鎖骨下筋の起始・停止・作用まとめ

Subclavius muscle animation2

1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:鎖骨下筋(さこつかきん)
  • 英名:Subclavius
  • ラテン語:Musculus subclavius
鎖骨下筋は、第1肋骨の上面と鎖骨下面の間に位置する小筋で、 鎖骨の安定化と、胸郭上口部の保護・補助吸気運動に関与する。 鎖骨下動静脈や腕神経叢の直上に位置するため、 臨床的にも胸郭出口部の重要な構造として注目される。

2.起始・停止

  • 起始:
    • 第1肋骨とその肋軟骨の接合部(第1肋軟骨の上面)
  • 停止:
    • 鎖骨の下面中央部(鎖骨下溝:subclavian groove)
鎖骨下筋は第1肋骨から斜め上外方に走り、鎖骨の下面に停止する。 鎖骨の動きを制御し、胸鎖関節や肩鎖関節へのストレスを軽減する役割をもつ。

3.支配神経

  • 鎖骨下筋神経(nerve to subclavius, C5〜C6)
鎖骨下筋神経は腕神経叢の上幹(上神経幹)から分岐し、本筋に単独で支配する。 この神経は時に「横隔神経への枝」を出し、鎖骨下膜周囲の感覚にも関与する。

4.作用

  • 鎖骨を下方に引く(肩鎖関節の安定化)
  • 鎖骨を前下方に引くことで、肩甲帯の安定を補助
  • 第1肋骨を引き上げ、吸気の補助を行う(補助吸息筋)
鎖骨下筋は、強い肩の挙上動作時に鎖骨を安定化させ、 胸郭出口を保護する。深呼吸や努力吸気時にも補助的に活動する。

5.関連する経穴

鎖骨下筋の位置は胃経・腎経・大腸経が交わる領域に相当し、 「気戸」「缺盆」「兪府」は胸郭上部の気滞・肩前部痛に有効。 この部の緊張は、呼吸浅化・胸郭出口症候群・肩前面の張り感を引き起こすことがある。

6.臨床での関連(症状・特徴)

  • 胸郭出口症候群(鎖骨下動静脈・腕神経叢圧迫)
  • 鎖骨下部・肩前面の重だるさ
  • 吸気時の胸郭上部の違和感
  • 肩の前方突出(巻き肩)に伴う筋短縮
  • 鎖骨骨折後の拘縮・痛み
鎖骨下筋の過緊張は、鎖骨下動脈・静脈、腕神経叢を圧迫し、 上肢のしびれや冷感、肩前面の締め付け感を生じやすい。 鍼灸や呼吸リハビリでは、鎖骨下部を緩めることで胸郭の拡張が改善する。 姿勢改善では「鎖骨を開く意識」で筋のリリースを促すことが重要。

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