下鼻甲介(inferior nasal concha)の特徴と筋付着部
骨の名称
- 和名:下鼻甲介(かびこうかい)
- 英名:Inferior nasal concha
- ラテン名:Concha nasalis inferior / Turbinal
分類
- 不規則骨(顔面骨の一部)
- 鼻腔側壁内面に位置する左右一対の骨。
- 上・中鼻甲介(篩骨の一部)とは異なり、独立した骨として存在する。
特徴・ランドマーク
- 形態:薄い骨板が内方へ湾曲しており、鼻腔内に突出する。
- 前端:鼻涙管開口部付近に位置し、涙の排出路と関係。
- 後端:後鼻孔に向かって自由縁を形成。
- 上縁:鼻腔外側壁に付着し、各部に突起をもつ。
- 上顎突起(maxillary process):上顎骨の上顎洞(hiatus maxillaris)を覆う。
- 涙骨突起(lacrimal process):涙骨と接し、涙管の下部を形成。
- 篩骨突起(ethmoidal process):篩骨と連結。
- 自由縁(下縁):厚く丸みを帯び、鼻腔粘膜に覆われ、気流の乱流を起こす。
構成関節(連結する骨)
筋付着
- 明確な筋付着はない。
- 表面は多列線毛円柱上皮と鼻粘膜で覆われ、豊富な血管と腺組織を含む。
- 粘膜下には鼻甲介静脈叢が発達し、血流変化により鼻腔の開閉を調節。
神経支配(関連)
- 上顎神経(CN V₂)の枝である後鼻枝(posterior nasal branches)が支配。
- 粘膜感覚は鼻口蓋神経(nasopalatine nerve)および後上・後下鼻神経による。
- 副交感神経(顔面神経由来)が腺分泌を制御。
血管との関係
- 蝶口蓋動脈(sphenopalatine artery)が主に支配。
- 顔面動脈(facial artery)や眼動脈の枝との吻合があり、鼻出血の好発部位。
- 静脈は翼突筋静脈叢・顔面静脈に注ぐ。
臨床的意義
- 下鼻甲介肥大(inferior turbinate hypertrophy):
- アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎で粘膜肥厚や血管拡張が起こる。
- 鼻閉、いびき、睡眠時無呼吸の原因となる。
- 下鼻道(inferior meatus):
- 下鼻甲介の下方に位置し、鼻涙管の開口部を含む。
- 涙液が鼻腔へ流出する経路であり、閉塞すると流涙症を引き起こす。
- 鼻出血(epistaxis):
- 外科的には、下鼻甲介切除術や粘膜下下鼻甲介形成術が鼻閉改善に行われる。
触診ポイント
- 外からは触知できないが、鼻鏡・内視鏡で下鼻甲介を確認できる。
- 鼻炎やアレルギーの際には腫大し、鼻腔を狭めている様子が観察される。
東洋医学的関連
- 関連経絡:手陽明大腸経、足陽明胃経、督脈。
- 関連経穴:
- 迎香(LI20)[手陽明大腸経]:鼻翼外縁に位置し、鼻閉・嗅覚異常に有効。
- 印堂(EX-HN3):眉間中央、鼻炎・頭痛・不眠に応用。
- 素髎(GV25):鼻尖部中央、呼吸調整・鼻づまりに使用。
- 古典的考え方:鼻は肺の開竅とされ、下鼻甲介部の血行や粘膜状態は肺気の流通に対応。肺気虚や風寒侵襲により鼻閉・鼻漏が生じると考えられる。
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