手根骨(Carpal bones)の特徴と筋付着部
骨の名称
- 和名:手根骨
- 英名:Carpal bones
- ラテン名:Ossa carpi
分類
- 短骨(8個の小骨が2列に配列し、手関節の可動性と安定性を担う)
構成
- 近位列(橈側 → 尺側)
- 舟状骨(scaphoid):手根骨の中で最大。橈骨と関節し、手関節の安定性に重要。骨折好発部。
- 月状骨(lunate):中央に位置し、橈骨と関節。脱臼・壊死が臨床的に重要。
- 三角骨(triquetrum):尺骨頭・関節円盤と関節。
- 豆状骨(pisiform):小さな種子骨で、尺側手根屈筋腱内に包まれる。
- 遠位列(橈側 → 尺側)
- 大菱形骨(trapezium):第1中手骨と鞍関節を形成。母指の対立運動に関与。
- 小菱形骨(trapezoid):第2中手骨基部と関節。
- 有頭骨(capitate):手根骨中最大。第3中手骨と連結し、手の中心軸をなす。
- 有鈎骨(hamate):掌側に鉤状突起(有鈎鉤)をもち、小指側の手根管を形成。
関節
- 橈骨手根関節(wrist joint / radiocarpal joint):橈骨遠位端+関節円盤と、舟状骨・月状骨・三角骨の近位列が関節。
- 手根中央関節(midcarpal joint):近位列と遠位列の間の関節。
- 手根間関節(intercarpal joints):同列内の小関節。
- 手根中手関節(carpometacarpal joints):遠位列と中手骨基部との関節。特に第1CMC関節は鞍関節で高可動性。
筋付着
- 起始する筋(手根骨から始まる)
- 停止する筋(手根骨で終わる)
- 尺側手根屈筋(豆状骨)
- 橈側手根伸筋群(長・短)(菱形骨群・有頭骨・第2〜3中手骨を介して停止)
神経支配(関連する筋を通じて)
- 正中神経(C6–T1)→ 短母指外転筋・短母指屈筋浅頭・対立母指筋
- 尺骨神経(C8–T1)→ 小指球筋群・尺側手根屈筋
- 橈骨神経浅枝 → 手背橈側の皮膚感覚支配
血管との関係
- 橈骨動脈:舟状骨と大菱形骨の間を通過し、手背動脈弓を形成。
- 尺骨動脈:有鈎骨付近を通過し、浅掌動脈弓を形成。
- 豆状骨付近で神経・血管圧迫を起こしうる(ギヨン管症候群)。
臨床的意義
- 舟状骨骨折:最も多い手根骨骨折。橈骨茎状突起下の圧痛が特徴。血行不良で偽関節化しやすい。
- 月状骨脱臼:転倒時の手伸展で起こりやすく、正中神経麻痺を合併。
- 有鈎鉤骨折:ゴルフ・野球などのスイング動作で多い。尺骨神経症状を伴うことも。
- 手根管症候群:手根骨+横手根靭帯による手根管で正中神経が圧迫。
触診ポイント
- 舟状骨:母指を伸展し、長母指外転筋腱と短伸筋腱の間(「解剖学的嗅ぎたばこ入れ」)で触知。
- 豆状骨:手掌尺側に突出して触れやすい。
- 有鈎骨鉤:豆状骨の外側下方で圧痛点として確認。
- 大菱形骨:母指基部近く、舟状骨遠位で触れる。
東洋医学的関連
- 経穴:
太淵(LU9)(橈骨茎状突起と舟状骨付近)、
腕骨(SI4)(有鈎骨鉤付近)、
神門(HT7)(豆状骨付近)など。
- 古典的考え方:手関節部は「気血の通り道」とされ、肺経・心経・小腸経・大腸経が交わる要所。気の停滞は手のしびれや冷えに現れる。
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