大腿骨(Femur)の特徴と筋付着部

Femur - animation6

骨の名称

  • 和名:大腿骨
  • 英名:Femur
  • ラテン名:Os femoris

分類

  • 長骨(人体で最も長く・強固な骨)

概要

  • 骨盤と下腿を連結し、体重支持と運動を担う中軸骨。
  • 上端は寛骨臼と関節して股関節を形成し、下端は脛骨・膝蓋骨と関節して膝関節を形成。
  • 長軸は内側へ傾斜し、二足歩行に適応した構造をもつ。

形態・ランドマーク

  • 上端(proximal end)
    • 骨頭(head of femur):寛骨臼と関節し、靭帯(大腿骨頭靭帯)が中心窩に付着。
    • 頸(neck):骨頭と骨幹の間。頸体角は約125°。骨折の好発部位。
    • 大転子(greater trochanter):外側に突出。中殿筋・小殿筋・梨状筋などが停止。
    • 小転子(lesser trochanter):後内側に突出。腸腰筋が停止。
    • 転子間線(intertrochanteric line):前面の大転子と小転子を結ぶ線。関節包が付着。
    • 転子間稜(intertrochanteric crest):後面にあり、方形筋が停止。
  • 骨幹(shaft / body)
    • 粗線(linea aspera):後面中央の隆起線。多くの筋が付着。
    • 殿筋粗面(gluteal tuberosity):上方外側部。大殿筋停止。
    • 恥骨筋線(pectineal line):上方内側部。恥骨筋停止。
    • 内側・外側顆上線(supracondylar lines):遠位に向かって分岐。
  • 下端(distal end)
    • 内側顆(medial condyle)外側顆(lateral condyle):脛骨と関節形成。
    • 顆間窩(intercondylar fossa):前十字靭帯・後十字靭帯の付着部。
    • 膝蓋面(patellar surface):膝蓋骨と関節形成。
    • 内側上顆(medial epicondyle):大内転筋停止部。
    • 外側上顆(lateral epicondyle):外側側副靭帯付着。
    • 内転筋結節(adductor tubercle):内側上顆上部に位置。

構成関節

  • 股関節(hip joint):大腿骨頭と寛骨臼による球関節。
  • 膝関節(knee joint):大腿骨下端と脛骨・膝蓋骨による蝶番関節。

筋付着


神経支配(関連する筋を通じて)

  • 大腿神経(L2〜L4):大腿四頭筋・恥骨筋など。
  • 閉鎖神経(L2〜L4):内転筋群。
  • 坐骨神経(L4〜S3):ハムストリングス群。
  • 上殿神経(L4〜S1):中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋。
  • 下殿神経(L5〜S2):大殿筋。

血管との関係

  • 大腿動脈(femoral artery):大腿骨前内側を下行。
  • 深大腿動脈(profunda femoris artery):大腿骨後面を走行し、多数の栄養枝を送る。
  • 大腿骨頭動脈(artery to head of femur):大腿骨頭靭帯内を走行。
  • 内・外側大腿回旋動脈:大転子周囲を走り、骨頭栄養に重要。

臨床的意義

  • 大腿骨頸部骨折:高齢者に多く、骨頭壊死の危険あり。
  • 転子間骨折:骨粗鬆症に伴い発生しやすい。
  • 大腿骨骨幹部骨折:重度外傷による。坐骨神経損傷に注意。
  • 膝関節周囲骨折:膝蓋骨・脛骨との関節面変形を伴う。
  • 大腿骨頭壊死:血行障害(外傷・ステロイドなど)による壊死性変化。

触診ポイント

  • 大転子:股関節外側の突出部として容易に触知可能。
  • 内外側顆:膝関節屈曲位で明瞭に触知。
  • 大腿前面の筋肉を圧すと、骨幹の硬さを感じる。

東洋医学的関連

  • 関連経穴: 居髎(GB29)(大転子上方)、 環跳(GB30)(大転子と仙骨裂孔の中点)、 血海(SP10)(大腿内側)など。
  • 胆経・脾経・胃経が大腿を走行し、下肢の気血循環と関係。
  • 「環跳」は坐骨神経痛・股関節疾患に有効とされる要穴。
  • 東洋医学的には、大腿部は「肝血」が筋を滋養し、虚すると筋のひきつり・歩行障害を生じる。

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