舌骨(hyoid bone)の特徴と筋付着部

Hyoid bone - animation

骨の名称

  • 和名:舌骨(ぜっこつ)
  • 英名:Hyoid bone
  • ラテン名:Os hyoideum

分類

  • 不規則骨(単独骨)
  • 頭蓋骨にも体幹骨にも直接関節しない唯一の骨。
  • 舌および喉頭を支える「懸垂骨(floating bone)」として機能する。

位置・概要

  • 第3頚椎(C3)の高さで、下顎骨と甲状軟骨の間に位置。
  • 舌・下顎・喉頭・肩甲骨と多数の筋により吊り下げられる。
  • 嚥下・発声・呼吸などの協調運動に必須の支持構造。

特徴・ランドマーク

  • 体(body of hyoid):中央の厚い部分。前面は舌骨筋群の付着部。
  • 大角(greater horn / cornu majus):後外側に延びる突起。茎突舌骨靭帯・舌骨下筋群が付着。
  • 小角(lesser horn / cornu minus):上方に突出。茎突舌骨靭帯の起始部。
  • 関節は存在せず、すべて筋と靭帯によって保持される。

構成関節

  • 関節なし(他骨と直接結合しない)
  • ただし以下の靭帯結合をもつ:
    • 茎突舌骨靭帯(stylohyoid ligament):側頭骨の茎状突起 ↔ 舌骨小角
    • 舌骨喉頭膜(thyrohyoid membrane):舌骨下縁 ↔ 甲状軟骨上縁

筋付着


神経支配(関連筋を通じて)

  • 顔面神経(VII):茎突舌骨筋、二腹筋後腹。
  • 舌下神経(XII):顎舌骨筋(顎舌骨神経経由)、オトガイ舌骨筋、舌骨舌筋。
  • 頚神経ワナ(ansa cervicalis):舌骨下筋群(胸骨舌骨筋・肩甲舌骨筋・甲状舌骨筋)。

血管との関係

  • 上甲状動脈舌動脈顔面動脈の枝が周囲を網状に走行。
  • 舌骨動脈(舌動脈の枝)が舌骨体に栄養を供給。

臨床的意義

  • 舌骨骨折:首絞め・外傷などでまれに発生。嚥下痛や発声障害を呈する。
  • 嚥下障害:舌骨上・下筋群の協調不全による舌骨挙上不足で生じる。
  • 気道確保:舌骨上方偏位により咽頭腔が拡大するため、蘇生時や睡眠時無呼吸症治療にも関連。
  • 発声障害:舌骨位置が高すぎる・低すぎると喉頭の緊張バランスが崩れ、声のこもりやすさを招く。

触診ポイント

  • 下顎角の下、甲状軟骨の上にある硬い横棒状構造として触知。
  • 嚥下運動時に上下へ動くのを確認できる。
  • 位置異常や圧痛は嚥下障害・筋緊張性の指標となる。

東洋医学的関連

  • 関連経絡:任脈・督脈・足陽明胃経・手少陽三焦経など。
  • 関連経穴:
    • 廉泉(CV23)[任脈]:舌骨上縁の陥凹。発声障害・嚥下困難に使用。
    • 天突(CV22)[任脈]:胸骨上縁の陥凹。呼吸困難・咽喉閉塞に有効。
    • 水突(ST10)[足陽明胃経]:舌骨外側下方。頸部緊張・咳嗽に用いる。
  • 古典的考え方:舌骨周囲は「喉の関」に属し、腎気と肺気の交会部とされる。声や呼吸の滞りは気の停滞(気滞)・痰湿によるものと考えられる。

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