概要
MCP関節は、中手骨の骨頭と基節骨の間に形成される関節で、手指の屈伸・外転・内転に関与する。球関節に近い構造を持ち、手指の精巧な運動を可能にする上肢の重要関節である。
関節分類
球関節に近い形態を持つが、機能的には顆状関節(楕円関節)として分類される。
構成骨
- 中手骨骨頭
- 基節骨(第1〜5)
靭帯
- 掌側板(掌側靭帯):指を伸展しすぎないよう制御
- 側副靭帯:屈曲時に強く緊張し、側方動揺を抑制
- 深横中手靭帯(第2〜5指):MCP関節の横方向安定に寄与する
運動(機能)
- 屈曲:90°前後(第5指が最も大きい)
- 伸展:30〜45°
- 外転:指を広げる動き(第3指を中心)
- 内転:指を閉じる動き
関連する筋
屈曲 伸展 外転 内転神経支配
- 正中神経:母指・示指・中指の筋群を中心
- 尺骨神経:骨間筋・虫様筋(内側半分)を支配し、外転・内転に重要
- 橈骨神経:主に伸筋群
血管
- 掌側中手動脈
- 背側中手動脈
- 固有指動脈
触診ポイント
- MCP関節の拳上の骨頭の丸みが触れられる
- やや屈曲位で関節裂隙を触診しやすい
- 背側の伸筋腱の走行確認
- 掌側板の圧痛は過伸展ストレスの評価に有用
臨床・病態
- MCP関節脱臼(特に第1指が多い)
- 掌側板損傷(過伸展外傷)
- 関節リウマチにおける尺側偏位(偏位の起点になりやすい)
- 腱断裂(伸筋腱・屈筋腱)
- トリガーフィンガー(弾発指)に関連する運動制限
東洋医学的関連
MCP関節部は多くの経絡が通過・連絡する部位で、手の痛み・こわばりの際に臨床で用いられる。
関連する経穴- 合谷(大腸経):第1・2中手骨間、手指全体の痛みに汎用
- 液門(少陽三焦経):第4・5 MCP間近く
- 中衝(心包経):第3指末端、MCP周辺の気血調整に用いる
- 後谿(小腸経):第5中手骨の基部、手のこわばり改善
- 手指の屈伸痛・こわばり改善
- MCP周囲の腱鞘炎や腱の緊張緩和
- 関節リウマチの疼痛管理
- 巧緻動作改善(虫様筋・骨間筋の調整)

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