概要
胸鎖関節(SC関節)は、胸骨柄と鎖骨内側端によって構成される上肢帯の唯一の体幹との連結部です。
可動性と安定性のバランスが重要な関節で、肩甲帯・上肢の動きに大きく寄与します。
分類
- 種類:滑膜性関節(鞍関節)
- 種類上の特徴:可動方向が多いが安定性も高い
- 主な構造:関節円板(関節内に存在)、前後胸鎖靱帯、肋鎖靱帯、関節包
構成する骨
運動
- 挙上・下制
- 前方・後方運動(前突・後退)
- わずかな回旋運動(鎖骨の回旋)
付着する筋・靱帯
安定化に関与する靱帯
- 前胸鎖靱帯
- 後胸鎖靱帯
- 肋鎖靱帯(最強の安定化因子)
- 関節円板
臨床的意義
- 肩甲帯の動きに制限がある場合、SC関節が原因となることがある
- 鎖骨骨折後の機能低下にも深く関わる
- 胸郭出口症候群の評価において重要
- 変形性変化は高齢者で比較的多い
触診ポイント
胸骨柄の上縁(胸骨切痕)から外側へ触れていくと、鎖骨内側端のやや膨隆した部分に触れます。
左右で高さの違いが起きやすく、肩の不均衡の評価ポイントとしても有用です。
肩の挙上・前方挙上・後方運動を行ってもらいながら触診すると、関節運動を確認しやすくなります。
東洋医学的関連
- 胸鎖関節周囲は「気の出入り口」とされ、胸郭の気の流れと深い関係をもつ。
- 肺経・胃経・大腸経の経絡流注が近接し、肩・胸・上肢症状に関連。
関連する主な経穴
- 缺盆(けつぼん|ST12):鎖骨上窩の要穴。肩上部痛・呼吸器症状に。
→ 肺気の疎通、肩こり・胸部のつかえの改善に使用。 - 気戸(きこ|ST13):胸骨柄外側下方。
→ 胸苦しさ、咳、肩前面の痛みに。 - 雲門(うんもん|LU2):烏口突起上方・鎖骨外側端内側。
→ 肩前面痛、呼吸器症状に使用。 - 天鼎(てんてい|LI17):胸鎖乳突筋の外縁。
→ 咳、咽頭のつまり、頸肩部の緊張に。 - 扶突(ふとつ|LI18):胸鎖乳突筋の前後縁中央。
→ 咳・咽喉症状・胸郭上部の気滞に。
鍼灸の臨床効果(期待されるもの)
- 肩前面の痛み・挙上制限の改善(特に缺盆・雲門)
- 胸郭上部の気滞を改善し、呼吸のしやすさが向上
- 胸鎖乳突筋の緊張緩和 → 頭痛・頸性めまいの軽減
- 胸郭出口症候群の補助治療として
まとめ
胸鎖関節は上肢帯と体幹をつなぐ唯一の関節であり、肩関節機能に大きく影響します。
東洋医学的にも胸鎖関節周囲は重要な経絡が交差する部位で、鍼灸臨床において治療効果が高いポイントが多く存在します。

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