概要
大動脈は心臓の左心室から全身へ血液を送り出す最大の動脈で、血圧・循環の中心的役割を担います。上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈(胸部大動脈・腹部大動脈)に大別されます。
解剖学的区分と主要分岐
- 上行大動脈(Ascending aorta):冠動脈(右冠状動脈、左冠状動脈)を分枝する。
- 弓部大動脈(Aortic arch):大動脈弓からは頭頸部・上肢へ向かう主要枝(腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈)が出る。
- 胸部下行大動脈(Thoracic aorta):胸壁や胸部臓器へ分枝(脊柱動脈、食道枝など)。
- 腹部大動脈(Abdominal aorta):腹腔内の主要臓器へ血液を供給する多くの分岐(腹腔動脈、上腸間膜動脈、腎動脈、下腸間膜動脈など)。
走行(簡潔)
左心室から上行大動脈として出て心臓を取り囲むように上昇し、弓部で左方へ伸びてから胸郭を下行し、横隔膜貫通後に腹部大動脈となり、最終的に左右の総腸骨動脈に分かれる。
機能・役割
- 全身へ酸素化された血液を供給する動脈血の主要な導管。
- 拍動性血流を末梢へ伝え、血圧の調整に関与(弾性性により拍動を緩和)。
触診・画像でのポイント
- 大動脈そのものは通常触診できないが、胸部X線やCTで石灰化や拡張(大動脈瘤)を評価できる。
- 腹部大動脈瘤(AAA)は腹部で拍動性腫瘤として触れることがある(特に瘦せた患者)。
- 臨床検査:心エコー(特に弁疾患・上行大動脈評価)、CT血管造影(CTA)、MR血管造影(MRA)が有用。
臨床で重要な疾患
- 大動脈瘤:動脈壁の膨隆。破裂は致命的。
- 大動脈解離:内膜裂開により偽腔が形成される緊急疾患。
- 動脈硬化:石灰化、狭窄、血管脆弱性。
- 感染性大動脈炎・外傷など。
関連する臨床所見・検査
- 血圧差(左右上肢間の血圧差は大動脈弓の分枝病変や解離を示唆することがある)。
- 胸痛(鋭い破裂様痛や背部へ放散する痛みは解離や破裂の疑い)。
- 腹部の拍動性腫瘤(腹部大動脈瘤)や血管雑音。
東洋医学的関連
大動脈は『血の流れの幹』に相当し、全身の循環・気血の運行に密接。脈の評価(頸動脈・橈骨動脈の脈拍)は大動脈から末梢までの血行状態を反映するため、経絡との関連づけや臨床的解釈が可能です。
要点まとめ
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 主要部位 | 上行・弓部・胸部下行・腹部 |
| 主要分枝 | 冠動脈、腕頭動脈・総頸動脈・鎖骨下動脈、腹腔動脈、腎動脈、腸間膜動脈 等 |
| 主な臨床疾患 | 大動脈瘤・解離・動脈硬化 |
| 評価方法 | 心エコー、CT(CTA)、MRA、腹部触診(AAA) |


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