膝蓋骨(Patella)の特徴と筋付着部

Femur - animation8
※注:赤色は大腿骨

骨の名称

  • 和名:膝蓋骨(しつがいこつ)
  • 英名:Patella
  • ラテン名:Os patellae

分類

  • 種子骨(sesamoid bone):筋腱内に包まれて形成される骨。

概要

  • 大腿四頭筋腱内に埋め込まれる人体最大の種子骨。
  • 膝関節の前面に位置し、膝蓋腱を介して脛骨粗面に連結。
  • 大腿四頭筋の牽引力を効率化し、膝関節の運動を滑らかにする役割を持つ。

形態・ランドマーク

  • 三角形に近い形状で、底(基部)が上方、尖(膝蓋尖)が下方を向く。
  • 前面は皮下にあり、触知容易。滑らかな表面で、靱帯や筋腱に覆われる。
  • 後面(関節面)は滑らかで、外側関節面内側関節面に分かれ、大腿骨膝蓋面と関節。
  • 下端には膝蓋靭帯(=膝蓋腱)が付着し、脛骨粗面へ連結。

構成関節

  • 大腿膝蓋関節(femoropatellar joint):大腿骨の膝蓋面と膝蓋骨後面の関節面による。
  • 滑車関節(滑動関節)の一種で、屈伸に伴い膝蓋骨が上下に移動。

筋付着

  • 起始する筋:なし(種子骨のため)
  • 停止する筋:
    • 大腿直筋(Rectus femoris)
    • 外側広筋(Vastus lateralis)
    • 内側広筋(Vastus medialis)
    • 中間広筋(Vastus intermedius)
    • これら4筋の腱が膝蓋骨を包み込むように合流して大腿四頭筋腱を形成。
    • 膝蓋骨下端から膝蓋靭帯(patellar ligament)が伸び、脛骨粗面に停止。

神経支配(関連筋を通して)

  • 大腿神経(L2〜L4) → 大腿四頭筋を支配。
  • よって膝蓋骨を介する膝伸展運動は大腿神経の支配下にある。

血管との関係

  • 膝蓋動脈網(patellar anastomosis):大腿動脈・膝窩動脈・下行膝動脈などの枝が膝前面で吻合。
  • 膝蓋骨はこの血流網から栄養を受ける。

臨床的意義

  • 膝蓋骨骨折:直達外力または大腿四頭筋の急収縮により発生。
  • 膝蓋腱断裂:膝伸展不能となり、整形外科的緊急疾患。
  • 膝蓋軟骨軟化症:若年女性に多く、膝前部痛を訴える。
  • 膝蓋骨脱臼:外側へ偏位しやすく、再発性の例もある。
  • 膝蓋腱反射(膝蓋反射):L4レベルの神経機能を反映する臨床テスト。

触診ポイント

  • 膝関節を伸展した状態で前面中央に明瞭に触れる。
  • 膝屈曲時には上方に移動し、内外側への動きもわかる。
  • 膝蓋尖(下端)から膝蓋腱をたどると脛骨粗面に達する。

東洋医学的関連

  • 関連経穴: 梁丘(ST34)(膝蓋骨上縁外側)、 犢鼻(ST35)(膝蓋骨下外側)、 陰陵泉(SP9)足三里(ST36)など。
  • 胃経・脾経・胆経が膝前後を通過し、気血の流通を支える。
  • 膝蓋部の痛みは「風湿」や「経絡閉塞」として扱われる。
  • 膝蓋骨の動きが悪いと、経脈の通りも滞ると考えられる。

補足・豆知識

  • 膝蓋骨は新生児では軟骨性で、成長とともに骨化核が出現。
  • 膝蓋骨の形や位置の異常は「高位膝蓋」「低位膝蓋」と呼ばれる。
  • 膝蓋骨の運動は大腿四頭筋のバランスに大きく依存する。

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