腸骨筋の起始・停止・作用まとめ

Iliacus muscle - animation05

1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:腸骨筋(ちょうこつきん)
  • 英名:Iliacus muscle
  • ラテン語:Musculus iliacus
腸骨筋は腸骨窩を覆うように存在し、大腰筋と合して腸腰筋(Iliopsoas)を形成する。 体幹と下肢をつなぐ重要な筋群であり、特に股関節の屈曲を主動作とする。 歩行・立ち上がり・姿勢保持など、日常生活動作の基盤を支える筋肉である。

2.起始・停止

  • 起始:
    • 腸骨窩(内面)
    • 仙骨翼(前面の一部)
  • 停止:
    • 大腿骨小転子(腱は大腰筋と合流して停止)
腸骨筋は腸骨の内側面から起こり、大腰筋とともに腱を形成して大腿骨小転子に停止する。 そのため、大腰筋と腸骨筋は一体として働き、股関節屈曲の強力な筋力を発揮する。

3.支配神経

  • 大腿神経(L2〜L4)
腸骨筋は腰神経叢から分岐する大腿神経により支配される。 大腰筋(腰神経叢の直接枝)と異なり、腸骨筋は主に大腿神経からの支配を受ける。 これにより腸腰筋全体が協調して股関節屈曲を行う。

4.作用

  • 股関節の屈曲
  • 体幹の前傾(骨盤固定時)
  • 骨盤の前傾補助(両側収縮時)
  • 立位・歩行時の下肢前方推進
腸骨筋は大腰筋と協働して股関節を屈曲させる。 座位から立ち上がる、階段を上る、脚を上げる動作などで強く働く。 また、骨盤を前傾させることで腰椎前弯を維持するため、 姿勢バランスにも深く関与している。

5.関連する経穴

腸骨筋は足の太陰脾経足の陽明胃経と関係が深い。 特に「衝門」「府舎」「気衝」は腸腰筋領域に位置し、 股関節の屈曲障害・鼠径部痛・下肢の冷感などに対して鍼灸でよく用いられる。

6.臨床での関連(症状・特徴)

  • 股関節前面のこわばり・痛み
  • 腰痛(特に前傾姿勢時)
  • 骨盤前傾・反り腰
  • 歩行時に脚が上がりにくい
  • 鼠径部圧迫感・血行不良による冷え
腸骨筋の過緊張は、骨盤前傾を引き起こして腰痛や反り腰姿勢の原因となる。 また、腸腰筋群のアンバランスは歩行や階段動作時の股関節痛にもつながる。 鍼灸では鼠径部や下腹部の経穴(衝門・府舎など)を用いて、 筋緊張の緩和と骨盤のアライメント改善を図る。

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