棘筋の起始・停止・作用まとめ

1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:棘筋(きょくきん)(胸棘筋・頸棘筋・頭棘筋)
  • 英名:Spinalis muscle(thoracis, cervicis, capitis)
  • ラテン語:Musculus spinalis(thoracis, cervicis, capitis)

2.起始・停止

  • ① 胸棘筋(Spinalis thoracis)
    • 起始:第11胸椎〜第2腰椎の棘突起
    • 停止:第1〜第8胸椎の棘突起
  • ② 頸棘筋(Spinalis cervicis)
    • 起始:第7頸椎〜第2胸椎の棘突起
    • 停止:第2〜第4頸椎の棘突起
  • ③ 頭棘筋(Spinalis capitis)
    • 起始:頸椎下部および胸椎上部の棘突起
    • 停止:後頭骨の上項線付近
棘筋は最長筋の内側に位置し、背骨の棘突起から棘突起へと短い筋束が連続する。 個々の筋束は細く、特に頭棘筋はしばしば半棘筋と融合して区別しにくい。

3.支配神経

  • 脊髄神経後枝(posterior rami of spinal nerves)

4.作用

  • 両側収縮:脊柱(体幹・頸部・頭部)の伸展
  • 片側収縮:脊柱の同側への軽度側屈
  • 体幹・頸部の姿勢保持
棘筋は脊柱起立筋群のうち最も内側に位置し、脊柱の安定化と直立姿勢の維持に寄与する。 最長筋・腸肋筋と協働して背部伸展運動を行う。

5.関連する経穴

棘筋の走行上には膀胱経第一行線が位置し、 鍼灸では背部兪穴群を用いて筋緊張・自律神経の調整を行う。

6.臨床での関連

  • 慢性腰痛・背部痛・肩こり
  • 長時間の座位・猫背姿勢による背部伸展筋の弱化
  • 脊柱の過伸展・反り腰の補正筋としての過緊張
  • 脊椎のアライメント異常(軽度側弯など)に関与

7.臨床メモ

  • 棘筋は背骨の中心軸を支える安定筋であり、深層で持続的に活動する。
  • 過緊張すると脊柱起立筋群の緊張連鎖が起こり、慢性の背部こりを生じやすい。
  • 鍼灸では「膈兪」「肝兪」「腎兪」などの兪穴で緊張を緩める。
  • 最長筋・腸肋筋との協調を意識した治療・運動が重要。

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