1.名称(和名・英名・ラテン語)
- 和名:中斜角筋(ちゅうしゃかくきん)
- 英名:Scalenus medius muscle
- ラテン語:Musculus scalenus medius
中斜角筋は、前斜角筋の後方に位置する最も大きな斜角筋で、
頸部から第1肋骨へ向かって下行する。前斜角筋との間にできる隙間(斜角筋間隙)は、
腕神経叢と鎖骨下動脈の通路となり、胸郭出口症候群の圧迫部位として臨床的に重要である。
2.起始・停止
- 起始: 第2~第7頸椎の横突起後結節(posterior tubercles of transverse processes of C2–C7)
- 停止: 第1肋骨上面(前斜角筋停止部の後方)
起始腱は頸椎の後結節に連なり、筋線維は下外方へ走って第1肋骨の上面に停止する。
前斜角筋のすぐ後方にあり、その停止部の後方に位置する。
3.支配神経
主にC3〜C8の前枝から筋枝を受ける。前・後斜角筋も同様に頸神経叢から支配される。
4.作用
- 第1肋骨を挙上(吸気補助)
- 頸部の同側側屈
- 両側収縮で頸部の前屈補助
深呼吸時に胸郭を拡張させる吸気補助筋として働く。
片側収縮で頸部を同側へ倒し、両側収縮で軽度の頸部前屈を起こす。
5.位置関係・特徴
- 前方:前斜角筋
- 後方:後斜角筋
- 間を通る構造物:腕神経叢・鎖骨下動脈(斜角筋間隙)
- 外側:肩甲挙筋、鎖骨の後上方
中斜角筋と前斜角筋の間には斜角筋間隙があり、
この隙間を腕神経叢と鎖骨下動脈が通る。
筋の過緊張や肥厚によりこれらが圧迫されると、
胸郭出口症候群(TOS)を引き起こすことがある。
6.関連する経穴
中斜角筋は小腸経の経路に沿う領域にあり、
「天窓」「天容」などの経穴が分布する。
頸肩部のこり、腕への放散痛、咽喉の違和感などの治療に応用される。
7.臨床での関連(症状・特徴)
- 胸郭出口症候群(斜角筋症候群)の原因筋
- 肩こり、頸部の張り
- 上肢のしびれ・冷感(腕神経叢圧迫)
- 呼吸が浅い人で過緊張しやすい
- 頸椎の可動性低下や前方頭位姿勢に関連
中斜角筋の緊張は、腕神経叢・鎖骨下動脈を圧迫しやすく、
手のしびれや冷感、肩甲間部痛を引き起こす。
特に、デスクワークなどで頭部が前方へ出た姿勢を続ける人に多い。
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