下鼻甲介(inferior nasal concha)の特徴と筋付着部

Inferior nasal concha - animation 02

骨の名称

  • 和名:下鼻甲介(かびこうかい)
  • 英名:Inferior nasal concha
  • ラテン名:Concha nasalis inferior / Turbinal

分類

  • 不規則骨(顔面骨の一部)
  • 鼻腔側壁内面に位置する左右一対の骨。
  • 上・中鼻甲介(篩骨の一部)とは異なり、独立した骨として存在する。

特徴・ランドマーク

  • 形態:薄い骨板が内方へ湾曲しており、鼻腔内に突出する。
  • 前端:鼻涙管開口部付近に位置し、涙の排出路と関係。
  • 後端:後鼻孔に向かって自由縁を形成。
  • 上縁:鼻腔外側壁に付着し、各部に突起をもつ。
    • 上顎突起(maxillary process):上顎骨の上顎洞(hiatus maxillaris)を覆う。
    • 涙骨突起(lacrimal process):涙骨と接し、涙管の下部を形成。
    • 篩骨突起(ethmoidal process):篩骨と連結。
  • 自由縁(下縁):厚く丸みを帯び、鼻腔粘膜に覆われ、気流の乱流を起こす。

構成関節(連結する骨)


筋付着

  • 明確な筋付着はない。
  • 表面は多列線毛円柱上皮鼻粘膜で覆われ、豊富な血管と腺組織を含む。
  • 粘膜下には鼻甲介静脈叢が発達し、血流変化により鼻腔の開閉を調節。

神経支配(関連)

  • 上顎神経(CN V₂)の枝である後鼻枝(posterior nasal branches)が支配。
  • 粘膜感覚は鼻口蓋神経(nasopalatine nerve)および後上・後下鼻神経による。
  • 副交感神経(顔面神経由来)が腺分泌を制御。

血管との関係

  • 蝶口蓋動脈(sphenopalatine artery)が主に支配。
  • 顔面動脈(facial artery)眼動脈の枝との吻合があり、鼻出血の好発部位。
  • 静脈は翼突筋静脈叢・顔面静脈に注ぐ。

臨床的意義

  • 下鼻甲介肥大(inferior turbinate hypertrophy)
    • アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎で粘膜肥厚や血管拡張が起こる。
    • 鼻閉、いびき、睡眠時無呼吸の原因となる。
  • 下鼻道(inferior meatus)
    • 下鼻甲介の下方に位置し、鼻涙管の開口部を含む。
    • 涙液が鼻腔へ流出する経路であり、閉塞すると流涙症を引き起こす。
  • 鼻出血(epistaxis)
    • 下鼻甲介前端は血管叢が豊富で、鼻出血の好発部位。
  • 外科的には、下鼻甲介切除術粘膜下下鼻甲介形成術が鼻閉改善に行われる。

触診ポイント

  • 外からは触知できないが、鼻鏡・内視鏡で下鼻甲介を確認できる。
  • 鼻炎やアレルギーの際には腫大し、鼻腔を狭めている様子が観察される。

東洋医学的関連

  • 関連経絡:手陽明大腸経、足陽明胃経、督脈。
  • 関連経穴:
    • 迎香(LI20)[手陽明大腸経]:鼻翼外縁に位置し、鼻閉・嗅覚異常に有効。
    • 印堂(EX-HN3):眉間中央、鼻炎・頭痛・不眠に応用。
    • 素髎(GV25):鼻尖部中央、呼吸調整・鼻づまりに使用。
  • 古典的考え方:鼻は肺の開竅とされ、下鼻甲介部の血行や粘膜状態は肺気の流通に対応。肺気虚や風寒侵襲により鼻閉・鼻漏が生じると考えられる。

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