肩甲胸郭関節

概要

肩甲胸郭関節は、肩甲骨と胸郭(肋骨)との間で形成される機能的関節(生理的関節)です。
骨同士の直接的な関節ではなく、前鋸筋と肩甲下筋の間の滑走によって肩甲骨の動きが可能となります。
肩甲上腕関節の可動域の約1/3を担い、適切な肩甲上腕リズムに不可欠です。



分類

  • 分類:機能的関節(滑走構造)
  • 骨の直接接触なし
  • 肩甲骨の安定性・滑走性が大きく影響


構成する組織



運動

  • 上方回旋・下方回旋
  • 挙上・下制
  • 内転(内側移動)・外転(外側移動)
  • 前傾・後傾
  • わずかな回旋運動


主に関わる筋



臨床的意義

  • 肩甲骨の動きの異常(肩甲胸郭リズム障害)は肩関節障害の大きな原因となる
  • インピンジメント症候群において前鋸筋・僧帽筋機能が重要
  • 五十肩や肩甲上腕関節の可動域制限にも密接に関わる
  • 肩甲骨翼状肩甲(翼状肩)を評価する要点
  • スポーツ(投球など)では肩甲胸郭の安定がパフォーマンスに直結


触診ポイント

肩甲骨の内側縁・下角・上角を中心に触診することで、肩甲骨の位置異常や緊張パターンを把握できます。
肩を外転・屈曲・挙上させながら肩甲骨の動きを追うと、上方回旋の可否が確認できます。
前鋸筋の機能低下は内側縁が浮き上がる(翼状肩)ことで判定できます。



東洋医学的関連

  • 肩甲骨周囲には小腸経・三焦経・胆経といった肩背部の主要経絡が流れる。
  • 肩甲骨内側縁は膀胱経の経穴が並ぶ重要ラインで、肩背部痛・運動障害の治療点となる。
  • 肩甲骨の動きは「気の巡り(特に上肢・胸部)」に深く関係すると考えられる。
関連する主な経穴
鍼灸の臨床効果(期待されるもの)
  • 肩甲骨の可動性改善
  • 肩関節可動域(特に外転・屈曲)の改善
  • 五十肩・インピンジメント症状の緩和
  • 肩甲帯の緊張バランス改善(僧帽筋 × 前鋸筋)
  • 上背部のこり・痛みの緩和
  • 呼吸のしやすさ改善(肩甲骨の浮きによる胸郭制限の改善)


まとめ

肩甲胸郭関節は、肩甲骨と胸郭の滑走により多様な肩の動きを可能にする機能的関節です。
肩関節疾患の多くに関与し、肩甲上腕リズムの基盤となります。
東洋医学的にも肩背部の重要経絡が走行し、治療効果の高い領域となっています。

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