胸椎(Thoracic vertebrae)の特徴と筋付着部

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骨の名称

  • 和名:胸椎
  • 英名:Thoracic vertebrae
  • ラテン名:Vertebrae thoracicae

分類

  • 不規則骨(椎骨群の一部。胸郭の背面を構成)

概要

  • 胸椎は12個の椎骨(T1〜T12)からなり、肋骨と関節して胸郭の後壁を形成する。
  • 頚椎(C7)と腰椎(L1)の間に位置し、上から下へ行くほど大きくなる。
  • 椎体には肋骨頭と関節する関節窩(肋骨窩)があり、横突起にも肋骨結節と関節する面が存在する。
  • 生理的に後弯(後方凸)を示す。

形態・ランドマーク

  • 椎体(corpus vertebrae):円形で、肋骨頭関節面(上・下肋骨窩)をもつ。
  • 椎孔(foramen vertebrale):円形で比較的狭い。脊髄が通る。
  • 横突起(processus transversus):長く、先端に肋骨結節と関節する肋骨突起窩(fovea costalis processus transversi)をもつ。
  • 棘突起(processus spinosus):長く下方へ傾斜し、重なり合うように配置。
  • 関節突起(上・下):矢状面に近い方向を向き、前後の運動を制限し、回旋運動を許す。
  • 椎弓根・椎弓板:椎孔を囲む部分で、脊柱管を形成。

特徴的構造(上位・中位・下位胸椎の差異)

  • T1:頚椎に似る。上肋骨窩が全体として第1肋骨頭と関節。
  • T2〜T8:典型的な胸椎構造。各肋骨が上下の肋骨窩にまたがって関節。
  • T9〜T12:下位ほど腰椎の形態に近づく。T11・T12は単独肋骨と関節。
  • T12:上関節突起は胸椎型、下関節突起は腰椎型の特徴をもつ移行椎。

関節

  • 椎間関節(zygapophyseal joint):隣接する椎骨の関節突起間で形成。
  • 椎間板(intervertebral disc):椎体間に介在し、衝撃を吸収。
  • 肋骨頭関節:肋骨頭と椎体の肋骨窩で形成。
  • 肋横突関節:肋骨結節と横突起の肋骨突起窩で形成。

靱帯

  • 前縦靱帯(anterior longitudinal ligament)
  • 後縦靱帯(posterior longitudinal ligament)
  • 黄色靱帯(ligamenta flava)
  • 棘間靱帯(interspinal ligament)
  • 棘上靱帯(supraspinous ligament)
  • 肋横突靱帯群(costotransverse ligaments)

筋付着


神経支配(関連筋を通じて)

  • 脊髄神経後枝(posterior rami):背筋群を支配。
  • 肋間神経(anterior rami of T1–T11):胸壁筋と皮膚を支配。
  • 脊髄は胸椎椎孔内を通り、肋間神経として分枝。

血管との関係

  • 椎骨動脈(上位胸椎レベルまで)
  • 肋間動脈(posterior intercostal arteries):胸椎横突起・肋骨間を走行。
  • 椎骨静脈叢(vertebral venous plexus):椎孔内で血液還流に関与。

臨床的意義

  • 胸椎圧迫骨折:骨粗鬆症や外傷で多発。胸腰移行部(T11–L1)が好発部位。
  • 胸椎椎間板ヘルニア:稀だが、肋間神経痛様症状を呈する。
  • 脊柱側弯症:胸椎部に生じやすく、胸郭変形・呼吸機能低下を伴うことがある。
  • 円背:胸椎後弯が過剰になる状態。加齢や筋力低下により生じる。

触診ポイント

  • 第7頚椎棘突起(C7)とT1棘突起の識別が重要(C7は最も突出)。
  • 肩甲骨下角はおおよそT7棘突起の高さ。
  • 肋骨との位置関係から、各胸椎の高さを臨床的に推定可能。
  • T12は第12肋骨と一致し、腰椎への移行部の目安。

東洋医学的関連


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