浅掌動脈弓（superficial palmar arch）まとめ

◆ 基本概要

浅掌動脈弓（superficial palmar arch）は、主に尺骨動脈によって形成される手掌部の動脈弓で、 指の屈伸や把持動作に必要な豊富な血流を供給します。 手掌浅層を横走するため、外傷・取穴・局所循環評価の観点から重要な血管構造です。

◆ 形成と走行

浅掌動脈弓は、尺骨動脈の終枝が主成分となり、 多くの場合、橈骨動脈の浅掌枝と吻合して形成されます。 手掌中央部を、手掌腱膜の深層・屈筋腱の浅層で弓状に走行し、 中手骨基部のやや遠位レベルに位置します。

◆ 主な分枝

• 総掌側指動脈（common palmar digital arteries）
• 固有掌側指動脈（proper palmar digital arteries）

◆ 支配領域（灌流領域）

浅掌動脈弓は、手指の掌側皮膚、指腹、浅層屈筋群を主に灌流します。 特に第2〜第5指の血流供給に重要で、指先の感覚・巧緻運動の維持に不可欠です。

◆ 触診・体表解剖の要点

浅掌動脈弓は比較的表在性であり、手掌中央部で圧迫により拍動を感じることがあります。 ただし個人差が大きく、強い圧迫は虚血を招くため注意が必要です。

◆ 臨床的重要性

• 手掌裂傷・切創時の出血源
• アレンテストによる手掌循環評価
• 動脈ライン・採血前の側副血行確認
• 手根管症候群・手指循環障害の評価

◆ 東洋医学的観点

浅掌動脈弓の走行域は、手厥陰心包経・手少陰心経の掌部経穴と重なります。 労宮・魚際・少府など、 精神安定や手指症状に用いられる取穴周囲の局所循環理解に有用です。

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