１．筋肉の名称（和名・英名・ラテン語）
- 和名：長趾屈筋（ちょうしくっきん）
- 英名：Flexor digitorum longus muscle
- ラテン語：Musculus flexor digitorum longus
長趾屈筋は下腿後面の深層にある筋で、
足の第2〜第5趾を屈曲させる主動筋である。
腓骨側の
長母趾屈筋と交差しながら足底を走行し、
歩行・走行時には足指で地面をつかむ動作に大きく関与する。
２．起始・停止
- 起始：脛骨後面の中部3分の1（腓骨や骨間膜にはつかない）
- 停止：第2〜第5趾の末節骨底
起始部から下行して内果（うちくるぶし）の後方を通過し、
足底で腱が分岐して各趾に向かう。
途中で
長母趾屈筋腱と交叉（
腱交叉部＝Knot of Henry）し、
足趾屈曲動作の協調を担う。
３．支配神経
下腿後面深層の他の筋（
長母趾屈筋・
後脛骨筋など）と同様に、
脛骨神経の支配を受ける。
末梢での圧迫や滑走障害は、足底の違和感・しびれにつながる。
４．作用
- 第2〜第5趾の屈曲
- 足関節の底屈
- 足の内反（後脛骨筋と協働）
指屈曲筋として、足指を地面に押しつける動作を助ける。
立位時には足底の縦アーチを支持し、安定した重心維持に寄与する。
歩行では蹴り出し動作（toe-off）に不可欠である。
５．関連する経穴
長趾屈筋の走行部には
足の少陰腎経（KI）および
足の太陰脾経（SP）が関与。
「復溜」「照海」「太谿」は筋の走行上にあり、
足底部や足趾の屈曲障害・冷え・しびれなどの治療に効果的。
「三陰交」は関連する3経脈の交会穴として筋緊張の調整に用いられる。
６．臨床での関連（症状・特徴）
- 足趾の屈曲制限・けいれん
- 足底部のこわばり・重だるさ
- 足関節内側や足底の疼痛（後脛骨神経症候群）
- アーチの低下・偏平足傾向
- 歩行時の蹴り出し力低下
長趾屈筋の過緊張は、足底筋膜炎や鶏足変形（hammer toe）にも関与。
逆に筋弱化では縦アーチの支持が低下し、
偏平足・疲労感・下肢静脈のうっ滞などを引き起こす。
鍼灸では太谿・復溜・三陰交を中心に調整することで改善が期待できる。
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