尾骨(Coccyx)の特徴と筋付着部

Coccyx - animation04

骨の名称

  • 和名:尾骨
  • 英名:Coccyx
  • ラテン名:Os coccygis

分類

  • 不規則骨(脊柱の最下端を形成)

概要

  • 尾骨は通常3〜5個の尾椎が癒合してできる小さな骨で、仙骨の下端に連続する。
  • ヒトでは退化的構造で、脊椎動物における尾部の名残。
  • 直立姿勢においては体重支持には関与せず、主に筋や靱帯の付着点として機能する。
  • 骨盤底筋群や仙結節靱帯の付着により、骨盤臓器の支持・排便運動に関与。

形態・ランドマーク

  • 基部(base of coccyx):仙骨との連結部(仙尾関節)。
  • 尖端(apex of coccyx):尾骨の先端部。皮下に触知可能。
  • 尾骨角(coccygeal cornu):上方に突出し、仙骨角と連結。
  • 前面は平滑で、後面はやや凸状を呈する。


関節

  • 仙尾関節(sacrococcygeal joint):仙骨下端との連結。線維軟骨性または靱帯性連結。
  • わずかな屈伸運動が可能で、出産時に可動性が増す。

靱帯

  • 前仙尾靱帯(anterior sacrococcygeal ligament)
  • 後仙尾靱帯浅層・深層(posterior sacrococcygeal ligament)
  • 仙棘靱帯(sacrospinous ligament)
  • 仙結節靱帯(sacrotuberous ligament)

筋付着

  • 起始する筋:
    • なし(主に停止部として機能)
  • 停止する筋:

神経支配(関連筋を通じて)

  • 仙骨神経叢末梢枝(S3〜S5)
  • 陰部神経(S2〜S4):肛門括約筋や会陰部筋を支配。
  • 尾骨神経(coccygeal nerve, Co1):皮膚感覚や筋にわずかに関与。

血管との関係

  • 正中仙骨動脈(median sacral artery):尾骨前面を下降して栄養。
  • 下直腸動脈・陰部動脈枝が近接する。
  • 仙骨静脈叢が尾骨前面で吻合する。

臨床的意義

  • 尾骨痛(coccygodynia):転倒・出産・長時間の座位により発生。尾骨先端や関節の微小損傷が原因。
  • 尾骨骨折:転倒などで容易に発生。治療は保存的だが、慢性痛を残すことがある。
  • 出産時の尾骨可動:仙尾関節のわずかな動きにより骨盤出口径が拡大する。
  • 硬膜外麻酔:尾骨角の直上(仙骨裂孔)から穿刺する場合もある。

触診ポイント

  • 仙骨下端の正中に続く小突起として容易に触知可能。
  • 尾骨尖端は肛門の直上に位置し、座位で圧痛を感じることがある。
  • 肛門挙筋や大殿筋の収縮でわずかに動くことを確認できる。

東洋医学的関連

  • 関連経穴:長強(GV1)白環兪(BL30)、八髎穴(BL31BL34
  • 長強(ちょうきょう):督脈の最下端の経穴で、尾骨尖端と肛門の間に位置。
  • 督脈・任脈・陽蹻脈の交会穴であり、身体のエネルギーの基点とされる。
  • 便秘・痔疾・尿失禁・性機能低下など、下焦(骨盤腔)疾患に用いられる。
  • 尾骨部は「督脈」の起点として、全身の気血循環・生命力の根とされる。

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