1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:横突棘筋(おうとつきょくきん)
- 英名:Transversospinales muscles
- ラテン語:Musculi transversospinales
深背筋群の最深層に属する筋群で、脊柱の横突起から棘突起に向かって走行する。
半棘筋・多裂筋・回旋筋の3つで構成される。
2.構成筋と起始・停止
- ① 半棘筋(Semispinalis)
- 起始:下位胸椎・上位腰椎の横突起
- 停止:4〜6椎上方の棘突起(おもに頸・胸部)、頭部では後頭骨(半棘頭筋)
- ② 多裂筋(Multifidus)
- 起始:仙骨後面、上後腸骨棘、腰椎乳頭突起、胸椎横突起、頸椎関節突起
- 停止:2〜4椎上方の棘突起
- ③ 回旋筋(Rotatores)
- 起始:各椎の横突起
- 停止:1〜2椎上方の棘突起または椎弓根
これら3筋はすべて「横突起 → 棘突起」方向に斜走し、
微細な回旋運動と脊柱の安定化に寄与する。
3.支配神経
すべての横突棘筋群は、各脊椎レベルの脊髄神経後枝により支配される。
局所的な姿勢制御と固有受容感覚に関与する。
4.作用
- 両側収縮:脊柱の伸展(背筋として作用)
- 片側収縮:脊柱の同側側屈・反対側回旋
- 脊柱の安定化・姿勢保持
多裂筋や回旋筋は特に脊椎の微細な動きを制御し、
体幹の安定やバランス維持に欠かせない筋群である。
5.関連する経穴
横突棘筋群は、脊柱両側を走行する足の太陽膀胱経の深層に位置する。
背部兪穴(肺兪〜膀胱兪)はこれらの筋群上にあり、
体幹安定や内臓機能調整の経絡的関連をもつ。
6.臨床での関連
- 慢性腰痛・背部痛(特に姿勢保持による疲労性疼痛)
- 脊柱起立筋群の深層硬結・トリガーポイント
- 仙腰部不安定症・脊椎分離症の補助的安定筋
- 長時間座位・猫背姿勢での慢性的な筋緊張
特に多裂筋の筋力低下は腰部不安定性の主要因とされ、
慢性腰痛患者ではこの筋群のリハビリが極めて重要。
鍼灸では「腎兪」「大腸兪」などを介して深層筋に刺激を届けることができる。
7.臨床メモ
- 脊柱起立筋群(腸肋筋・最長筋・棘筋)のさらに深層にある。
- 多裂筋は仙骨から頸椎まで連続して存在し、体幹安定の主役。
- 半棘筋は上背部・後頭部まで達し、頭部伸展にも関与。
- 回旋筋は小さく短いが、椎間の細かな調整を担う。
- 深部鍼や運動療法では、横突棘筋群の働きを高めることが姿勢改善の鍵となる。
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