涙骨(lacrimal bone)の特徴と筋付着部

Lacrimal bone - animation

骨の名称

  • 和名:涙骨(るいこつ)
  • 英名:Lacrimal bone
  • ラテン名:Os lacrimale

分類

  • 扁平骨(顔面骨の一部)
  • 左右一対の小骨で、眼窩の内側壁前方部を構成する。
  • 人の顔面骨の中で最も小さい骨の一つ。

特徴・ランドマーク

  • 涙嚢窩(fossa for lacrimal sac):前方の上顎骨とともに形成され、涙嚢が収まる窪み。
  • 眼窩面(orbital surface):眼窩内側壁の一部を形成し、篩骨紙様板と接する。
  • 涙骨溝(lacrimal groove):上顎骨の上顎骨涙嚢溝と組み合わさることで、鼻涙管が通る骨性の管(鼻涙管管)を形成する。
  • 上縁・後縁:それぞれ前頭骨篩骨と連結する。

構成関節


筋付着

  • 起始する筋:明確な起始筋はない。
  • 停止する筋:
    • 眼輪筋(orbicularis oculi muscle)の一部が涙骨稜付近に付着し、涙嚢の圧縮を助ける。
    • 特に眼輪筋の涙部(lacrimal part)が涙嚢を包み込むように配置され、瞬目時に涙を鼻腔へ送る作用をもつ。

神経支配(関連)

  • 三叉神経第1枝(眼神経, CN V₁)の枝である滑車下神経(infratrochlear nerve)が涙骨前部を通過し、内眼角の皮膚を支配。
  • 涙腺の分泌は顔面神経(CN VII)の大錐体神経を介して副交感性に制御される。

血管との関係

  • 眼動脈(ophthalmic artery)の枝である滑車下動脈(infratrochlear artery)が分布。
  • 涙嚢周囲には顔面動脈の枝(角動脈など)も吻合。
  • 静脈は眼静脈および顔面静脈系と交通。

臨床的意義

  • 涙嚢炎(dacryocystitis)
    • 鼻涙管閉塞により涙嚢に感染が生じる。
    • 内眼角部の腫脹・発赤・疼痛・涙溢が特徴。
  • 涙嚢鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy, DCR)
    • 閉塞部をバイパスするため、涙骨部を部分的に除去し新たな導通路を作成。
    • 涙骨はこの手術で最も扱われる顔面骨の一つ。
  • 眼窩骨折・内壁骨折:涙骨は非常に薄いため、篩骨紙様板とともに破損しやすい。

触診ポイント

  • 皮膚上からは直接触知困難だが、内眼角部(目頭)や涙嚢部の圧痛で病変を推定できる。
  • 涙嚢炎ではこの部位に限局した発赤・腫脹が見られる。

東洋医学的関連

  • 関連経絡:手太陽小腸経、足太陽膀胱経、足陽明胃経。
  • 関連経穴:
    • 睛明(BL1)[足太陽膀胱経]:内眼角のやや上方に位置し、涙腺・視力・眼精疲労に有効。
    • 攢竹(BL2)[足太陽膀胱経]:眉頭部にあり、眼疾患や鼻症状に応用。
    • 承泣(ST1)[足陽明胃経]:眼窩下縁中央にあり、涙分泌異常や視覚障害に使用。
  • 涙骨部は「目と鼻の水の通り道」とされ、肝経・腎経の精気、膀胱経・胃経の気の交流が反映する部位と考えられる。

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