1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:腹横筋(ふくおうきん)
- 英名:Transversus abdominis muscle
- ラテン語:Musculus transversus abdominis
腹壁筋群の中で最も深層に位置する筋。
筋線維は腹部を左右方向(水平)に走行し、
体幹を締め付けるように包み込む構造をもつ。
内腹斜筋の深層にあり、腹圧の上昇・内臓の支持・姿勢安定に大きく関与する。
2.起始・停止
- 起始:第7〜第12肋軟骨の内面、胸腰筋膜、腸骨稜、鼠径靭帯外側部
- 停止:白線、恥骨、腹直筋鞘
筋線維は水平(横走)し、腹直筋鞘の後葉を形成する。
下方では腱膜が連続して鼠径管の後壁を構成し、
一部が内腹斜筋と共に提睾筋を形成する。
3.支配神経
- 肋間神経(T7〜T11)
- 肋下神経(T12)
- 腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経(L1)
内腹斜筋とほぼ同一の神経支配を受け、
胸腰神経叢を介して体幹の安定と腹圧の調整を行う。
4.作用
- 腹圧を高める(排便・排尿・咳・出産の補助)
- 内臓を圧迫・支持し、体幹を安定化
- 強制呼気時に肋骨を引き下げる(呼気補助筋)
- 姿勢保持(脊柱安定・骨盤安定)
腹横筋は回旋や屈曲には関与せず、
主に「締める・支える」動きで体幹を安定させる。
体幹トレーニング(ドローイン)で特に重視される筋である。
5.関連する経穴
腹横筋は足の陽明胃経・足の太陰脾経・足の厥陰肝経の経路に関与し、
消化器・泌尿生殖器系の調整、腹部気滞、下腹部冷えなどに関連。
経穴治療では「天枢」「大巨」「気海」などがよく用いられる。
6.臨床での関連
- 腰痛(特に姿勢保持筋の機能低下型)
- 体幹の不安定性・骨盤の前傾
- 腹圧低下による内臓下垂・便秘・尿漏れ
- 慢性的な浅い呼吸・ストレス性呼吸制限
腹横筋の機能低下は「腰痛の隠れ原因」とも言われる。
鍼灸では腹部経穴の活用により、腹圧・呼吸・自律神経を整える。
トレーニングではドローイン(腹式呼吸)が有効。
7.臨床メモ
- 腹横筋は「体幹の天然コルセット」。内腹斜筋・多裂筋・骨盤底筋群と連動。
- 筋線維は水平に走り、腹部を締め付ける方向に作用。
- 安静時呼吸や姿勢維持に常に軽く働いているトニック筋。
- 腹直筋とのアンバランスは「腹部ぽっこり」や「腰部不安定」を生む。
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