概要
肩鎖関節(AC関節)は、肩峰(肩甲骨)と鎖骨外側端によって構成される肩甲帯の重要な連結部です。
肩甲骨の上方回旋・下方回旋・外旋・内旋など、肩の複雑な動きを可能にする調整関節として働きます。
分類
- 種類:滑膜性関節(平面関節)
- 運動性:小さな滑り運動と回旋が中心
- 関節円板:存在するが、加齢で変性しやすい
構成する骨
運動
- 滑り運動(上下・前後)
- 回旋運動(肩甲骨の上方回旋・下方回旋)
- 肩甲胸郭関節の動きを補正する微調整機能
付着する筋・靱帯
安定化に関与する靱帯
- 肩鎖靱帯(関節を直接補強)
- 烏口鎖骨靱帯(外側鎖骨を吊り上げ AC関節の主安定化)
- 円錐靱帯
- 菱形靱帯
臨床的意義
- 肩鎖関節脱臼(いわゆる「肩が上がる」変形)が多い
- スポーツ外傷で頻発(ラグビー・サッカー・自転車転倒など)
- 加齢による変形性変化で肩外転時の痛みが出やすい
- 肩峰下インピンジメント症候群の一因になり得る
- 肩甲帯の可動調整に重要で、肩関節可動域制限に深く関与する
触診ポイント
鎖骨外側端を外側へ追っていくと、わずかに段差を感じる部分が肩鎖関節です。
肩峰と鎖骨の隙間を軽く押すと圧痛が取れることが多く、炎症や変性の指標になります。
肩の挙上・水平外転・水平内転などの動きで関節のわずかな動きを感じ取れます。
東洋医学的関連
- 肩鎖関節周囲は肺経・大腸経・三焦経の関連領域に位置する。
- 肩こり、肩の挙上障害、腕の気血の流れの滞りに強く関係。
関連する主な経穴
- 肩髃(けんぐう|LI15):肩外側の主要穴。肩関節痛・挙上制限に特効。
→ AC関節障害で圧痛が出やすい。 - 巨骨(ここつ|LI16):肩峰の内側縁。
→ 肩鎖関節のすぐ近くにあり、痛み・挙上の補助治療に用いる。 - 肩髎(けんりょう|TE14):肩峰後面。
→ 肩関節の外転痛・運動障害に効果。 - 秉風(へいふう|SI12):肩甲棘上窩。
→ 肩上部の気滞を散らし、肩甲の動きを改善。 - 臑会(じゅえ|TE13):上腕外側。
→ 肩から腕への経絡の疎通を改善。
鍼灸の臨床効果(期待されるもの)
- 肩鎖関節痛(AC joint pain)の軽減
- 肩峰下インピンジメント症状の改善
- 外転・水平外転・挙上での痛みと可動域の改善
- 肩甲上腕リズムの正常化が期待できる
- 関連筋(三角筋・僧帽筋上部)の緊張調整
まとめ
肩鎖関節は肩甲帯の微調整機構を担う重要な関節で、わずかな不調でも肩関節全体の動きに影響します。
東洋医学的にも肩周囲の主要経穴が集まる部位であり、鍼灸治療で効果が出やすい領域です。

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