口輪筋の起始・停止・作用まとめ

１．名称（和名・英名・ラテン語）

• 和名：口輪筋
• 英名：Orbicularis oris muscle
• ラテン語：Musculus orbicularis oris

口輪筋は口唇を取り囲む環状の表情筋であり、 口の開閉・発音・飲食・感情表現に関与する。 「表情筋の中心」ともいえる重要な筋である。

２．構成と区分

• 外側部：頬筋・大頬骨筋など周囲筋線維の延長で構成。
• 内側部：上唇・下唇の粘膜下に存在する真正の口輪筋。

単一の筋ではなく、周囲筋（頬筋・口角下制筋など）の線維が集まって形成される複合筋。 そのため、表情・発音・摂食など多様な動作に対応できる。

３．起始・停止

• 起始：口角の口角結節（modiolus）に集まる各表情筋（頬筋・大頬骨筋・口角下制筋など）からの線維
• 停止：上唇・下唇の皮膚および粘膜

口角部で複数の筋線維が交錯して形成され、 口唇周囲を輪状に取り囲む構造を作る。 この構造により、口を閉じたりすぼめたりする多方向の動作が可能となる。

４．支配神経

• 顔面神経（第VII脳神経） 下顎枝・下唇枝・頬骨枝

顔面神経支配の表情筋であり、麻痺時には口角下垂・閉口不能・発音障害が起こる。 特に顔面神経麻痺では水や唾液がこぼれるなどの症状が現れる。

５．作用

• 口を閉じる
• 口をすぼめる（口笛・キス・発音「う」など）
• 口角の動きにより笑顔や不満などの表情を補助
• 食物を口腔内に保持（摂食動作）

口輪筋は「顔の中心筋」であり、発音・嚥下・呼吸・表情に関与する。 また、口角を閉鎖し食物がこぼれないようにするなど、生活動作に直結する働きを持つ。

６．関連する経穴

• 地倉（ST4）：口角外方
• 禾髎（LI19）：鼻孔外下方
• 頬車（ST6）：咬筋下縁
• 承漿（CV24）：下唇中央下方の陥凹部

口輪筋の周囲には胃経・大腸経・任脈などが走行する。 鍼灸臨床では、顔面神経麻痺・口角下垂・唇のしびれなどに対して 地倉や承漿がよく用いられる。

７．臨床での関連（症状・特徴）

• 顔面神経麻痺による口角下垂・流涎
• 唇の乾燥・口呼吸による過緊張
• 発音障害（特に「う」「お」「ふ」音）
• 表情の硬さや笑顔の不自然さ

口輪筋は、発音・摂食・表情に関わる中心的な筋。 緊張や左右差が強いと、表情の印象や発声にも影響する。 鍼灸・マッサージでは、唇周囲の緊張緩和や表情筋リハビリに用いられる。