頸長筋の起始・停止・作用まとめ

Gray — musculus longus colli

1.名称(和名・英名・ラテン語)

  • 和名:頸長筋(けいちょうきん)
  • 英名:Longus colli muscle
  • ラテン語:Musculus longus colli
頸長筋は、頸椎の前面に位置する深頸筋群の一つで、 頭蓋底から第3胸椎にかけて長く伸び、頸椎の屈曲と安定化に働く。 姿勢保持や頸部運動の微調整を担う「深層安定筋」である。

2.起始・停止

  • 起始: 第1〜第3胸椎の椎体前面、第5〜第7頸椎の横突起前結節
  • 停止: 第2〜第4頸椎の椎体前面、および環椎(C1)の前結節
頸長筋は、上・中・下の3部に分かれる。
  • 上斜部: 第3〜5頸椎横突起 → 環椎前結節
  • 垂直部: 第2〜4胸椎前面 → 第2〜4頸椎前面
  • 下斜部: 第1〜3胸椎前面 → 第5〜6頸椎横突起
これらが互いに重なり合い、頸椎前面に縦長の筋膜を形成している。

3.支配神経

  • 頸神経叢の前枝(C2〜C6)
深頸筋群に共通して、頸神経叢(C1〜C6)の前枝から枝を受ける。 局所的な支配としては主にC2〜C6が関与する。

4.作用

  • 頸椎の屈曲(前屈)
  • 頸椎の安定化・姿勢保持
  • 片側収縮で同側への軽度回旋・側屈
両側収縮により頸部を前屈させ、 頸椎の安定化・支持に寄与する。 片側収縮では頸部をわずかに同側へ回旋・側屈させる。

5.位置関係・特徴

  • 前方:頸動脈鞘(総頸動脈・内頸静脈・迷走神経)
  • 後方:頸椎椎体前面
  • 外側:前斜角筋・長頭筋
頸長筋は椎前筋群(prevertebral muscles)の一つで、 長頭筋とともに頸椎前面を被う。 これらは深層にあり、表層からはほとんど触知できない。

6.関連する経穴

頸長筋は胃経大腸経任脈の経穴領域に対応。 特に「人迎(ST9)」や「扶突(LI18)」は頸長筋の前面付近に位置し、 咽喉部や自律神経系の調整にも関与する。

7.臨床での関連(症状・特徴)

  • 頸部深層のこわばり、前頸部痛
  • 頭部前方位姿勢(FHP:Forward Head Posture)
  • 頸性めまい、緊張性頭痛
  • 嚥下障害や咽頭違和感(前頸部圧迫)
  • 頸椎の安定性低下・不良姿勢による代償緊張
頸長筋の弱化は「深頸屈筋機能不全」として知られ、 頸部前方変位や慢性肩こり・頸痛の一因となる。 逆に過緊張すると嚥下違和感や喉部圧迫感を訴えることがある。

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