◆ 基本概要
腹部大動脈(abdominal aorta)は、胸部大動脈に続く下行大動脈の腹腔内部分であり、 腹部臓器および腹壁・骨盤へ血液を供給する最大の動脈幹です。 消化・代謝・泌尿生殖機能を支える中枢循環路として極めて重要です。
◆ 位置と範囲
腹部大動脈は第12胸椎レベルで横隔膜の大動脈裂孔を通過して始まり、 第4腰椎レベルで左右の総腸骨動脈へ分岐します。 椎体前面やや左側を下行するのが特徴です。
◆ 主な分枝
【臓側枝(内臓枝)】
- 腹腔動脈
- 上腸間膜動脈
- 下腸間膜動脈
- 腎動脈
- 精巣動脈/卵巣動脈
【壁側枝】
- 下横隔動脈
- 腰動脈(4対)
- 正中仙骨動脈
◆ 支配領域(灌流領域)
腹部大動脈は、胃・肝・脾・膵・小腸・大腸・腎臓・副腎・生殖腺など 腹腔および後腹膜臓器を広く灌流します。 さらに腰動脈を介して体幹後面・脊柱周囲筋群へも血流を供給します。
◆ 触診・体表解剖の要点
痩せ型では臍上部正中で拍動を触知できることがあります。 ただし強い圧迫は禁忌であり、 拍動増強は動脈瘤の鑑別が必要です。 体表では臍(L3〜L4相当)が重要なランドマークとなります。
◆ 臨床的重要性
- 腹部大動脈瘤(AAA)の好発部位
- 腸管虚血・腎虚血との関連
- 動脈硬化の進展部位
- 側副循環(上・下腸間膜動脈吻合など)
◆ 東洋医学的観点
腹部大動脈の走行は、任脈の深層および足陽明胃経・足太陰脾経・足少陰腎経の 腹部経穴と解剖学的に対応します。 中脘・神闕・気海・関元など、 内臓機能調整に用いられる取穴の深部循環理解は、 臨床理論構築の基盤となります。

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