中手骨(Metacarpal bones)の特徴と筋付着部
骨の名称
- 和名:中手骨
- 英名:Metacarpal bones
- ラテン名:Ossa metacarpi
分類
- 短長骨(中間型の長骨)に分類される。
- 手根骨と指骨の間に位置し、手の骨格の基本的な「骨軸」を構成する。
構成
- 5本の骨から成り、橈側(親指側)から尺側(小指側)へ向かって第1〜第5中手骨と呼ばれる。
- 各中手骨は底(基部)・体(骨幹)・頭(骨端)に分けられる。
各骨の特徴
- 第1中手骨(親指):短く太い。大菱形骨と鞍関節を形成し、対立運動に関与。
- 第2中手骨:最長で安定性が高く、小菱形骨・有頭骨・大菱形骨と関節。
- 第3中手骨:背側に茎状突起を持つ。手の中心軸をなす。
- 第4中手骨:やや短く、有頭骨と有鈎骨の両方と関節。
- 第5中手骨:最も可動性が高い。小指の屈曲・対立運動に関与。有鈎骨と関節。
関節
- 手根中手関節(carpometacarpal joints):手根骨の遠位列と中手骨基部の関節。
- 中手間関節(intermetacarpal joints):中手骨同士を結ぶ小関節(第2〜第5間)。
- 中手指節関節(metacarpophalangeal joints, MCP):中手骨頭と指骨基部が構成する関節。屈伸・外転・内転運動を行う。
筋付着
- 起始する筋(中手骨から始まる)
- 停止する筋(中手骨に終わる)
神経支配(関連筋より)
- 正中神経(C8–T1):母指球筋群の多く、外側2虫様筋
- 尺骨神経(C8–T1):骨間筋群・内側2虫様筋・小指球筋
- 橈骨神経(C6–C8):長短橈側手根伸筋・長母指外転筋
血管との関係
- 掌側:浅掌動脈弓(尺骨動脈の主枝)と深掌動脈弓(橈骨動脈の主枝)が中手動脈を形成し、各指へ分岐。
- 背側:背側中手動脈が走行し、手背の血流を支える。
臨床的意義
- 中手骨骨折:打撃・転倒などで発生。特に第5中手骨頚部骨折(ボクサー骨折)が多い。
- 第1中手骨基部骨折(Bennett骨折):母指対立運動時の外力で発生。整復・固定が重要。
- 第1中手骨Rolando骨折:関節内粉砕骨折で手術適応になることが多い。
- 骨間筋麻痺:尺骨神経損傷により手の内転・外転動作が障害される。
触診ポイント
- 第2・第3中手骨:手背中央の長軸上に硬く触れる。
- 第5中手骨:小指基部にあり、手背尺側で触れやすい。
- 第1中手骨:母指基部の太い骨として容易に触知。
東洋医学的関連
- 経穴:
合谷(LI4)(第1・第2中手骨間)、
中渚(TE3)(第4・第5中手骨間)、
後谿(SI3)(第5中手骨尺側)など。
- 古典的考え方:中手骨部は経絡が交差し、気血の流通を調整する「橋」とされる。特に合谷は「全身調整穴」として知られる。
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