長掌筋の起始・停止・作用まとめ

1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:長掌筋(ちょうしょうきん)
  • 英名:Palmaris longus muscle
  • ラテン語:Musculus palmaris longus

2.起始・停止

  • 起始:
    • 上腕骨内側上顆(Medial epicondyle of humerus)―前腕屈筋群の総起始部
  • 停止:
    • 手掌腱膜(Palmar aponeurosis)
    • 屈筋支帯(Flexor retinaculum)
手首を軽く曲げて親指と小指を合わせると、前腕中央に浮き出る腱が長掌筋腱(存在する場合)。

3.支配神経

  • 正中神経(Median nerve, C7〜C8)

4.作用

  • 手関節の屈曲(軽度)
  • 手掌腱膜の緊張を高める(掌の安定化)
  • 把握動作の補助(物を掴む動作時)
主動筋というよりも、手掌の張りを調整する「補助筋」として働く。

5.関連する経穴

  • 内関(PC6):長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、長掌筋の走行上
  • 大陵(PC7):長掌筋腱の直下(手根屈筋支帯上)
  • 間使(PC5):前腕掌側中央で、長掌筋の上方部に位置
長掌筋は心包経の走行に一致し、内関・大陵など主要経穴はその上にある。
そのため、長掌筋は東洋医学的に「心の安定」「情動バランス」にも関わると考えられる。

6.臨床での関連

  • 手首の屈曲痛:長掌筋腱や屈筋支帯の緊張による圧迫
  • 手根管症候群:正中神経との位置関係から関連症状を呈することあり
  • 腱の過緊張による掌部のつっぱり感
  • 精神的ストレス時の前腕筋緊張(心包経との関係)
  • 長掌筋欠如(片側または両側)は約10〜15%に見られるが、機能的問題は少ない

7.臨床メモ

  • 内関(PC6)大陵(PC7)は、長掌筋の緊張を緩めつつ、自律神経バランスを整える代表経穴。
  • 長掌筋は手首・指の屈筋群の「テンションの中心」を担う。
  • 手掌の冷えや手指の震えなど、末梢循環の改善にも関与。
  • 鍼灸治療では、心包経の反応点として「心の緊張」や「胸の圧迫感」にも応用される。

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