尾骨(Coccyx)の特徴と筋付着部
骨の名称
- 和名:尾骨
- 英名:Coccyx
- ラテン名:Os coccygis
分類
概要
- 尾骨は通常3〜5個の尾椎が癒合してできる小さな骨で、仙骨の下端に連続する。
- ヒトでは退化的構造で、脊椎動物における尾部の名残。
- 直立姿勢においては体重支持には関与せず、主に筋や靱帯の付着点として機能する。
- 骨盤底筋群や仙結節靱帯の付着により、骨盤臓器の支持・排便運動に関与。
形態・ランドマーク
- 基部(base of coccyx):仙骨との連結部(仙尾関節)。
- 尖端(apex of coccyx):尾骨の先端部。皮下に触知可能。
- 尾骨角(coccygeal cornu):上方に突出し、仙骨角と連結。
- 前面は平滑で、後面はやや凸状を呈する。
関節
- 仙尾関節(sacrococcygeal joint):仙骨下端との連結。線維軟骨性または靱帯性連結。
- わずかな屈伸運動が可能で、出産時に可動性が増す。
靱帯
- 前仙尾靱帯(anterior sacrococcygeal ligament)
- 後仙尾靱帯浅層・深層(posterior sacrococcygeal ligament)
- 仙棘靱帯(sacrospinous ligament)
- 仙結節靱帯(sacrotuberous ligament)
筋付着
神経支配(関連筋を通じて)
- 仙骨神経叢末梢枝(S3〜S5)
- 陰部神経(S2〜S4):肛門括約筋や会陰部筋を支配。
- 尾骨神経(coccygeal nerve, Co1):皮膚感覚や筋にわずかに関与。
血管との関係
- 正中仙骨動脈(median sacral artery):尾骨前面を下降して栄養。
- 下直腸動脈・陰部動脈枝が近接する。
- 仙骨静脈叢が尾骨前面で吻合する。
臨床的意義
- 尾骨痛(coccygodynia):転倒・出産・長時間の座位により発生。尾骨先端や関節の微小損傷が原因。
- 尾骨骨折:転倒などで容易に発生。治療は保存的だが、慢性痛を残すことがある。
- 出産時の尾骨可動:仙尾関節のわずかな動きにより骨盤出口径が拡大する。
- 硬膜外麻酔:尾骨角の直上(仙骨裂孔)から穿刺する場合もある。
触診ポイント
- 仙骨下端の正中に続く小突起として容易に触知可能。
- 尾骨尖端は肛門の直上に位置し、座位で圧痛を感じることがある。
- 肛門挙筋や大殿筋の収縮でわずかに動くことを確認できる。
東洋医学的関連
- 関連経穴:長強(GV1)、白環兪(BL30)、八髎穴(BL31〜BL34)
- 長強(ちょうきょう):督脈の最下端の経穴で、尾骨尖端と肛門の間に位置。
- 督脈・任脈・陽蹻脈の交会穴であり、身体のエネルギーの基点とされる。
- 便秘・痔疾・尿失禁・性機能低下など、下焦(骨盤腔)疾患に用いられる。
- 尾骨部は「督脈」の起点として、全身の気血循環・生命力の根とされる。
0 件のコメント:
コメントを投稿