上後鋸筋の起始・停止・作用まとめ

Serratus posterior superior muscle animation small

1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:上後鋸筋(じょうこうきょきん)
  • 英名:Serratus posterior superior muscle
  • ラテン語:Musculus serratus posterior superior

2.起始・停止

  • 起始:
    • 第6頸椎〜第2胸椎の棘突起
    • 項靭帯(下部)
  • 停止:
    • 第2〜第5肋骨の上縁(肋骨角の外側部)
筋束は斜め下外方に走行し、肋骨の外側後面に付着する。 背部の表層筋(僧帽筋・菱形筋)を剥がすと現れる薄い筋である。

3.支配神経

  • 肋間神経(第2〜第5肋間神経の前枝)
深背筋ではあるが、神経支配は脊髄神経の前枝(肋間神経)であり、 これは呼吸補助筋としての機能的特徴を示す。

4.作用

  • 第2〜第5肋骨を上方に引き上げ、吸気を補助する。
上後鋸筋は胸郭上部を広げることで吸気を助ける。 とくに深呼吸・咳・くしゃみなどで強く働く。

5.関連する経穴

上後鋸筋は足の太陽膀胱経の上背部走行と重なり、 「風門」「肺兪」「厥陰兪」などの経穴がちょうど筋腹の表層に位置する。 呼吸器症状(咳嗽、喘息、肩背部の冷え)などに対して鍼灸臨床で重要。

6.臨床での関連

  • 上背部のこわばり、呼吸時の痛み
  • 咳・くしゃみ・深呼吸で悪化する肩甲間部痛
  • 慢性咳嗽・風邪の後の背部筋緊張
  • 猫背姿勢での過緊張
上後鋸筋の過緊張は肩甲骨内側上部の違和感や痛みを起こし、 「風門」や「肺兪」への施術で改善がみられることが多い。 呼吸性の背部痛や咳による筋疲労の原因筋として重要。

7.臨床メモ

  • 僧帽筋・菱形筋を除去すると見える薄い筋膜状の筋。
  • 吸気時に胸郭上部を持ち上げるため、胸郭の動きが浅い患者では代償的に働きやすい。
  • 触診では第2〜第5肋骨角付近に沿って、吸気時にわずかな収縮を感じる。
  • 下位の同名筋である「下後鋸筋」は呼気補助筋として対をなす。

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