後頭前頭筋の起始・停止・作用まとめ

１．名称（和名・英名・ラテン語）

• 和名：後頭前頭筋
• 英名：Occipitofrontalis muscle（または Epicranius muscle）
• ラテン語：Musculus occipitofrontalis

後頭前頭筋は、前頭筋（frontal belly）と後頭筋（occipital belly）の2部からなり、 これらは頭頂腱膜（galea aponeurotica）によって連結される。 額のしわ形成や眉の挙上など、表情表現に深く関与する。

２．起始・停止

• 前頭腹（frontal belly）
• 起始：頭頂腱膜（galea aponeurotica）
• 停止：眉毛皮膚・鼻根部皮膚
• 後頭腹（occipital belly）
• 起始：後頭骨上項線外側3分の2・側頭骨乳様突起
• 停止：頭頂腱膜

前頭腹と後頭腹は頭頂腱膜を介して連続し、頭皮を前後方向に動かす。 前頭腹が収縮すると眉が上がり、後頭腹が収縮すると頭皮が後方へ引かれる。

３．支配神経

• 顔面神経（第VII脳神経）
• 前頭腹：顔面神経の側頭枝
• 後頭腹：顔面神経の後耳介枝

後頭前頭筋は表情筋の一つであり、すべて顔面神経支配である。 神経麻痺があると眉の動きや額のしわ形成が左右差を生じる。

４．作用

• 前頭腹：眉を上げ、額に横しわを作る（驚き・関心などの表情）
• 後頭腹：頭皮を後方へ引く
• 両者協働：頭皮を前後方向に動かす

表情筋としての動きだけでなく、頭皮の張力維持にも関与する。 長時間の緊張やストレスにより、頭頂部・後頭部の筋緊張が頭痛の原因となることもある。

５．関連する経穴

• 陽白（GB14）：前頭筋上、眉毛中央上方1寸
• 風池（GB20）：後頭筋下方、後頭骨下縁陥凹部
• 天柱（BL10）：後頭筋下縁付近、項部外側

前頭部では胆経・膀胱経が走行し、後頭部でもこれらの経絡が交わる。 鍼灸臨床では、前頭痛・後頭部の緊張・眼精疲労などに関連して重要な治療領域となる。

６．臨床での関連（症状・特徴）

• 額の緊張・頭皮のこわばりによる緊張性頭痛
• 表情筋麻痺（顔面神経麻痺）による額のしわ非対称
• ストレス性の眉間・額のこわばり
• 後頭部の筋緊張からくる首こり・肩こり

後頭前頭筋は感情表出と緊張性頭痛の双方に関わる筋である。 鍼灸や徒手療法では、陽白・風池・天柱などの経穴を用いて、 頭皮・後頭部の筋緊張を緩和することが多い。