概要
環軸関節(Atlanto-Axial Joint:AA関節)は、環椎(C1)と軸椎(C2)で構成される上位頸椎の回旋を担う最重要関節です。
頸部全体の約50〜60%の回旋(左右の振り向き動作)はこの関節で行われます。
構成する骨
関節の種類
- 正中環軸関節:車軸関節(ピボット関節)
- 外側環軸関節:平面関節(椎骨間関節)
関節面
- 歯突起と環椎前弓の小窩(正中)
- 環椎下関節窩と軸椎上関節突起(外側)
運動
- 回旋(主)
- わずかな屈曲・伸展
- ほぼ側屈なし
支持する靭帯
- 横靭帯(環椎横靭帯):歯突起を後方から固定する最重要靱帯
- 翼状靭帯
- 歯尖靭帯
- 後縦靭帯(膜状部:歯後頭膜)
- 前縦靭帯
- 関節包
作用筋(回旋に関わる主な筋)
- 右回旋:左胸鎖乳突筋、右大後頭直筋、右下頭斜筋
- 左回旋:右胸鎖乳突筋、左大後頭直筋、左下頭斜筋
ランドマーク(触診)
- 環椎横突起(乳様突起のやや下・前方)付近が目安
- 回旋時の抵抗感で可動性を評価
- 後頭下三角の緊張は機能障害の重要サイン
臨床で重要なポイント
- 頸性頭痛(特に後頭部痛、片側性頭痛)と深く関連
- めまい・眼精疲労・吐き気の原因になりやすい
- 交通事故(むち打ち)で最も障害を受けやすい部位
- 回旋の左右差は上位頸椎評価の基本
- 不良姿勢(前方頭位)で回旋制限が起こりやすい
東洋医学的関連
環軸関節の周囲は、頭頸部の調整に重要な督脈と、後頭部を走行する足の太陽膀胱経の影響を強く受けます。
回旋障害は、目の症状・頭痛・精神疲労などと関係することが多いです。
- 頸性頭痛・偏頭痛
- 目の奥の痛み、眼精疲労
- めまい・ふらつき
- 首が回らない(可動域制限)
- 緊張型頭痛・後頭下筋群の緊張
AA関節は「振り向き動作」の中心であり、鍼灸でも整体でも最重要の評価ポイントになります。

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