肘関節の特徴と関連する経穴・臨床ポイント

概要

肘関節は、上腕骨・橈骨・尺骨の3骨から構成される複合関節で、以下の3つの関節の総称です。

• 腕尺関節（上腕骨滑車 × 尺骨切痕）
• 腕橈関節（上腕骨小頭 × 橈骨頭）
• 近位橈尺関節（橈骨頭 × 尺骨切痕）

これらが共同して、肘の屈伸運動・前腕の回内回外運動を可能にします。

構成する骨

• 上腕骨
• 橈骨
• 尺骨

関節の分類

• 腕尺関節：蝶番関節（滑車関節）
• 腕橈関節：球関節に近い形状だが主に屈伸に関与
• 近位橈尺関節：車軸関節（回内・回外）

主な運動

• 屈曲：約145°
• 伸展：0°（若干の過伸展あり）
• 回内：約70〜80°
• 回外：約80〜90°

関連する靭帯

• 内側側副靭帯（MCL）：前斜束・後斜束・横束からなり、外反安定性を保持
• 外側側副靭帯複合体（LCL）：橈側側副靭帯・外側尺骨側副靭帯が含まれる
• 環状靭帯：橈骨頭を取り囲み、回内回外を安定させる
• 関節包：前方は薄く、後方は比較的緩い

付着・作用する主な筋

肘の屈曲

• 上腕二頭筋
• 上腕筋
• 腕橈骨筋
• 円回内筋（補助）

肘の伸展

• 上腕三頭筋
• 肘筋

前腕の回外

• 回外筋
• 上腕二頭筋

前腕の回内

• 円回内筋
• 方形回内筋

臨床的重要性

• 野球肘（内側上顆炎）：MCLストレス過多
• テニス肘（外側上顆炎）
• 肘内障：環状靭帯から橈骨頭が亜脱臼（小児に多い）
• 肘関節脱臼：フォールオンハンドで多い
• 変形性肘関節症

東洋医学的関連

• 関連する経絡：
  • 手太陰肺経：肘窩外側を通過
  • 手陽明大腸経：肘外側（曲池付近）を通過
  • 手少陰心経：肘内側を通過
  • 手太陽小腸経：肘後内側〜後外側を走行
  • 手厥陰心包経：肘窩中央を通る
  • 手少陽三焦経：肘外側後方を通過
• 関連する重要経穴
  • 曲池（LI11）
  • 少海（HT3）
  • 天井（TE10）
  • 清冷淵（SI11）※肩甲部だが肘疾患で関連することあり
  • 尺沢（LU5）
  • 曲沢（PC3）
• 鍼灸での臨床活用
  • テニス肘：曲池・手三里・郄門などに刺鍼・灸
  • 野球肘：少海・尺沢・曲池の組み合わせがよく使用される
  • 肘内障：局所の刺鍼は少、遠隔の手三里・外関などで調整
  • 肘のこわばり：肺経・心経・大腸経の流れを改善する治療が有効

---