6.臨床での関連(肩・腕の症状)

  • 肩関節前面痛(上腕二頭筋短頭との鑑別が重要)
  • 肩前方の詰まり感・挙上制限
  • 上腕内側の鈍痛(筋皮神経圧迫による放散痛)
  • 猫背姿勢やデスクワークによる慢性短縮
  • スポーツ障害(投球動作・プッシュアップ時の痛み)
烏口腕筋は過緊張すると肩関節の前方引き込みを起こし、 「巻き肩」「肩前方不安定」などの原因になる。 一方で、筋弱化は肩関節前方の支えを失い、脱臼傾向を助長する。 鍼灸・ストレッチで筋の柔軟性と神経滑走性を改善することが重要。

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