1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:大腰筋(だいようきん)
- 英名:Psoas major muscle
- ラテン語:Musculus psoas major
大腰筋は腰椎の前面に位置する深層筋で、腸骨筋と合して腸腰筋(Iliopsoas)を構成する。
体幹と下肢をつなぐ最重要筋のひとつで、姿勢保持・股関節屈曲・歩行などあらゆる動作に関与する。
特に「腰の奥の筋肉」として、慢性腰痛や骨盤の歪みにも深く関係する。
2.起始・停止
- 起始:
- 第12胸椎および第1〜第5腰椎の椎体側面・椎間円板
- 第1〜第5腰椎の肋骨突起
- 停止:
大腰筋は胸腰移行部から腰椎前面を下行し、腸骨筋と合流して腸腰筋腱を形成し、
大腿骨小転子に停止する。
この走行により、腰椎・骨盤・大腿骨を連結する構造的にも非常に重要な筋群である。
3.支配神経
大腰筋は腰神経叢から直接枝を受けて支配される。
これは腸骨筋(大腿神経支配)とは異なる点であり、
両者が異なる神経系を介して協調的に機能する点が特徴的である。
4.作用
- 股関節の屈曲(主動作)
- 股関節外旋(補助)
- 体幹の前傾(骨盤固定時)
- 腰椎の安定化・前弯維持
- 歩行時の脚の振り上げ・姿勢保持
大腰筋は股関節屈曲の最強筋として働く。
特に歩行・階段昇降・座位からの立ち上がり動作などで重要。
また、体幹を前傾させる作用を持ち、
姿勢バランスや腰椎前弯の維持に大きく寄与する。
5.関連する経穴
大腰筋は足の陽明胃経や足の太陰脾経と関係が深い。
特に「天枢」「大巨」「府舎」などは大腰筋の走行上に位置し、
腰痛・下腹部痛・月経痛・下肢の冷えなどの治療点として重要視される。
鍼灸では腹部から深刺することで腸腰筋に直接アプローチする手技も行われる。
6.臨床での関連(症状・特徴)
- 慢性腰痛(特に起き上がり・前屈時の痛み)
- 反り腰・骨盤前傾姿勢
- 股関節屈曲制限・鼠径部痛
- 腰椎の不安定感・腰椎前弯過多
- 腹部の奥の違和感・圧痛
大腰筋の過緊張は腰痛の隠れた原因として非常に多い。
長時間座位やストレス、冷えなどにより硬化し、腰椎を前方へ牽引する。
結果として骨盤前傾・腰椎過前弯を引き起こし、慢性的な腰痛を助長する。
鍼灸やストレッチでは、腹部または腰背部から大腰筋にアプローチし、
筋緊張を緩和させることで症状改善を図る。
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