胸骨(sternum)の特徴と筋付着部

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骨の名称

  • 和名:胸骨
  • 英名:Sternum
  • ラテン名:Sternum

分類

  • 扁平骨(胸郭前面中央に位置し、心臓・大血管を保護する)

部位構成

  • 胸骨柄(manubrium sterni)
    • 上部が広く、鎖骨と第1肋骨と関節する。
    • 頸切痕(jugular notch):上縁中央のくぼみ。
    • 鎖骨切痕(clavicular notch):両側上外方にあり、鎖骨と関節。
    • 第1肋切痕:第1肋軟骨と連結。
    • 第2肋切痕(胸骨角の部位):胸骨体との境界に存在。
  • 胸骨体(corpus sterni)
    • 胸骨の主要部分。第2~第7肋軟骨と関節。
    • 縦に平らで長い形状をなし、前胸壁の中心を形成。
  • 剣状突起(processus xiphoideus)
    • 胸骨の最下部。年齢とともに骨化する。
    • 腹直筋・横隔膜・腹横筋などが付着。
    • 剣状突起下部は剣状軟骨(cartilago xiphoidea)として軟骨性のことも多い。

ランドマーク

  • 胸骨角(sternal angle, Louis角):胸骨柄と体の結合部。第2肋軟骨の高さ(第4胸椎レベル)。臨床的に肋骨数えの基準。
  • 剣状突起下角:第10肋軟骨接合部とともに肋弓を形成。
  • 頸切痕:鎖骨上窩の下に位置し、静脈穿刺などの指標。

関節

  • 胸鎖関節(sternoclavicular joint):胸骨柄と鎖骨内端の間の鞍関節。
  • 胸肋関節(sternocostal joints):胸骨体および柄と肋軟骨との間の関節。
  • 胸骨柄結合(manubriosternal joint):胸骨柄と胸骨体の間。半関節で、わずかに動く。
  • 胸骨体剣状結合(xiphisternal joint):胸骨体と剣状突起の間。加齢で骨性癒合することが多い。

筋付着


神経支配(関連する筋を通じて)

  • 頸神経ワナ(C1–C3):胸骨舌骨筋・胸骨甲状筋
  • 肋間神経(T7–T12):腹直筋
  • 横隔神経(C3–C5):横隔膜

血管との関係

  • 内胸動脈(internal thoracic artery):胸骨の両側を縦走し、第1〜6肋間動脈を分枝。
  • 胸骨穿通枝:胸骨体前面へ分布し、皮膚および前胸壁に栄養を供給。
  • 縦隔内では胸骨の裏面に胸腺・心膜・大血管が接する。

臨床的意義

  • 胸骨骨髄穿刺:胸骨体上部で骨髄検査に利用(成人)。
  • 胸骨骨折:交通外傷などで多く、心膜損傷・心挫傷を伴うことがある。
  • 胸骨角:臨床で肋骨カウントや縦隔位置確認の重要な基準点。
  • 剣状突起損傷:胸骨圧迫蘇生(CPR)時に折損する可能性あり。

触診ポイント

  • 胸骨柄:鎖骨内側端の下方で明瞭に触れる。
  • 胸骨角:第2肋骨が付く位置。肋骨数えの基準点。
  • 胸骨体:胸の中央を縦走する硬い部分。
  • 剣状突起:剣状突起下角(みぞおち部)で軽く押すと感じられる。

東洋医学的関連

  • 関連経穴: 膻中(CV17)玉堂(CV18)紫宮(CV19)華蓋(CV20)など、胸骨上の正中線・両側に多くの経穴が存在。
  • 古典的考え方: 胸骨部は「気海」・「宗気」の集まる場とされ、呼吸・心拍・精神安定に深く関係する領域。
  • 膻中は「気会の原」と呼ばれ、心肺機能の調整・情緒安定に用いられる重要穴。

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