大腿骨(Femur)の特徴と筋付着部
骨の名称
- 和名:大腿骨
- 英名:Femur
- ラテン名:Os femoris
分類
概要
- 骨盤と下腿を連結し、体重支持と運動を担う中軸骨。
- 上端は寛骨臼と関節して股関節を形成し、下端は脛骨・膝蓋骨と関節して膝関節を形成。
- 長軸は内側へ傾斜し、二足歩行に適応した構造をもつ。
形態・ランドマーク
- 上端(proximal end)
- 骨頭(head of femur):寛骨臼と関節し、靭帯(大腿骨頭靭帯)が中心窩に付着。
- 頸(neck):骨頭と骨幹の間。頸体角は約125°。骨折の好発部位。
- 大転子(greater trochanter):外側に突出。中殿筋・小殿筋・梨状筋などが停止。
- 小転子(lesser trochanter):後内側に突出。腸腰筋が停止。
- 転子間線(intertrochanteric line):前面の大転子と小転子を結ぶ線。関節包が付着。
- 転子間稜(intertrochanteric crest):後面にあり、方形筋が停止。
- 骨幹(shaft / body)
- 粗線(linea aspera):後面中央の隆起線。多くの筋が付着。
- 殿筋粗面(gluteal tuberosity):上方外側部。大殿筋停止。
- 恥骨筋線(pectineal line):上方内側部。恥骨筋停止。
- 内側・外側顆上線(supracondylar lines):遠位に向かって分岐。
- 下端(distal end)
- 内側顆(medial condyle)・外側顆(lateral condyle):脛骨と関節形成。
- 顆間窩(intercondylar fossa):前十字靭帯・後十字靭帯の付着部。
- 膝蓋面(patellar surface):膝蓋骨と関節形成。
- 内側上顆(medial epicondyle):大内転筋停止部。
- 外側上顆(lateral epicondyle):外側側副靭帯付着。
- 内転筋結節(adductor tubercle):内側上顆上部に位置。
構成関節
- 股関節(hip joint):大腿骨頭と寛骨臼による球関節。
- 膝関節(knee joint):大腿骨下端と脛骨・膝蓋骨による蝶番関節。
筋付着
- 起始する筋(大腿骨から始まる)
- 停止する筋(大腿骨に付く)
神経支配(関連する筋を通じて)
- 大腿神経(L2〜L4):大腿四頭筋・恥骨筋など。
- 閉鎖神経(L2〜L4):内転筋群。
- 坐骨神経(L4〜S3):ハムストリングス群。
- 上殿神経(L4〜S1):中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋。
- 下殿神経(L5〜S2):大殿筋。
血管との関係
- 大腿動脈(femoral artery):大腿骨前内側を下行。
- 深大腿動脈(profunda femoris artery):大腿骨後面を走行し、多数の栄養枝を送る。
- 大腿骨頭動脈(artery to head of femur):大腿骨頭靭帯内を走行。
- 内・外側大腿回旋動脈:大転子周囲を走り、骨頭栄養に重要。
臨床的意義
- 大腿骨頸部骨折:高齢者に多く、骨頭壊死の危険あり。
- 転子間骨折:骨粗鬆症に伴い発生しやすい。
- 大腿骨骨幹部骨折:重度外傷による。坐骨神経損傷に注意。
- 膝関節周囲骨折:膝蓋骨・脛骨との関節面変形を伴う。
- 大腿骨頭壊死:血行障害(外傷・ステロイドなど)による壊死性変化。
触診ポイント
- 大転子:股関節外側の突出部として容易に触知可能。
- 内外側顆:膝関節屈曲位で明瞭に触知。
- 大腿前面の筋肉を圧すと、骨幹の硬さを感じる。
東洋医学的関連
- 関連経穴:
居髎(GB29)(大転子上方)、
環跳(GB30)(大転子と仙骨裂孔の中点)、
血海(SP10)(大腿内側)など。
- 胆経・脾経・胃経が大腿を走行し、下肢の気血循環と関係。
- 「環跳」は坐骨神経痛・股関節疾患に有効とされる要穴。
- 東洋医学的には、大腿部は「肝血」が筋を滋養し、虚すると筋のひきつり・歩行障害を生じる。
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