概要
大腿膝蓋関節(patellofemoral joint)は、大腿骨の膝蓋面と膝蓋骨の関節面(後面)が形成する関節で、膝関節機能の中でも特に膝伸展機構に関わる重要な関節です。膝蓋骨の位置と動きは、大腿四頭筋の力の伝達効率や膝蓋腱の走行に直接影響するため、膝前面痛や膝蓋骨のトラッキング異常と深く関連します。
構成する骨
関節の分類
- 滑膜性関節(平面関節)
主な靭帯・支持構造
- 膝蓋腱(=膝蓋靭帯)
- 内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)
- 外側膝蓋大腿靭帯(LPFL)
- 大腿四頭筋腱
- 膝蓋支帯(内側・外側)
主な動き
- 膝屈伸に伴う上下方向の移動(トラッキング)
- わずかな傾斜(ティルト)
- わずかな回旋
関節に関わる筋
膝蓋骨の安定性に寄与 膝蓋骨の軌道に影響する筋臨床的特徴
- 膝蓋骨のアライメント不良(外側偏位・外側傾斜)が膝前面痛の主因となりやすい。
- 膝蓋大腿関節障害(PFPS:膝蓋大腿疼痛症候群)は鍼灸臨床でも頻出。
- VMO(内側広筋斜走線維)の機能低下が症状につながりやすい。
- 膝蓋下脂肪体の炎症や癒着も膝前部痛の誘因となる。
触診ポイント
- 膝蓋骨(上極・下極・内側縁・外側縁)
- 膝蓋腱と脛骨粗面
- 膝蓋下脂肪体の圧痛
- 内側・外側膝蓋支帯の緊張
東洋医学的関連(経穴・鍼灸)
関連経穴
- 犢鼻(ST35):膝前面痛、膝蓋腱周囲の治療で最重要。
- 膝眼(内膝眼・外膝眼):膝蓋骨周囲の血流改善。
- 梁丘(ST34):大腿四頭筋緊張・膝前面痛。
- 血海(SP10):内側広筋や内側支持組織の問題に有効。
- 曲泉(LR8):内側膝痛・膝蓋内側障害に。
- 委中(BL40):膝後面との関連を含む膝全体の要穴。
- VMOの機能低下は外側偏位の原因となるため、内側広筋のトーン調整が重要。
- 外側膝蓋支帯や腸脛靭帯の緊張を緩める施術が有効。
- 膝蓋骨の可動性改善(上・内・外・下へのモビライゼーション)を補助する治療も有効。
- 膝前面痛には膝蓋下脂肪体周囲の刺鍼が奏功することが多い。

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