指骨(Phalanges)の特徴と筋付着部

Phalanges of the hand (left hand) - animation01

骨の名称

  • 和名:指骨(しこつ)
  • 英名:Phalanges(単数:Phalanx)
  • ラテン名:Ossa digitorum manus

分類

  • 長骨に分類される(小型の長骨)。
  • 手指の骨格を構成し、巧緻な運動を可能にする。

構成

  • 各指(第2〜第5指)は3個の骨(近位・中節・末節指骨)からなる。
  • 親指(第1指)は2個(近位指骨・末節指骨)からなる。
  • 全体で14個の指骨が存在する。
  • 各指骨は基部(底, base)体(shaft)頭(head)に区分される。


各部の特徴

  • 近位指骨(proximal phalanx):中手骨と関節を形成。骨体は円柱状で中央がやや細い。
  • 中節指骨(middle phalanx):第2〜第5指にのみ存在。小型で扁平。
  • 末節指骨(distal phalanx):指尖部を形成。末端に爪床粗面(tuberositas phalangis distalis)を持つ。


関節

  • 中手指節関節(MCP関節):中手骨頭と近位指骨基部の間。屈伸・外転・内転可能。
  • 近位指節間関節(PIP関節):近位指骨頭と中節指骨基部の間。主に屈伸運動。
  • 遠位指節間関節(DIP関節):中節指骨頭と末節指骨基部の間。屈伸運動を行う。
  • 親指ではIP関節(指節間関節)のみを有する。


筋付着

  • 起始する筋(指骨から始まる)
    • なし(指骨自体から始まる筋は存在しない)
  • 停止する筋(指骨に終わる)


神経支配(関連筋より)

  • 正中神経(C7–T1):浅指屈筋・深指屈筋外側部・母指球筋群・外側虫様筋
  • 尺骨神経(C8–T1):深指屈筋内側部・骨間筋・内側虫様筋・小指球筋
  • 橈骨神経(C6–C8):伸筋群(長母指伸筋・短母指伸筋・浅指伸筋など)


血管との関係

  • 掌側では、総掌側指動脈が各指に分岐し、固有掌側指動脈として指腹部を灌流。
  • 背側では背側指動脈が爪床や背面を栄養。
  • 末節骨先端は爪床動脈の枝で豊富な血流を受ける。


臨床的意義

  • 指骨骨折:直接外力や挟み込みによる。特に末節骨折は日常的に多い。
  • 槌指(mallet finger):末節骨背側で伸筋腱断裂または骨片剥離による伸展不能。
  • 白蝋病(レイノー症候群):末節部の血流障害により蒼白化・疼痛。
  • DIP・PIP関節拘縮:腱鞘炎・関節リウマチなどにより可動制限。


触診ポイント

  • 各指の骨軸に沿って触診。中節・末節は皮下に明瞭に触れる。
  • DIP関節下で末節骨の膨らみ(爪床下)を確認できる。
  • PIP関節両側に側副靱帯を伴い、屈伸時の安定を触知できる。


東洋医学的関連

  • 経穴少商(LU11)(母指末節橈側)、 商陽(LI1)(示指末節橈側)、 関衝(TE1)(薬指末節尺側)、 少沢(SI1)(小指末節尺側)など。
  • 古典的考え方:指尖部は「経気の出入口(井穴)」にあたり、全身の気血調整・急症対応に用いられる部位。


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