腕尺関節

概要

腕尺関節は、上腕骨滑車と尺骨滑車切痕から構成される肘関節の主構成要素で、屈曲・伸展を行う蝶番関節(顆状関節)です。肘の安定性を担う最も重要な関節であり、内・外側側副靭帯の緊張により関節の支持が保たれています。


構成する骨


関節分類

滑膜性関節(単軸性)/蝶番関節(顆状関節)


主な運動

  • 肘の屈曲
  • 肘の伸展

支持組織(靭帯・関節包など)

  • 尺側側副靭帯(UCL):内側安定性を強固に支持
  • 橈側側副靭帯(RCL):外側安定性を支持
  • 関節包(前部は薄く、後部は強い)

付着する筋(起始・停止)


神経支配

  • 正中神経(前腕屈筋群)
  • 橈骨神経(上腕三頭筋)
  • 尺骨神経(尺側手根屈筋)

血液供給

  • 上腕動脈の枝(上・下尺側副動脈など)
  • 尺骨動脈・橈骨動脈の反回枝

触診ポイント

  • 肘を軽く屈曲し、内側に触れると内側上顆から連続して尺骨の滑車切痕のラインが確認できる。
  • 肘頭(上腕三頭筋停止部)から内側へ指をずらすと関節裂隙に触れられる。
  • 疼痛が出やすいポイント:内側側副靭帯(投球障害、肘内側痛)

臨床的重要性

  • 投球動作・重労働で内側側副靭帯のストレスが増大
  • 肘関節拘縮は腕尺関節の包の短縮によるものが多い
  • 子供では肘内障(橈骨頭亜脱臼)と鑑別が必要


東洋医学的関連

関連する経絡
  • 手の太陰肺経(尺沢付近)
  • 手の少陰心経(少海)
  • 手の太陽小腸経(小海)
  • 手の陽明大腸経(曲池)
関連する経穴
鍼灸の効果・施術ポイント
  • 肘内側痛(内側側副靭帯炎)には少海・小海の刺鍼が有効
  • 肘の屈伸制限には曲池+尺沢の組合せが効果的
  • 前腕屈筋群の緊張による痛みには尺沢・列欠ラインが緩解に働く
  • 慢性肘痛には灸施術(知熱灸)も推奨

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