１．名称（和名・英名・ラテン語）
- 和名：オトガイ舌骨筋（おとがいぜっこつきん）
- 英名：Geniohyoid muscle
- ラテン語：Musculus geniohyoideus
オトガイ舌骨筋は
舌骨上筋群の最も深層にあり、
顎舌骨筋の上に位置する細長い筋。
舌の根本と
舌骨を結び、嚥下や発声時に
舌骨を前上方へ引き上げる重要な筋である。
２．起始・停止
- 起始： 下顎骨オトガイ棘（genial tubercle, inferior mental spine）
- 停止： 舌骨体の前面（body of hyoid bone）
筋線維は後下方に走り、左右のオトガイ舌骨筋が
舌骨前面で並行して走行する。
舌の根元に近い位置にあるため、舌の動きや嚥下時の引き上げ動作に関与する。
３．支配神経
- 第1頸神経（C1） — 舌下神経（Hypoglossal nerve, CN XII）に随伴して支配
オトガイ舌骨筋は舌下神経の枝に随伴するC1線維によって支配される。
これは舌筋群との神経的連携を反映しており、発声・嚥下運動との協調に寄与する。
４．作用
- 舌骨を前上方に引き上げる（嚥下・発声時）
- 舌骨が固定されている場合：下顎を下げる（開口を補助）
- 口腔底を引き上げ、舌の後方移動を助ける
嚥下の初期段階で
舌骨を前上方へ持ち上げることで、
食塊を咽頭へ送りやすくし、気道を閉鎖して誤嚥を防ぐ働きを持つ。
５．位置関係・形態
- 顎舌骨筋の上、オトガイ舌骨筋は舌の根の直下に位置。
- 左右のオトガイ舌骨筋は舌骨体の前面で正中に並ぶ。
- 上方には舌筋（特にオトガイ舌筋）が重なる。
- 舌骨上筋群の中で最も内側・深層にあり、舌と舌骨を直接連結する唯一の筋。
６．関連する経穴
任脈上の廉泉（CV23）は本筋の真上に位置し、
「喉の閉塞感」「舌根部のこわばり」「発声障害」などに用いられる代表経穴。
オトガイ舌骨筋の緊張緩和は、舌骨周囲のバランス改善に直結する。
７．臨床での関連（症状・特徴）
- 嚥下困難（舌骨の挙上不足）
- 喉の閉塞感・違和感
- 発声時の喉詰まり・高音障害
- 開口制限（下顎下降の補助筋として関与）
- 舌下部や顎下部の硬結・違和感
オトガイ舌骨筋の過緊張は、喉の詰まり感や舌の根元のこわばりに直結する。
顎舌骨筋・
顎二腹筋と連携して緩めることで、嚥下・発声の改善が見られることが多い。
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