1.筋肉の名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)
- 英名:External anal sphincter
- ラテン語:Musculus sphincter ani externus
外肛門括約筋は随意的に肛門を閉鎖する輪状の骨格筋であり、
直腸下端を取り囲んで肛門管を圧迫し、排便を制御する。
内肛門括約筋(平滑筋)とともに二重の括約構造を形成する。
2.起始・停止
- 起始:会陰腱中心(perineal body)
- 停止:尾骨尖(coccyx)および肛門尾骨靭帯(anococcygeal ligament)
肛門を取り囲む輪状筋として形成され、前方は会陰腱中心、
後方は肛門尾骨靭帯を介して尾骨に付着する。
肛門挙筋・内肛門括約筋と層状に連続し、機能的に一体となる。
3.構造(3層区分)
- 皮下部(subcutaneous part):皮膚直下にあり、最外層
- 浅部(superficial part):会陰腱中心と尾骨を結ぶ部分
- 深部(deep part):内肛門括約筋と接する最内層
これら3層は機能的に連続しており、随意的な肛門閉鎖に協調して働く。
特に浅部は排便時の意識的な収縮に関与する。
4.支配神経
- 陰部神経(S2〜S4)
- 下直腸神経(陰部神経の枝)
仙骨神経叢由来の陰部神経により随意的に収縮する。
自律的な内肛門括約筋と異なり、意思で制御できる筋である。
5.作用
- 肛門を閉鎖し、便の漏出を防ぐ
- 直腸下端の圧を高め、排便を抑制
- 肛門挙筋・内肛門括約筋と協働して排便をコントロール
通常時はトーヌス(持続的収縮)により肛門を閉鎖しており、
排便時には内肛門括約筋の弛緩とタイミングを合わせて開放される。
6.関連する経穴
外肛門括約筋周囲は督脈・任脈・膀胱経・腎経が交わる重要な領域。
鍼灸では痔疾、便秘、直腸脱、性機能障害、仙骨痛などの治療で用いられる。
7.臨床での関連
- 肛門括約不全(便失禁)
- 痔疾患後の瘢痕・緊張不全
- 排便障害(直腸性便秘、機能的排便障害)
- 尾骨痛・会陰部痛(過緊張性骨盤底)
- 出産後・手術後の骨盤底筋障害
外肛門括約筋は骨盤底の「最下層・最終防御線」。
その緊張バランスが崩れると、便漏れや痔疾、骨盤痛につながる。
骨盤底リハビリ(ケーゲル運動)や鍼治療での機能再教育が有効。
8.臨床メモ
- 随意筋としての肛門閉鎖筋。内肛門括約筋と協調して働く。
- 肛門挙筋・尾骨筋と連動し、骨盤底全体の安定に関与。
- 過緊張タイプでは「排便困難」「骨盤痛」を、低緊張タイプでは「便漏れ」を起こす。
- 「会陰」「長強」周辺の経穴刺激で、括約筋の緊張バランスを整える治療が行われる。
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