1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:中殿筋(ちゅうでんきん)
- 英名:Gluteus medius muscle
- ラテン語:Musculus gluteus medius
中殿筋は殿部(お尻)の上外側に位置する扇状の大きな筋肉で、
上には大殿筋が重なり、下には小殿筋が存在する。
片脚立位で骨盤が傾かないよう支える重要な筋であり、
歩行・走行・片足立ちの安定に欠かせない。
2.起始・停止
中殿筋は腸骨の外側から扇状に広がり、大腿骨の大転子外側面に付着する。
筋線維の上部・中部・下部で機能が異なり、
特に中部線維が股関節外転の主動作を担う。
3.支配神経
上殿神経は仙骨神経叢から出て、梨状筋の上方を通過し中殿筋・小殿筋を支配する。
この神経の障害や圧迫により、中殿筋麻痺(トレンデレンブルグ徴候)が起こる。
4.作用
- 股関節の外転(主作用)
- 股関節の内旋(前部線維)
- 股関節の外旋(後部線維)
- 片脚立位で骨盤を水平に保つ(骨盤の安定化)
歩行中、片足が床から離れるときに反対側の骨盤が下がらないよう保持する。
この安定作用が失われると、骨盤が傾き、
トレンデレンブルグ歩行と呼ばれる特徴的な歩き方になる。
5.関連する経穴
中殿筋領域は足の少陽胆経および足の太陽膀胱経と関係が深い。
特に「環跳(GB30)」は坐骨神経の走行部に位置し、
坐骨神経痛・股関節痛・下肢のしびれ治療で頻用される。
「居髎(GB29)」は中殿筋前縁部に対応し、股関節前外側の症状に有効。
6.臨床での関連(症状・特徴)
- 股関節外側の痛み・こわばり
- 歩行時の骨盤の左右動揺(トレンデレンブルグ徴候)
- 臀部から大腿外側にかけての放散痛
- 長時間立位・歩行での疲労感
- 坐骨神経痛様症状(中殿筋トリガーポイント)
中殿筋は股関節の安定化筋として重要だが、慢性的に過緊張を起こしやすい。
特に長時間の片脚立ち・体重偏重・側臥位睡眠などで筋疲労が生じる。
トリガーポイントは大腿外側や膝外側へ放散し、
「坐骨神経痛」と誤認されることも多い。
鍼灸では「環跳」「居髎」などを用いて筋緊張を緩和し、
股関節の可動性と骨盤バランスを改善する。
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