篩骨(Ethmoid bone)の特徴と筋付着部

Rotation ethmoid

骨の名称

  • 和名:篩骨(しこつ)
  • 英名:Ethmoid bone
  • ラテン名:Os ethmoidale

分類

  • 不規則骨(頭蓋底の骨の一つ)
  • 前頭骨・蝶形骨・上顎骨・涙骨・口蓋骨・鋤骨などと関節。

概要

  • 篩骨は頭蓋底の前部、両眼窩の間に位置する軽くてスポンジ状の骨。
  • 嗅覚・呼吸・頭蓋支持に深く関与する複雑な骨格構造。
  • 頭蓋腔(脳)と鼻腔の境界を形成し、嗅神経や篩骨動静脈が通過する。
  • 鼻腔を左右に分ける垂直板、頭蓋底の篩板、鼻甲介を含む迷路部の3部で構成される。

構成部位・ランドマーク

  • 篩板(cribriform plate)
    • 頭蓋底に水平に位置し、嗅神経(第Ⅰ脳神経)が通過する多数の小孔を有する。
    • 上面は前頭骨の篩骨切痕と連続し、嗅球を支える。
  • 鶏冠(crista galli)
    • 篩板中央から上方に突出する垂直突起。
    • 大脳鎌(falx cerebri)の前端が付着する。
  • 垂直板(perpendicular plate)
    • 篩板から下方に垂直に伸び、鼻中隔の上部を形成。
    • 下方では鋤骨と連結する。
  • 篩骨迷路(ethmoidal labyrinth)
    • 左右一対の蜂巣状構造で、多数の篩骨洞(ethmoidal air cells)を含む。
    • 外側面は眼窩板(lamina orbitalis)を形成し、眼窩内壁の大部分をつくる。
    • 内側には上・中鼻甲介が突出し、鼻腔内の気流調節に寄与。

関節関係

  • 上方:前頭骨(篩骨切痕部)
  • 後方:蝶形骨(篩骨翼と接続)
  • 前方:鼻骨・上顎骨・涙骨
  • 下方:鋤骨(鼻中隔の下部を構成)
  • 外側:眼窩板を介して眼窩内容物と接する

筋・膜・神経の付着

  • 付着構造:
    • 鶏冠部:大脳鎌(falx cerebri)
    • 鼻甲介:鼻腔粘膜・嗅上皮
  • 通過神経:
    • 嗅神経(第Ⅰ脳神経)…篩板の多数の小孔を通過し嗅粘膜へ。
    • 前・後篩骨神経(眼神経分枝)…鼻腔・篩骨洞の感覚支配。
  • 血管:
    • 前・後篩骨動脈(眼動脈分枝)…篩骨洞および鼻粘膜に分布。
    • 篩骨静脈叢…眼窩および頭蓋内静脈洞と交通。

臨床的意義

  • 篩骨洞炎(ethmoiditis):副鼻腔炎の一種で、小児に多く発生。眼窩内への炎症波及に注意。
  • 嗅覚障害:篩板損傷や嗅神経線維の断裂によって発生。
  • 篩板骨折:外傷により髄液漏(CSF leak)が生じる危険性。
  • 頭蓋底骨折:篩骨の破損により鼻腔から髄液流出(髄液鼻漏)。
  • 副鼻腔手術:眼窩・頭蓋底が近接しており、術中損傷のリスクが高い。

触診・位置の把握

  • 外表からは直接触れにくい。
  • 鼻腔内視鏡下に中鼻甲介・上鼻甲介を観察でき、篩骨洞開口部を確認できる。
  • 頭蓋底MRI・CTで鶏冠や篩板の位置を確認可能。

東洋医学的関連

  • 篩骨部は鼻腔・前頭部・嗅覚に関与するため、手の陽明大腸経および督脈の流れと深く関連する。
  • 関連経穴:
  • 嗅覚・呼吸・精神活動に関連し、「清陽の気」が通じる経絡領域とされる。

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