椎骨動脈(vertebral artery)まとめ

◆ 基本概要

椎骨動脈(vertebral artery)は、鎖骨下動脈から分岐し、頸椎横突孔を上行して脳底部へ至る重要動脈です。 左右の椎骨動脈は脳幹前方で合流し、脳底動脈を形成します。 後頭部痛・めまい・平衡障害・視覚異常など、後循環症状と密接に関連します。


◆ 起始と走行

椎骨動脈は鎖骨下動脈から起始し、第6頸椎(多くはC6)の横突孔に入り、 C6からC1まで各頸椎の横突孔を上行します。 その後、環椎後弓上を回り込み、大後頭孔から頭蓋内へ進入し、 延髄前面で左右が合流して脳底動脈となります。


◆ 区分(解剖学的セグメント)

  • V1:鎖骨下動脈起始部〜C6横突孔
  • V2:C6〜C2横突孔内走行部
  • V3:環椎周囲の屈曲走行部(最も可動性が高い)
  • V4:頭蓋内走行部(脳底動脈形成まで)

◆ 主な分枝

  • 脊髄枝
  • 筋枝(深層項筋群)
  • 後下小脳動脈(PICA)
  • 延髄枝

◆ 支配領域(灌流領域)

椎骨動脈は、延髄、小脳下部、脊髄上部、後頭葉の一部を灌流します。 特に平衡感覚・呼吸循環中枢・姿勢制御に関与する領域への血流維持に不可欠です。


◆ 触診・体表解剖の要点

椎骨動脈は深部走行のため直接触知はできません。 ただし、後頭下筋群環椎周囲の解剖理解は、 血流障害や機械的圧迫を考察する上で重要です。


◆ 臨床的重要性

  • 椎骨脳底動脈循環不全(VBI)
  • 頸部回旋・伸展による血流低下
  • めまい、ふらつき、複視、後頭部痛
  • 頸椎症、外傷、手技療法時のリスク評価

◆ 東洋医学的観点

椎骨動脈の走行域は、足太陽膀胱経督脈の項部経穴と深く関連します。 風池天柱完骨大椎など、 後頭部・項部症状や自律神経系の調整に用いられる取穴理解に重要です。


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