母指IP関節（指節間関節）の特徴と関連する経穴・臨床ポイント

概要

母指IP関節は、母指の中節骨が存在しないため、母指に1つだけ存在する指節間関節です。
母指の屈曲・伸展を担い、つまみ動作・把持動作に不可欠な関節です。
指のDIP相当の機能を持ちます。

構成する骨

• 基節骨（基部）
• 末節骨（基部）

関節の分類

蝶番関節（滑車関節）／単軸性シノビアルジョイント

主な運動

• 屈曲：約80〜90°
• 伸展：軽度（＋5〜10°程度）

関連する靭帯

• 側副靭帯：側方安定性を保持
• 掌側板（掌側靭帯）：過伸展を防ぐ
• 伸筋腱（長母指伸筋 EPL）末端部

作用する筋

• 屈曲：
  • 長母指屈筋（FPL）
• 伸展：
  • 長母指伸筋（EPL）
  • 短母指伸筋（EPB：補助的）
  • 母指内転筋・母指外転筋（長・短）（姿勢保持に補助）

臨床的重要性

• マレットサム（EPL断裂）：母指末節の垂れ下がり
• IP関節拘縮：長母指屈筋の短縮や癒着
• 変形性関節症：母指の酷使で生じやすい
• スワンネック変形（まれ）

東洋医学的関連

• 関連する経絡：
  • 手太陰肺経：母指橈側を走行、IP付近を通過
  • 手陽明大腸経：母指付近の外側から関連
• 関連する重要経穴：
  • 少商（LU11）：母指末節橈側、IP関節に最も近い井穴
  • 魚際（LU10）：母指球にあり、IP機能と連動した痛みで用いる
• 鍼灸の臨床での利用：
  • 母指IP痛・腱鞘炎・把持時痛に対して少商刺鍼が有効
  • 井穴刺絡：急性痛、炎症、熱感を伴う症例に使われることが多い
  • 魚際への灸・鍼：母指屈伸時痛、母指球の緊張緩和に良い
  • 母指は肺経と深く関係し、指端刺激が気の発散を促すとされる

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